芳垣宗久氏(よしがき むねひさ)は、1971年に東京で生まれた日本の占星術研究家です。出版社の著者紹介では、ホロスコープを人間の創造力を引き出す思考ツールととらえ、伝統にもジャンルにもこだわらない自由な研究を展開する人物として紹介されています。とくに小惑星占星術や、アストロ・ローカリティー(地理占星術)といった近代的な技法に詳しく、近年はルネサンス時代の魔術的占星術の研究と翻訳にも取り組んでいます。
2021年のインタビューでは、中学生のころからタロットや西洋占星術、手相などに親しんで友人を相手に読んでいたこと、20代でオーストラリアに滞在した際の経験をきっかけにプロの道を目指したことを語っています。1995年にプロの占星術家として活動を始めたとされ、2020年のインタビューでは、2004年に整体の仕事を辞めて占術を本業にする決断をしたと述べています。鍼灸治療家としての顔も持ちます。
現在は個人鑑定、執筆、セミナーや講演を行うほか、占星術スクール「ヘルメス学園」を主宰し、オンラインサロンも運営しています。2008年には占星術マガジン「GALACTIC CORE」を創刊したとされ、講座団体の講師紹介でも同誌の編集長として紹介されています。
芳垣氏の仕事の柱の一つは、
小惑星を取り入れた占星術です。2004年8月には、Yahoo!、Nifty、楽天、BIGLOBE の各サイト向けに、有料コンテンツ「芳垣宗久のアステロイド占星術」が提供されました。運営会社の告知では、いわゆる10天体を中心とする既存の占星術に小惑星を加えるものと説明されています。2007年の著書『愛の小惑星占星術』はこの分野をまとめた一冊で、2017年に新しい天文データを加えた改題新装版が出ています。小惑星の扱いについては、本事典の
小惑星のコラムもあわせて参照できます。
小惑星と並んで、恒星の象徴も扱ってきました。2016年に大阪で行われたゲスト講座「恒星と小惑星を使った占星術」の告知では、影響力の強い恒星を中心に、その背景にある星座の神話からシンボリズムを探ってチャートの読解に取り入れる演習を行うこと、記紀神話に由来する名前を持つ小惑星で日本的なパーソナリティーを分析することがカリキュラムに挙げられています。
古典技法の講座も持っています。2017年の3回コース「やさしいホラリー占星術」では、質問が生まれた瞬間のチャートの作成、メッセージを運ぶ役としての月、質問者を表す第1ハウスとその支配星、天体の力量を測るエッセンシャル・ディグニティなどを扱い、複雑とされる
ホラリーの規則をなるべく単純に整理して教えると告知されていました。
国家や社会を扱う
マンディーン占星術では、2019年の共著『マンディーン占星術』で第3章と第4章を担当しました。第3章は四季図、月の位相図、食図、国家の始原図、政治指導者の出生図、イベント・チャート、外惑星のサイクル、アストロマップといった道具を整理し、第4章はベルリンの壁の建設と崩壊をケーススタディとして読み解いています。巻末の用語集や、惑星とハウスの象徴の一覧も芳垣氏の執筆です。地理と結びつける技法については
アストロカートグラフィの解説も参考になります。
もう一つの柱が占星魔術です。本人のコラムによれば、2009年、来日した
クリストファー・ワーノックのワークショップに参加したことがアストロロジカル・タリスマン(占星護符)との出会いで、ワーノックを「現在の私の魔術と西洋占星術の師」と呼んでいます。2020年のインタビューでは、その後ルネサンス占星術と魔術を通信教育で学び始めたことを語りました。2019年の連載「西洋占星魔術入門」では、占星術と魔術の背後にあるヘルメス思想、タリスマンの歴史、そしてタリスマン作りの三原則(ふさわしい素材と図像、占星術の計算で選んだ時期、適切な祈願の儀式)を解説しています。同じインタビューでは、惑星を単なる記号ではなく霊魂を持つ存在として捉えていること、占星術と魔術は本来一体のものだと考えていることも述べています。時期を選ぶ考え方は
イレクショナルと重なり、歴史的な背景は
ルネサンス期の占星術の流れに位置づけられます。
単著の代表作は『愛の小惑星占星術』(説話社・開運ブックス、2007年)で、2017年に『女神からの愛のメッセージ 小惑星占星術』(説話社占い選書9)として改題・新装版が刊行されました。監修書に『超開運ダウジングでどんどん幸せになる本!』(芸文社、2011年)があります。
共著には、月星キレイ氏との『もっと深く知りたい!12星座占い』(説話社占い選書6、2016年)と、
松村潔氏・
倉本和朋氏・
賢龍雅人氏との『マンディーン占星術』(説話社、2019年)があります。田中要一郎氏の対談集『占術談義』(太玄社、2021年)にも対談相手の一人として登場しています。
翻訳には、師であるワーノックの『Secrets of Planetary Magic』を訳した『占星魔術入門 惑星の力を味方につけて願いを叶える実践ガイド』(太玄社、2025年12月)があります。七つの惑星の魔術を基本から解説し、惑星の神々を写した占星護符の図像、魔術に適した時期を計算する規則、祈願に用いる古代の詩歌「オルフェウス讃歌」などを紹介する本です。
芳垣氏は、小惑星や地理占星術のような近代技法と、ホラリーや占星魔術のような古い伝統の両方を、講座と出版で日本語の読者に届けてきました。とくにワーノックの入門書の翻訳によって、英語圏でルネサンス期の占星魔術を復興させてきた流れの一端が日本語で読めるようになりました。
『マンディーン占星術』では、松村潔氏が根本思想、倉本和朋氏が歴史、芳垣氏が読み方と事例、賢龍雅人氏がチャート作成ソフトの操作を分担しており、立場の異なる日本の占星術家が一冊の専門書を組み立てた例になっています。こうした人物の関係は
現代占星術家マップでも確認できます。
芳垣氏の仕事は、一つの流派に絞らず、近代の技法と古典の技法、さらに魔術の伝統までを並べて研究する姿勢が特徴です。小惑星に関心があれば『女神からの愛のメッセージ 小惑星占星術』から、社会や時代を読む技法に関心があれば『マンディーン占星術』の第3章・第4章から入るのが近道です。占星魔術については、師の著作を訳した『占星魔術入門』が日本語で読める入口になります。