エレノア・バック(Eleanor Bach、1922年〜1995年)は、ニューヨークを拠点にした米国の占星術家・編集者・出版者です。1922年1月11日にペンシルベニア州カルプモントで生まれ、1995年4月30日にニューヨークで亡くなりました。
バックの名は、小惑星
ケレス・
パラス・
ジュノー・
ヴェスタの位置を引ける天体暦を、1973年に占星術家向けに刊行した人物として知られています。Astro-Databank の紹介では、研究熱心な人物で「小惑星の母」と呼ばれ、『Planet Watch』の発行人兼編集者でもあったとされています。
最大の功績は、四つの小惑星の天体暦を占星術の実践者の手に渡したことです。1973年に Celestial Communications から出た『Ephemerides of the Asteroids: Ceres, Pallas, Juno, Vesta, 1900-2000』は、1900年から2000年までの位置を収めた102ページの本で、図書館の書誌ではジョージ・クリムラス(George Climlas)との共著として記録されています。
この本の意味について、
クリス・ブレナンは自身の番組で、パソコンでチャートを計算できる時代の前で、誰もが手計算でチャートを作っていたこと、そして19世紀初めから知られていた小惑星を出生図に入れられる天体暦がはじめて公刊されたことを挙げています。同じ回で
デメトラ・ジョージは、バックが軌道計算という骨の折れる作業を引き受けてもらうために、何年も天文学者たちに働きかけたと語っています。
ジョージによれば、バックの本には、それぞれの小惑星に結びつきそうなキーワードが試みとして挙げられ、女神の神話についての短い解説が添えられていました。また、ケレス・パラス・ジュノー・ヴェスタの記号は、もともとバックの本で示されたもので、ギリシアの美術や彫刻で女神たちを見分ける持ち物から取られています。ケレスは麦を刈る鎌、パラスは戦いに携える槍、ジュノーは王権の笏、ヴェスタは聖なる炉の火です。
その後もバックは天体暦の仕事を続け、1986年には天体の留と日食・月食の度数を図で示した『A Graphic Ephemeris of Sensitive Degrees (Planet Stations and Eclipses)』を Planet Watch Publications から出しています。Astro-Databank によれば、四つの小惑星を占星術に導入した先駆的な仕事によって、第2回の
マーク・エドモンド・ジョーンズ賞(占星術への独創的で重要な貢献に贈られる賞)を受けました。
『Ephemerides of the Asteroids: Ceres, Pallas, Juno, Vesta, 1900-2000』(1973年)が代表作です。ブレナンやジョージは「Asteroid Ephemeris」の名で呼んでおり、1977年の『The Asteroid Ephemeris』の版も図書館の書誌に見えます。
ほかに、前述の『A Graphic Ephemeris of Sensitive Degrees』(1986年)と、図版入りの事典『Astrology from A to Z: An Illustrated Source Book』(1990年、Philosophical Library。1992年に M. Evans からも刊行。224ページ)があります。
もっともよく知られた影響は、デメトラ・ジョージとの出会いです。ジョージの回想によれば、1973年4月、彼女がはじめて参加したサンフランシスコの占星術会議で、隣に立っていたのがバックでした。バックは数週間前に出たばかりの天体暦を鞄に入れており、ジョージの名がケレスにあたる女神デメテルに通じることを知ると、ジョージのチャートでケレスの位置を確かめ、本を一冊手渡しました。ジョージはその後、自分が読むチャートに小惑星を入れて女神の物語を語るようになり、のちの『
Asteroid Goddesses』(1986年)へとつながっていきます。
ジョージは、バックが属していたニューヨークのNCGR(全米ジオコズミック研究評議会)の仲間うちから小惑星を使い始めた占星術家が出たことに触れ、同じころ小惑星に取り組み始めた人として
ビル・メリディアンの名も挙げています。
小惑星を占星術でどう扱うかは、流派によって大きく異なります。採用する側の流れが、まず位置表という道具の整備から始まったことは、
小惑星・感受点を採用する流派、しない流派や
小惑星のコラムでも触れています。バックの天体暦は、その出発点にあたる仕事です。
バックを知ると、いまソフトが当たり前に表示する小惑星の記号と位置が、どのような手作業と働きかけから生まれたのかをたどれます。まずは本事典のケレスやパラスの項目で4つの天体の基本を確かめ、そのうえでデメトラ・ジョージの著作に進むと、バックの天体暦から始まった読み方の広がりが追えます。人物どうしのつながりは
現代占星術家マップで確かめられます。
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