いけだ笑み氏(いけだ えみ)は、
ホラリー占星術の研究と実践を専門とする日本の占星術研究家です。著者紹介によれば1968年に大阪で生まれ、宇宙のしくみと人間存在の謎について幼いころから考え続けるなかで、古代占星術と錬金術思想にたどりつきました。1998年に
松村潔氏に師事し、1999年ごろからプロの占星術家として活動しています。
本人の語るところでは、本格的な勉強は朝日カルチャーセンターで松村潔氏に占星術を習うところから始まりました。その後、古典の文献を読み込むなかでホラリー占星術に傾倒し、2009年に日本語によるホラリーの入門書『ホラリー占星術』(説話社)を著しました。東京、大阪、仙台、福岡などで講師活動やイベントを行い、ホラリーの研究会も主宰しています。タロットの著作もあり、2009年刊の著書の著者紹介では、ヨーガとアーユルヴェーダ哲学にも打ち込んでいると書かれています。
いけだ氏がホラリーに出会った1990年代は、英米で伝統的占星術の復興が進んだ時期にあたります。2020年の対談で
鏡リュウジ氏は、1985年に
ウィリアム・リリーの『
クリスチャン・アストロロジー』が復刻されたことが復興の起爆剤になり、その中心がホラリーだったため、初期の伝統派はホラリーから出発した人が多かったと述べています。
同じ対談でいけだ氏は、当時は「ホラリー=古典」という大きなくくりがあり、古典に携わる人たちが現代占星術を似非と言わんばかりの厳めしい雰囲気をもっていたと振り返っています。松村潔氏のもとで学んだいけだ氏は、もともと占星術に古典と現代の区別があるという認識をもっていませんでした。そこで、本物と言われる古典の世界をひととおり知ってから反論しようと考え、古典とホラリーの文献を読み始めたといいます。本人は、のちに「ミイラ取りがミイラになる」ことになったと添えています。
日本では、鏡氏の『
占星綺想』が2001年に出ています。鏡氏自身は同じ対談で、この本を、実践的な占星術家が現代占星術と伝統的占星術の違いを意識的に示した初めての商業出版かもしれないと述べています。いけだ氏はこの本を、古典の世界に入っていくための追い風だったと語っています。
いけだ氏が対談で語ったホラリーへの傾倒の理由は、ネイタル(出生図)の読解に感じていた限界でした。限界を感じていたのはネイタルの読解そのものではなく、他人が他人の出生図を読むことに対してだったと説明しています。ホラリーは、そのジレンマから離れて象徴の解釈を純粋に楽しめる技法に思えたと語っています。
その転機になったのが、
アンソニー・ルイスの『Horary Astrology Plain & Simple』でした。いけだ氏は、多くのホラリー本が現代占星術の否定から議論を始めるのに対し、ルイスの本は中立的で冷静に検証を重ね、どちらが本物かという二極論にとらわれずに技法を検討している点に惹かれたと述べています。著書『ホラリー占星術』の執筆中に最も強く影響を受けた本として、このルイスの本と、
ジョセフ・クレインの『A Practical Guide to Traditional Astrology』を挙げています。クレインの本については、古典的な方法のしくみと出典を辞書のように説明してくれる本だったと語っています。
入門書の分野では、ホロスコープを文法にたとえて読む方法を示しています。2024年の『ホロスコープが読めるようになる西洋占星術』の出版社内容情報によれば、同書では惑星が主語として「何が」を、サインが形容詞的に「どんなふうに」を、ハウスが「どこで」を、アスペクトが「何をしている」を示すと整理し、最終章でそれらを統合して一つの存在としてとらえる手順をまとめています。内容説明には、7つの惑星タイプによる新しい解釈の試みであることも記されています。
最初の著作は、2009年7月に説話社から出た『基本の「き」目からウロコの西洋占星術入門』とその続編です。正編は占星術の基礎知識から天体やサインの記号の書き方、実際のホロスコープの読み方までを扱い、続編は惑星とサイン、惑星とハウス、惑星どうしの組み合わせを網羅しています。
同年10月には『ホラリー占星術』(説話社・291ページ)を刊行しました。2020年の対談で鏡氏は、日本でもホラリーが再び注目を集めている例としてこの本を挙げ、同書に推薦文を寄せたと述べています。
2020年には『フレンドリー・タロット いますぐ深読みできる』(太玄社)を出し、2024年4月には『ホロスコープが読めるようになる西洋占星術』(説話社)を刊行しました。同じ2024年3月には、原書房の『鏡リュウジの占星術の教科書Ⅴ ハイテクニック編②』に、田中要一郎氏、石塚隆一氏、チャンドラケイ氏、
ブライアン・クラークとともに著者として加わっています。また田中要一郎氏の対談集『占術談義』(太玄社・2021年)には、「占星術家&タロット鑑定師」として登場しています。
いけだ氏は、日本でホラリー占星術を紹介し、教えてきた実践者の一人です。2020年に駒草出版から鏡リュウジ氏監修・訳でアンソニー・ルイスの『ホラリー占星術 入門と実践』が出た際には、鏡氏が翻訳の監修作業中にいけだ氏から助言を受けたと記しており、刊行記念の対談相手もいけだ氏が務めました。
いけだ氏が主宰するホラリー研究会は東京と大阪にあり、東京の研究会のブログでは、参加者が持ち寄ったホラリーの質問をいけだ氏が読み解き、答え合わせをする実践型の会と紹介されています。個人サイトでは、講座の問い合わせ先としてアルカノン・セミナーズ、説話社のフォーチュンルームちえの樹、アカデメイア・カレッジ、ホラリー研究会を挙げています。ARI占星学総合研究所の講師紹介にも名前が載っています。
いけだ氏の歩みは、現代占星術から出発した実践者が、伝統派と現代派の対立に巻き込まれずに古典技法へ入っていく一つの道筋を示しています。本人が影響を受けた本として挙げたルイスやクレインの著作が、いずれも特定の立場の正しさを主張するより技法を検証する姿勢の本であることも、その道筋をよく表しています。
学ぶ順番としては、西洋占星術の基礎を『基本の「き」』正続か『ホロスコープが読めるようになる西洋占星術』で固め、そのうえで『ホラリー占星術』に進むのが自然です。ホラリーは本だけで身につけるのが難しい分野で、実例を数多くこなす必要があると鏡氏も対談で述べています。ルイスの『ホラリー占星術 入門と実践』を併読し、リリー以来の伝統的な判断の規則を実例で確かめていくとよいでしょう。日本の占星術家どうしのつながりは
現代占星術家マップでも確かめられます。
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