門馬寛明(もんま かんめい、1921年生まれ、故人)は、戦後の日本で一般読者向けの西洋占星術書を著し、私塾「明暗塾」で後進を育てた占星術家です。国立国会図書館の典拠では「モンマ ヒロアキ」という別の読みも記録されています。『西洋占星術』の裏表紙に載った本人の文章では、大正10年(1921年)1月18日の生まれとされ、著者略歴にはキリスト教の伝道者だったと記されています。出身は福島県とする紹介が多いものの、樺太とする説もあります。
名を広く知られるきっかけになったのが、1966年に光文社のカッパ・ブックスから刊行した『西洋占星術 あなたを支配する宇宙の神秘』です。誕生日から決まる太陽星座ごとに章を立てたこの本は、1989年に光文社文庫にも収められ、長く読まれました。その後も1970年代から1990年代にかけて、光文社、永岡書店、JICC出版局(のちの宝島社)などから一般向けの占星術書を出し続けています。
門馬寛明が『西洋占星術』を出したのは1960年代半ばのことです。本書は光文社の一般向けの新書判叢書カッパ・ブックスの一冊として出ました。目次は「人は、なぜ星の道を学ぶのか」「五千年まえにあった占星術」「どのようにして占われるか」「この本の使い方」と進み、そのあとに牡羊座(三月二十一日〜四月二十日生まれ)から魚座まで、誕生日の区切りを添えた12星座の章が並びます。
英語圏では、19世紀末から20世紀初めに
アラン・レオが太陽星座を軸にした読み方を広め、1930年代以降は新聞や雑誌の星座欄が定着していました(
太陽星座占星術と月を参照)。門馬寛明の本は、誕生日だけで自分の星座がわかるこの形式による日本の一般書として、1960年代に刊行されています。1970年代に入ると、
ルネ・ヴァン・ダール・ワタナベが女性誌『non-no』で星座のコラムを担当し、
ルル・ラブアもマスコミと著作で活動を広げていきます。
門馬寛明の仕事の一つ目の柱は、太陽星座による解説を日本の一般書の形に整えたことです。そのうえで、1980年の『複式西洋占星術』(永岡書店)には「サン・サインと12宮による細密星座占い」という副題が付いており、太陽星座に
ハウス(12宮)を組み合わせて読み分ける方法を一般向けに紹介しました。1986年の『ときめき細密占星術』(JICC出版局)も、題名のとおり細かく読み分けることを打ち出しています。
二つ目の柱が明暗塾での指導です。占星術の用語辞典などでは、戦後に占星術家に転じて明暗塾を設けたと紹介されています。直接教えを受けた酒井日香氏は、門馬寛明が、占星術の示すものを性格や長所よりも状況や環境、起こる出来事として捉えていたこと、アスペクトの種類だけで良し悪しは決まらないと教えていたこと、星の組み合わせには必ずプラスの面とマイナスの面があり、どちらに出るかは本人の意志や心によると説いていたことを回想しています。酒井氏はまた、その占星術の考え方がキリスト教の信仰に裏打ちされたものだったと位置づけています。
代表作は『西洋占星術 あなたを支配する宇宙の神秘』(光文社カッパ・ブックス、1966年。225ページ)で、1989年に光文社文庫版が出ています。同じ光文社からは、相性を扱った『Love占星術 あなたは、だれとピッタリか』(1979年)も刊行されました。
ほかに、技法面の『複式西洋占星術 サン・サインと12宮による細密星座占い』(永岡書店、1980年)、数の象徴を扱った『西洋数秘術入門 あなたを支配する数の神秘』(東邦出版社、1980年)、『ときめき細密占星術』(JICC出版局、1986年)があります。JICC出版局の叢書「宝島星座ブックス」では、『牡羊座の本』から『魚座の本』まで12星座を1冊ずつ扱うシリーズを1985年から手がけ、版を改めながら2002年の宝島社版まで刊行が続きました。
『西洋占星術』は、のちに占星術家となった人々の入口にもなりました。工藤明彦占星学教室のブログでは、筆者が十代のころにこの本で占星術を知ったと振り返り、入門書として薦めています。明暗塾については、多くのプロの占星術家を送り出したとする紹介もあり、門下の酒井日香氏は、門馬寛明から受け継いだ読み方を自身の体系の土台に据えていると述べています。
1960年代の入門書から1980年代以降の宝島星座ブックスまで、門馬寛明の著作は国立国会図書館に数多く所蔵されています。日本の占星術家どうしのつながりは、
現代占星術家マップでも確かめられます。
門馬寛明を知る意義は、日本で西洋占星術が一般書として広まり始めた1960年代の姿を、具体的な一冊を通して確かめられる点にあります。『西洋占星術』の目次は、占星術の歴史に触れたあとで12星座の解説に進む組み立てをとっています。
学ぶ際は、まず『西洋占星術』で太陽星座による読み方を確かめ、次に『複式西洋占星術』の副題が示すように、太陽星座にハウスを重ねる読み方へ進むと、門馬寛明が一般向けの本のなかで示そうとした段階が見えてきます。そのうえで、太陽星座だけでは見えない部分を扱う本事典の
太陽星座を超えての解説を読むと、出生図全体を読む方法へと視野を広げられます。