ドナ・カニンガム(Donna Cunningham, 1942-2017)は、ソーシャルワーカーとしての臨床経験を土台に、心理療法と占星術を組み合わせたカウンセリングを行ったアメリカの占星術家・著述家です。1942年7月5日にアイオワ州オナワで生まれ、2017年7月、75歳の誕生日に亡くなりました。
1964年にグリネル大学を卒業し(心理学専攻、社会学副専攻)、1967年にコロンビア大学でソーシャルワークの修士号を取得しました。その後は病院や診療所、女性の健康、精神科クリニック、障害者支援の現場でソーシャルワーカーとして働き、病院のソーシャルサービス部門の責任者も務めています。ニューヨーク州とカリフォルニア州でソーシャルワーカーの資格を持っていました。のちに常勤の職を離れ、心理療法・占星術・癒しを組み合わせた個人開業へ移りました。
占星術の学びは1968年に始まり、主な師は
リチャード・アイデモンでした。月と
冥王星を扱った本で知られ、雑誌 Dell Horoscope では20年にわたって助言コラム「Astrology at Work」を担当しました。晩年はオレゴン州ポートランドを拠点にしていました。
カニンガムが占星術を学び始めた1960年代末から70年代は、アメリカで心理学を取り入れた占星術が講座や大会を通じて広がった時期にあたります。本人の紹介によれば、1970年に内面の理解を目的とした相談を始め、1971年に教え始め、1974年からは全米や海外の大会に講師として招かれるようになりました。
1970年代初めに発足した NCGR(National Council for Geocosmic Research)には発足当初から参加し、のちに AFAN(The Association for Astrological Networking)にも創設時から加わって助言役を務めています。オレゴン占星術協会の理事も数年務めました。心理占星術が大きな流れになっていく過程は
心理占星術の歴史にまとめてあります。
カニンガムの特徴は、ソーシャルワークの視点を占星術に持ち込んだことです。本人は、ソーシャルワークは個人の悩みだけでなく、人が社会や文化、制度とどう折り合うかも扱う仕事だと述べています。そのうえで、動きの遅い天体があるサインを通過すると、そのサインに関わる社会の働きが変わり、人はその変化への対処を迫られると考え、世界の変化に向き合いながら自分の核を保つ手助けを自分の専門としていました。
もう一つの柱は、天体を心の課題として読み、その課題に取り組む道具まで示したことです。代表作『Healing Pluto Problems』では、冥王星を強迫的な行動や、人に見せたくない感情の領域と結びつけ、罪悪感・恨み・恐れ、感情の秘密と孤立、力と支配への欲求、被害者の心理、喪失と悲しみを避けることの影響などを事例とともに論じています。そのうえで、アファメーション、フラワーレメディ、チャクラを使った練習を紹介し、冥王星の
トランジットを成長に生かす方法を示しました。
月についても複数の本を書きました。1982年の本の題名『Being a Lunar Type in a Solar World』が示すように、太陽を重んじる社会のなかで月の性質が強い人がどう生きるかを主題にしています。癒しの分野では、フラワーエッセンスや依存からの回復を扱った本も書いています。
職業としての占星術家の基盤づくりにも関わりました。1983年に米国占星術連盟(AFA)と Professional Astrologers Incorporated から職業占星術家の認定を受け、1984年には
ジム・ルイスから
アストロカートグラフィの実践者として認定されています。2000年には、過去の占星術家を記録するウェブ上の記念館「The Astrologers' Memorial Web Page」を開きました。
最初の本は『An Astrological Guide to Self-Awareness』(1978年、CRCS Publications)です。月を扱った『Being a Lunar Type in a Solar World』(1982年、Samuel Weiser)は、のちに『The Moon in Your Life』(1996年、Weiser)として刊行されました。一般向けの『Moon Signs』(1988年、Ballantine Books)もあります。
『Healing Pluto Problems』(1986年、Samuel Weiser)は長く読まれ、2024年には占星術家リサ・スターダスト(Lisa Stardust)の序文を付けた Weiser Classics 版が出ています。
癒しに関わる本として、Cassandra Press から『Astrology and Vibrational Healing』と『Astrology and Spiritual Development』(いずれも1989年)、Andrew Ramer との共著『The Spiritual Dimensions of Healing Addictions』(1988年)などを出し、『Flower Remedies Handbook』(1992年、Sterling)ではバッチなどのフラワーエッセンスを扱いました。
実践者向けには『The Consulting Astrologer's Guidebook』(1994年、Samuel Weiser)と『How to Read Your Astrological Chart: Aspects of the Cosmic Puzzle』(1999年、Weiser Books)があります。後者は、チャートを読むための実用的な手順を示し、天体のタイプや、弱い要素・欠けている要素の読み方を扱っています。ほかに、一つのサインに天体が集まる
ステリウムを扱った『The Stellium Handbook』もあります。
カニンガムは、雑誌コラムを通じて一般の読者に、著作と講演を通じて実践者に届いた人でした。Dell Horoscope での20年にわたる連載に加え、The Mountain Astrologer にも定期的に寄稿しています。1986年に Professional Astrologers Incorporated から生涯功労賞を、1998年には United Astrology Congress で、占星術の理論と理解への貢献に対するレギュラス賞を受けました。
晩年は個人の相談を受けるのをやめ、ブログ「Sky Writer」と自身の Moon Maven Publications から電子書籍で発信を続けました。師アイデモンから受け継いだ心理療法と占星術の組み合わせを、ソーシャルワークの実務に根ざした形で広めたことが、カニンガムの位置づけです。人物どうしのつながりは
現代占星術家マップでも確かめられます。
カニンガムを知る意義は、占星術の読みを、相談の場で人の悩みにどう向き合うかという実務の側から考えられる点にあります。天体を心の課題として読み、それに取り組む具体的な道具まで示す姿勢は、
心理学と占星術の関わりを実践の形で見せてくれます。
入口としては、自分の冥王星の配置を確かめたうえで『Healing Pluto Problems』を読むのが分かりやすい方法です。月に関心があれば『Moon Signs』や『The Moon in Your Life』、チャートの読み方を一通り身につけたい場合は『How to Read Your Astrological Chart』が向いています。
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