ジム・ルイス(Jim Lewis, 1941-1995)は、出生図の天体が地球上のどこでアングルにあたるかを世界地図に線で描く技法を、Astro*Carto*Graphy(アストロカートグラフィ)の名で広めたアメリカの占星術家・著述家です。本名はジェームズ・ルイス・スレイデン(James Lewis Slayden)。1941年6月5日にニューヨーク州ヨンカーズで生まれ、生涯の大半をサンフランシスコで過ごしました。1995年2月21日、サンフランシスコで脳腫瘍のため53歳で亡くなっています。
ルイスは場所の占星術そのものを発明したわけではありません。土地とチャートを結びつける考えは古くからあり、近代には
セファリアルや
L・エドワード・ジョンドロの仕事がありました。ルイスの仕事は、その考えを誰でも使える地図の形に整え、解釈の手引き、ソフトウェア、講座、認定試験までを一つの体系としてそろえたところにあります。技法そのものの説明は
アストロカートグラフィのコラムにあります。
ルイスが活動を始めた1970年代には、日食の通り道を描いた簡単な図から始まった場所の図が、
チャールズ・ジェイン、ドナルド・ブラッドリー、スティーヴ・コッツィ、マーティン・ジェイ・デイヴィスらの手で発展していました。1966年にはゲイリー・ダンカンが、コンピューターで作った場所の図を発表しています。
一方で、計算の多くはまだ手作業で、個人が自分の線を世界地図の上で見るのは簡単ではありませんでした。ルイスは1976年から、手描きの地図を通信販売で占星術の顧客に送り始め、この技法を Astro*Carto*Graphy と名づけました。1970年代の終わりには、ローカルスペースの手法のソフトウェアを作っていたマイケル・アーレワインと組み、最初の Astro*Carto*Graphy のソフトウェアを作っています。地図がコンピューターで作れるようになったことで、技法は占星術家だけでなく一般の人にも届くようになりました。
Astro*Carto*Graphy の地図は、出生図をメルカトル図法の世界地図に重ね、各天体がアセンダント・ディセンダント・MC・ICのいずれかにあたる地点を線で結んだものです。出生の日時は変わらなくても、どこに立つかによって、どの天体が
アングルに重なるかは変わります。ルイスはこれを、場所を変えることでチャートのどの部分が前に出るかを読む道具として示しました。
技術面では、1980年2月に地図に透明なシートを重ねる手描きの方法について米国特許を出願し、1981年12月に「Astrological device and method」として特許(US 4,304,554)を取得しています。1979年からは、世界の出来事を地図に描いた年刊の『Sourcebook of Mundane Maps』を出しました。
出生の線に加えて、
トランジットや
プログレッションを地図に重ねて時期を読む方法は Cyclo*Carto*Graphy(サイクロカートグラフィ)と呼ばれ、これもルイスが名づけて商標にしたものと紹介されています。
ルイスは世界各地で講演し、セミナーで受講者に技法を教えました。のちに厳しい認定試験を設け、合格した人をプロの Astro*Carto*Grapher として認定しています。地図のサービスは、オレゴン、ロンドン、チューリッヒの3つの事業者がライセンスを受けて提供していました。こうした働きに対し、1978年にマーク・エドモンド・ジョーンズ賞を、1992年にはワシントンD.C.の United Astrology Congress でレギュラス賞(発見・革新・研究部門)を受けています。
また、占星術家の職能団体 AFAN(The Association for Astrological Networking)の推進役の一人でもありました。財団の紹介によれば、ルイスは AFAN を占星術家の権利を守り、職業としての水準を高めるための組合のような組織にしたいと考えていました。
『The Astro*Carto*Graphy Book of Maps: The Astrology of Relocation』(1989年、Llewellyn)は、ガットマン(Ariel Guttman。図書館の書誌では Gail Guttman 名義)との共著です。副題のとおり、場所を移すことを主題にした地図の本です。
『The Psychology of Astro*Carto*Graphy』(1997年、Arkana)は、友人のケネス・アーヴィング(Kenneth Irving)がまとめ、没後に刊行されました。ルイスの文章・メモ・講義をもとにアーヴィングが補足を加えた本で、天体ごとに、その線がある土地でどのような変化をもたらしうるかを解説しています。2012年には改訂増補版が出ています。
ほかに、自伝的な文章をまとめた『Peter Pan in Midlife and the Midlife of America』が、
エリン・サリヴァンの編集で2002年に刊行されました。A・T・マン編の論集『The Future of Astrology』にも寄稿しています。解説書にはロバート・カリー(Robert Currey)がキロンとノードの記述を加えた版があり、その日本語版は
真弓香氏が翻訳・監修を手がけています。
ルイスのもとからは、技法を受け継ぐ実践者が出ています。心理占星術家のエリン・サリヴァンは長年ルイスと緊密に仕事をし、1999年9月からはルイスの信託と Continuum で職業認定のトレーナーを務めました。
ドナ・カニンガムは1984年にルイスから Astro*Carto*Graphy の実践者として認定を受けています。日本では真弓香氏が、ルイスが自ら教えた最後のセミナーで学び、日本で最初の公認資格を得たと公式プロフィールに記しています。
没後の1995年8月には、ルイスの仕事を受け継ぐ団体 Continuum が発足しました。Jim Lewis Slayden Foundation の名も掲げるそのサイトによれば、ルイスの1993年の研修セミナーを書き起こした教材をもとに、独習用の課程と認定試験を提供しています。地図を描く技法そのものは、今では多くの占星術ソフトやウェブサービスで使えるようになりました。人物どうしのつながりは
現代占星術家マップでも確かめられます。
ルイスの仕事は、占星術を「いつ」を読む道具だけでなく「どこ」を読む道具としても使えるようにした点に意義があります。出生図を変えることはできませんが、住む場所や旅先は選べます。その選択に占星術の視点を一つ加える方法を、地図という分かりやすい形で示しました。実際に手を動かす手順は
アストロカートグラフィの技法ページにまとめてあります。
ルイスを知ると、いま当たり前に使われている場所の占星術が、先行する研究者たちの仕事の上に、地図・ソフトウェア・教育の仕組みを積み上げて広まったことが分かります。入口としては『The Psychology of Astro*Carto*Graphy』が、線の読み方を心理の側面から学ぶ本として向いています。線はアングルを基準に引かれるため、出生時刻が正確であることが前提になります。まず自分の出生図を確かめておきましょう。
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