ジェフリー・ディーンとは
ジェフリー・ディーン(Geoffrey Dean)は、占星術の主張を実証的に検証してきた英国の研究者で、西オーストラリア州パースに住むフリーランスの技術系ライター・編集者です。かつては専業の占星術家として活動し、オーストラリア占星術家連盟(Federation of Australian Astrologers)の西オーストラリアでの創設会長を務めました。
1974年から占星術についての大規模な研究を続け、批判的な論文、論争、調査、研究の懸賞などを数多く手がけてきました。1977年にアーサー・メイザーと共同でまとめた『Recent Advances in Natal Astrology: A Critical Review 1900-1976』は、占星術についての科学的研究を書籍規模で批判的に概観した最初の本とされます。のちに統制された検証で占星術を支える結果が得られなかったことから、占星術の実践をやめたと紹介されています。
ジェフリー・ディーンが生きた時代
ディーンは北大西洋条約機構(NATO)の科学系ライターとして欧州や米国で働いた経験を持ち、文献調査や科学的な文章の作成、レイアウト、編集を専門としてきたと述べています。占星術についての最初の仕事は、1973年に西オーストラリアで行った小規模な文献調査でした。その後英国に渡り、英国占星術協会(Astrological Association)の研究図書室の近くに住んで調査を進めます。この図書室は協会の会長だった
チャールズ・ハーヴェイの自宅にあり、協会が欧米の主要な占星術家とつながりを持っていたことが、調査の広がりを支えました。
この時代、フランスでは
ミシェル・ゴークランと
フランソワーズ・ゴークランが出生データの統計研究を進め、英国では
ジョン・アディがハーモニクスの研究を行っていました。占星術を統計で確かめようとする動きが、占星術の内側からも外側からも出てきていた時期です。
功績と理論
『Recent Advances in Natal Astrology』は、メイザーとともに10か国52人の占星術家・科学者の協力を得て、延べ7人年をかけてまとめられました。占星術書300冊(参照したのは1,000冊以上)、学術誌の記事400本、科学文献300点の知見を要約し、1,000を超える参考文献を載せた608ページの本です。英国占星術協会が刊行に関心を示し、売上の一部は協会の研究資金にあてられました。刊行後には研究が活発になり、1979年にロンドンで研究会議が始まり、1981年に研究誌『Correlation』が創刊されるきっかけの一つになったと、ディーンらは振り返っています。反応は分かれ、ハーヴェイは1985年のインタビューで、参考図書として読めばすばらしい本だが、占星術の質に関わるものを求めて読むなら物足りないという趣旨の発言をしています。
ディーンが心理学者アイヴァン・ケリーと2003年に発表した論文「Is Astrology Relevant to Consciousness and Psi?」(Journal of Consciousness Studies)は、「タイムツイン」の検証で知られます。1958年3月3日から9日にロンドンで生まれた2,101人を、占星術とは無関係の追跡調査のデータで比べたものです。11歳・16歳・23歳の時点で測られた知能検査の成績、教師や親による行動評価、体格、職業、婚姻状況など110の変数について、出生時刻が数分しか違わない人どうしが似ているかを調べ、占星術が予想する類似は見られなかったと報告しました。同じ論文では、40以上の統制研究のメタ分析から、外向性の判定のような基本的な課題でも占星術家の成績は偶然を有意に上回らなかったとしています。そのうえで、占星術が意識や超常的な能力に関わる可能性そのものは否定せず、仮にそうした影響があるとしても非常に弱いか、まれなものだろうと結論しました。
ゴークランの惑星効果については、出生時刻の報告のされ方による「社会的な人工物」で説明できる可能性を論じています。親が通俗的な占星術の影響で出生の日や時刻を調整して届け出た場合、ごく一部(30件に1件や60件に1件)の操作でも効果が生じうるという仮説で、遺伝研究で親子の効果が後の追試で消えていったことなどの謎も、これで説明できると述べました。ただしディーン自身は、人工物はあくまで人工物であり、医師が出生を届けるなどしてそれを取り除いたときに惑星効果が消えるかどうかはまだ分からないとして、説明として確定したものではなく、研究を進める前に統制すべき要因だと位置づけています。この議論は2000年のオランダの研究誌での詳しい論文と、2002年の『Skeptical Inquirer』の要約版で発表されました。
代表的な著作
主な著作は、メイザーとの共編『Recent Advances in Natal Astrology: A Critical Review 1900-1976』(1977年)と、メイザー、心理学者デイヴィッド・ナイアス、オランダの元占星術家ルドルフ・スミットとの共著『Understanding Astrology: A Critical Review of a Thousand Empirical Studies 1900-2020』(AinO Publications、アムステルダム、2022年)です。後者は約1,000件の実証研究を扱った952ページの大著で、4,000を超える参考文献を収め、低解像度版が無料で公開されています。4人の著者のうちディーンとスミットは、かつて専業の占星術家・教師でした。
論文には、ケリー、D・H・サクロフスキーとの共著「Astrology: A Critical Review」(パトリック・グリム編『Philosophy of Science and the Occult』所収、1990年)があり、アディのハーモニクス研究なども取り上げています。1996年には『Encyclopedia of the Paranormal』の占星術の項目を、メイザー、ケリーと共同で執筆しました。
同時代・後世への影響
ディーンの仕事は、占星術の側と懐疑論の側の両方から注目されてきました。1988年にはオーストラリアの占星術誌『Astrological Monthly Review』から研究への貢献に対する記念賞を受け、2005年11月には同誌の一号がディーンに捧げられています。2003年には、科学と懐疑主義への貢献によりCSICOP(現在の懐疑的調査委員会)のフェローに選ばれました。
一方で、検証の方法や結論には異論もあります。『Understanding Astrology』については、ロバート・カリー(Robert Currey)が書評で内容の正確さやメタ分析の方法に異を唱えています。
フランソワーズ・ゴークランとは研究上の文通があり、2007年に彼女が亡くなった際には、エルテルとともに追悼文を研究誌『Correlation』に寄せました。
ジェフリー・ディーンを知る意義・学び方
ディーンの仕事を知ると、占星術の主張がこれまでどのような方法で検証され、どんな結果が報告されてきたかを見渡せます。『Understanding Astrology』は無料で読めるので、関心のある主題の項目から読み始めるのが現実的です。同じく占星術は科学ではないと認めつつ、別の角度から価値を論じた
パトリック・カリーの議論と読み比べると、占星術をどう捉えるかの幅が見えてきます。研究者どうしの関係は
現代占星術家マップで、20世紀後半からの流れは
現代占星術の系譜で確かめられます。