ダレリン・ガンズバーグ(Darrelyn Gunzburg)は、占星術家・占星術の教師であり、美術史の博士号を持つ文化天文学の大学講師でもある人物です。1954年に西オーストラリア州パースで生まれ、2002年のインタビューの時点で英国ブリストルに移ったばかりでした。
バーナデット・ブレイディとともに占星術学校アストロ・ロゴス(Astro Logos)を主宰し、2009年からはウェールズ大学トリニティ・セント・デイヴィッド校(UWTSD)のソフィア・センターで教えています。
占星術の世界に入る前から、長く芸術の分野で活動してきました。大学の紹介によれば、サーカスの技芸、映画制作、劇作など、30年以上にわたって芸術に携わり、悲嘆(グリーフ)についての執筆と相談の仕事もしてきました。オーストラリアの国立演劇学院(NIDA)で演出のディプロマを得ており、Skyscript の紹介文によれば、自作の戯曲10本が上演され、うち4本が出版されています。南オーストラリア州の芸術助成やオーストラリア・カウンシルの作家フェローシップを受け、1992年にはパリのキーシング・スタジオに滞在しました。
2002年のインタビューによれば、ガンズバーグが占星術に出会ったのは1982年で、人に勧められてチャートを読んでもらったのがきっかけでした。その後、シドニーの教師のもとで2年間学びます。1985年に劇作家として学び直すためにNIDAへ進み、卒業論文では演劇における悲嘆を扱いました。アデレードで演劇の仕事をしたのち、それまでに学んだ占星術をいったん白紙に戻して、ブレイディのもとで学び直したといいます。
ブレイディとは、オーストラリアで占星術学校アストロ・ロゴスを始めました。この学校はオープン・ラーニングとインターネットを通じた通信教育を特色とし、インタビューの時点では、2年間で6つのモジュールを修める国際ディプロマ課程を設けていました。教える内容は中世と古典の伝統に根ざしたもので、心理占星術や神話を用いる占星術も取り入れていると、ガンズバーグは説明しています。現在はオンラインのマスタークラスで教えています。また、ブレイディの専門である恒星については、アストロ・ロゴスとして認定の課程を設けていると語っています。
やがてブレイディが、
ニコラス・キャンピオンを通じて英国のソフィア・センターを訪れ、ガンズバーグにもブリストルへ移るよう誘いました。ガンズバーグは、バース・スパ大学のこの課程が英国へ移るきっかけになったと述べています。その後、オープン大学で美術史の学士号を得て、2014年にブリストル大学で美術史の博士号を取得しました。
ガンズバーグの仕事は、占星術の実践と教育、そして占星術を文化の歴史の中で読み解く研究の二つにまたがっています。
研究の中心は、中世イタリアの美術と天空の関係です。博士論文「Giotto's Salone: An Astrological Investigation into the Fresco Scheme of the First Floor Salone of the Palazzo della Ragione」は、かつてジョットの作とされたパドヴァのラジョーネ宮の大広間のフレスコ画群を、占星術の観点から調べたものです。ペルージャの噴水を天空・文化・社会の百科全書として読む論考(2013年)や、ラジョーネ宮の図像にイスラムの占星術がどう受容されたかを扱った論考(2017年)も書いています。ブレイディらとの共同研究では、ウェールズのシトー会修道院の教会が、どの方角を向いて建てられたかを文化天文学の手法で調べています。
現代の占星術そのものも研究の対象にしています。大学の紹介では、専門分野のひとつに、現代の西洋占星術で出生図からどのように意味が引き出されるかを挙げています。論考「How Do Astrologers Read Charts?」(2011年)や、占星術家と相談者の出会いを扱った「The Horoscopic Place: The Encounter between Astrologer and Client」(2019年)がその例です。2019年には『Journal for the Study of Religion, Nature and Culture』で現代占星術をテーマにした特集号の責任編集を務めました。
実践の面では、悲嘆と占星術の関わりが大きな主題です。2002年のインタビューでは、相談に来る人のおよそ3割はそのとき何かを失った悲しみの中にあると見積もり、それが相談のあり方にも予測の仕事にも影響すると語っています。難しい時期が来ることを相談者に隠さず、それにどう向き合うかの計画とあわせて伝える姿勢を、ブレイディの言葉を借りて「チャート・サイド・マナー」と呼んでいます。
ケンタウルス族の小天体については、喪失や悲嘆といった集合的な問題と関係があるのではないかと見つつ、個人のチャートでどう働くかは引き続き確かめていくとしていました。
最初の著書は、『Life After Grief: An Astrological Guide to Dealing with Loss』(Wessex Astrologer、2004年)です。占星術を手がかりに喪失を受け入れ、変わってしまった未来に向き合う道を探る本で、ケンタウルス族の天体と神話を用い、ケンタウルス族の天体暦も収めています。悲嘆そのものを扱った本としては、のちに『Grief: A Dark, Sacred Time』(Flying Horse Books、2019年)も出しています。
『AstroGraphology: The Hidden Link between your Horoscope and your Handwriting』(Wessex Astrologer、2009年)は、出生図のアスペクトが筆跡にどう表れるかを扱った本です。Astrodienst では、ブレイディとの共著で、ホロスコープ解説「Stories from the Stars」も手がけています。
研究書では、編著『The Imagined Sky: Cultural Perspectives』(Equinox Publishing、2016年)、ブレイディとの共編著『Space, Place and Religious Landscapes: Living Mountains』(Bloomsbury Academic、2021年)があります。事典『Astrology through History』(ABC-CLIO、2018年)では、アル・カビーシーと美術の項目を担当しました。
ガンズバーグは、2009年からソフィア・センターで教え、文化天文学・占星術の通信制修士課程に携わるほか、文化天文学と占星術、エコロジーと霊性を扱う科目を担当してきました。大学紹介によれば、文化天文学の教育歴は16年を超え、博士課程の指導も引き受けています。アストロ・ロゴスでの実践者向けの教育と、大学での研究者向けの教育の両方に関わっている点が特色です。
ガンズバーグを知る意義は、占星術を実践する立場と、占星術を文化史の資料として研究する立場が、一人の中で両立しうることが分かる点です。実践の面からは『Life After Grief』と、ブレイディの
『Predictive Astrology』を、ケンタウルス族の天体については
ケンタウルス族のコラムを、研究の面からは『The Imagined Sky』を手に取るのがよいでしょう。
中世の占星術の背景を知っておくと、ジョットのフレスコ画をめぐる研究も読みやすくなります。人物どうしの関係は
現代占星術家マップでも確かめられます。