マドモアゼル・愛氏(1950年生まれ)は、日本の西洋占星術家・エッセイストです。説話社の著者紹介によれば、1979年にデビューし、月刊誌『マイバースデイ』(実業之日本社)にレギュラーで登場して以来、40年以上にわたって活動を続けてきました。デビュー作で恒星を軸にした読み方を打ち出し、近年は月星座を「欠けているもの」として捉え直す月の論で広く知られています。
活動の場は雑誌と書籍にとどまりません。ニッポン放送のラジオ番組『テレフォン人生相談』では回答者を務め、心の持ち方や生き方をめぐるエッセイも数多く書いてきました。公式のYouTubeチャンネル「マドモアゼル・愛」でも発信を続けており、2021年刊の著書の著者紹介では登録者数が10万人を超えたと紹介されています。2022年6月には公式ホームページを開設し、アメーバブログと並行して情報を発信しています。
占星術以外では、和歌の披講に力を注いできたことも特徴です。公式ホームページに再掲された2010年のブログ記事によれば、氏は「星と森国際短歌大会」を主宰しており、この年で12回目を数えました。入賞した歌を披講式で実際に歌うのがこの大会の特色だと書かれています。著者紹介では、和歌のほか母音と周波数の研究にも取り組んできたことが紹介されています。
氏がデビューした1970年代末は、日本で西洋占星術が雑誌を通じて若い読者へ広がっていった時期にあたります。1966年には
門馬寛明の『西洋占星術』が光文社カッパ・ブックスから太陽星座別の入門書として刊行され、1971年創刊の『non-no』では
ルネ・ヴァン・ダール・ワタナベが西洋占星術のコラムを担当しました。『マイバースデイ』のような星を扱う専門誌も生まれ、
ルル・ラブアらの入門書が版を重ねていきます。
国立国会図書館の所蔵資料をたどると、氏の名前は1980年代から1990年代にかけて『My Birthday』や『Misty』の付録冊子に繰り返し現れます。1985年の付録『1985年女の子の星占い運勢ブック』、1992年の付録『大恋愛占星術』、1994年の付録『女の子の夢占い事典1000』などで、星座の読み物から夢の解釈まで幅広い題材を担当していました。デビュー作の単行本も、実業之日本社の叢書M.B booksの一冊として刊行されています。
その後、出版の中心は単行本と文庫へ、さらにウェブと動画へと移っていきます。氏は1990年代以降は心のあり方を主題にしたエッセイを多く出し、2020年代には動画配信と自らの公式サイトへ活動の軸を広げました。雑誌付録の時代から動画配信の時代まで、媒体を移しながら発信を続けてきた経歴です。
氏の仕事の出発点は恒星です。デビュー作『愛の宿命占い 恒星占星術入門』(実業之日本社、1982年)は、2021年に一部加筆・修正・再編集のうえ『宿命を知り、活かす恒星占星術』(説話社占い選書)と改題して復刊されました。目次を見ると、誕生日から求める「誕生点」をもとに、恒星の名を冠した「ゾーン」に分けて宿命を読む構成をとっています。たとえば「フォーマルハウトゾーン」は誕生点が2月8日から3月19日の人に当てられ、「孤独の星」と題されています。西洋の伝統では
恒星は天体やアングルとの重なりで読むのが基本ですが(本事典の
フォーマルハウトの項を参照)、氏の方式は誕生日に結びつけたゾーンで恒星を割り当てる点が異なります。
もう一つの柱が月の論です。『月の教科書 占星術が誤解していた、この星の真相』(ビオ・マガジン、2021年)の内容説明は、月が与えるものを「見せかけと虚構」とし、月こそが生きづらさやむなしさの正体だと述べています。第2章「月星座があなたに与えないもの」では、月が牡羊座にある人には「I am 我、あり」が、牡牛座にある人には「I have 我、所有す」がない、という形で12星座を解説し、第4章では月の影響から離れるための「月光反転法」を示します。
現代の太陽星座中心の占星術では、
月星座は感情や素顔を表すものとして読まれるのが一般的です(
月の読み方の変遷を参照)。氏の論は、月星座の示すものを本人に備わった資質ではなく、追い求めても得られないものとして読む点で、その読み方とは向きが逆になっています。
著者紹介ではまた、日本で最初の占星天文暦『エフェメリス・オブ・ジャパン』を出版したことが挙げられています。
占星術の著作では、先に触れた『愛の宿命占い 恒星占星術入門』(実業之日本社、1982年)と、その改題復刊である『宿命を知り、活かす恒星占星術』(説話社、2021年)、月の論をまとめた『月の教科書』(ビオ・マガジン、2021年)が中心です。『月の教科書』は5章構成で、月の意識と生きる苦しみ、月の12星座の解説、月の支配からの目醒め、月光反転法、月がこの世界に存在する理由へと進みます。
エッセイでは、『自分の素晴らしさに気づいてますか』(三笠書房、1995年。2001年に文庫化、2021年に新版)、『愛について大切な17のお話』(実業之日本社、1996年)、『自分を好きになる23のお話』(実業之日本社、2000年)、『シンクロニシティ 幸せの連鎖』(説話社、2004年)などがあります。夢の解釈を扱った『「あなたの夢」でわかるあなたの運命』(三笠書房、2002年)もあり、星の話題に限らず心の働きを広く扱ってきたことがわかります。
説話社の著者紹介は、月は欠損を表すという氏の立場が占星術界で大きな反響を呼んだと紹介しています。恒星についての仕事も、1982年の初版から40年近くを経て2021年に復刊されており、デビュー当時の読み方が改めて読者の手に届くかたちになりました。
氏を知る意義は、日本の雑誌文化のなかで育った占星術が、恒星や月といった個別の主題についてどこまで独自の読み方を打ち出してきたかを確かめられる点にあります。恒星に関心があれば、まず『宿命を知り、活かす恒星占星術』で誕生点とゾーンの考え方をつかみ、本事典の
恒星の解説と見比べると、西洋の伝統的な恒星の扱いとの違いがはっきりします。
月の論に関心があれば、『月の教科書』を読んだうえで、
月の項や月星座の一般的な解説と並べて読むのがよいでしょう。同じ天体についてどのような前提を置くと読み方が変わるのかを比べることは、自分の出生図を読むときの視点を増やしてくれます。日本の占星術家の系譜の全体像は
現代占星術家マップでも確かめられます。