アレクサンダー・ルペルティ(Alexander Ruperti, 1913-1998)は、ヨーロッパで人間性占星術(ヒューマニスティック占星術)を広めた占星術家です。ドイツのシュトゥットガルトに生まれ、英国で教育を受け、のちにスイスに住んで整骨医(オステオパシー医)・理学療法士として働きました。占星術は1930年代にロンドンで学び、
デーン・ルディアの思想に出会ったことをきっかけに、人間の成長という観点から占星術を教えるようになりました。
英語圏での代表作は、トランジットを成長の周期として読む『Cycles of Becoming: The Planetary Pattern of Growth』(1978年)です。2005年版の版元紹介では、ルディアの『The Astrology of Personality』を1936年に読んだのち、人間性・心理学的で現代的な占星術をヨーロッパで教えた最初の人物になったと紹介されています。晩年の1984年には、マリエフ・カヴェニャック(Marief Cavaignac)とともにパリで人間性占星術のネットワーク Réseau d'Astrologie Humaniste を設立し、フランス語圏でルディア系の占星術を伝える拠点をつくりました。
ルペルティが占星術を学んだ1930年代のロンドンでは、
チャールズ・カーターが占星術ロッジ(Astrological Lodge)を率いていました。ルペルティはこのロッジでカーターから占星術を学んだとされます。カーターは占星術を原理から筋道立てて教える教育者で、英国の占星術教育の基盤を整えた人物です。
同じ1936年、米国ではルディアが
『人格の占星術』(The Astrology of Personality)を刊行しました。占星術を出来事の予言から、人格の全体性を理解するための枠組みへと捉え直したこの本は、のちの人間性占星術・心理占星術の出発点になります。ルペルティはこの本を刊行の年に読み、人間性占星術を教える道に進みました。ロンドンでカーターに学んだのと同じ1930年代に、ルディアの新しい占星術観に触れたことになります。
第二次世界大戦の終結直後、ルペルティはスイスのローザンヌで講演を行っています。占星術書のコレクションを整理した記録によれば、1946年の冬と晩秋に二度の連続講演が開かれ、最初の講演録は同年に自費出版されました。二つの講演録は、のちにルディアの組織 Foundation for Human Integration の後援によるタイプ原稿の2巻本としてまとめられています。この記録の筆者は、ルペルティがルディアと話し合って両講演の合本を実現したことを、その時期にルディアと組織的に協力してフランス語圏ヨーロッパに考え方を広めようとした点で、歴史的に重要な出来事と位置づけています。
ルペルティの功績の中心は、
トランジットを出来事の予告としてではなく、人が段階を追って成長していく周期として読む方法を示したことにあります。『Cycles of Becoming』の紹介文は、本書が太陽系の天体の運行パターンと人生のパターンとを対応づける本であり、誰にでも共通して訪れる「一般的な周期」と、出生図にもとづく「個人的な周期」の二つを扱っていると説明しています。
一般的な周期とは、生まれた年によらず、ほぼ同じ年齢で誰にでも訪れる天体の巡りを指します。2005年版の内容紹介によれば、本書は人間性占星術の考え方、年齢という要素、太陽と月および食の周期、個人天体の周期、木星・土星・天王星・海王星・冥王星それぞれの周期、木星と土星の周期、外惑星の逆行といった主題を順に扱っています。人生の転機を天体の動きによって時間の流れの中に位置づけ、占星術の学習者だけでなく一般の読者にも届くように書かれています。
こうした読み方は、出来事の吉凶を判断するのではなく、その時期に人がどのような成長の課題に向き合うのかを考えるという、ルディアの人間性占星術の基本姿勢を時間の技法に当てはめたものといえます。
土星回帰や
外惑星のトランジットを人生の節目として読む見方を学ぶとき、ルペルティの本は天体ごとの周期を順に整理した参考書になります。
最初の著作は、前述の1946年ローザンヌ講演の講演録です。その後、占星術書の刊行は30年以上途絶え、1978年に英語の『Cycles of Becoming: The Planetary Pattern of Growth』が米国の CRCS Publications から出ました。2005年には Earthwalk School of Astrology Publishing から再刊されています。前述のコレクション記録によれば、フランス語版は1981年に出ており、Open Library の書誌ではのちに Éditions du Rocher から『Les cycles du devenir』として刊行された版が確認できます。イタリア語版『I cicli del divenire』(Astrolabio、1990年)、スペイン語版『Ciclos del devenir』(Kier、1999年)も出ています。
その後の著作はおもにフランス語で書かれ、英語には訳されていません。Open Library の書誌では、『La géométrie du ciel』(Le Rocher、1987年)、カヴェニャックとの共著『Les multiples visages de la Lune』(Médicis-Entrelacs、1991年)、同じく共著の『Géométrie du ciel』全2巻(Éditions du Rocher、1993年)が確認できます。
ルペルティの影響は、とくにフランス語圏で大きなものでした。1946年の講演録をルディアの組織と協力して出版したこと、1984年にパリで Réseau d'Astrologie Humaniste を設立したことは、いずれもフランス語圏に人間性占星術を広める試みでした。ルペルティは講演と著作を通じて、ルディアの考え方を大陸ヨーロッパに伝える橋渡しを担いました。
英語圏とのつながりも保っていました。2005年版の紹介文には、1973年に米国で行った講演が米国の占星術家たちに歓迎されたことが記されています。『Cycles of Becoming』は英語版の刊行から四半世紀以上を経て再刊され、イタリア語・スペイン語にも訳されており、トランジットを成長の周期として読む方法の参考書として読み継がれてきました。
心理占星術の歴史は英語圏の流れを中心にたどられがちですが、ルペルティの経歴は、ルディアの人間性占星術が1940年代からスイスのフランス語圏にも及んでいたことを示しています。ルディアの思想が大陸ヨーロッパに伝わった経路をたどるうえで、欠かせない人物の一人です。
また、トランジットを周期として読むという発想は、出来事の予告に偏りがちな時期の技法に、人の成長という時間軸を持ち込みました。
トランジットとプログレッションの違いを学ぶ際にも、ルペルティの「一般的な周期」と「個人的な周期」という整理は、天体の動きを人生の流れとして捉えるための見取り図として役立ちます。
ルペルティを知る意義は、人間性占星術がルディアひとりの思想ではなく、各地の実践者によって受け継がれ、それぞれの言語で教えられてきたことを確かめられる点にあります。まずルディアの
人物ページと『人格の占星術』で人間性占星術の出発点を押さえ、そのうえで『Cycles of Becoming』を読むと、ルディアの考え方が時間の技法にどう応用されたかがよくわかります。
『Cycles of Becoming』は年齢と天体の周期を対応させて読む構成なので、自分の年齢に近い章から読み、自分の出生図と照らし合わせるのが実践的な読み方です。ルディアやカーターとの関係は
現代占星術家マップでも確認できます。自分のチャートを確認するには、
無料のホロスコープ計算機を活用してください。