ブライアン・クラーク(Brian Clark)は、オーストラリアを拠点に活動する占星術家・占星術教育者です。本人の公式サイトによれば、1972年に占星術の勉強を始め、以来およそ40年以上にわたって占星術を教え、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米で講演してきました。1986年にはメルボルンで占星術の教育プログラム「Astro*Synthesis(アストロ・シンセシス)」を立ち上げ、オーストラリア国内外で職業占星術家を育ててきました。
経歴のなかで目を引くのは、占星術とは別に古典学の素養を持っている点です。メルボルン大学で古典学と考古学を学び、学士(優等)と修士の学位を得ています。また20年にわたって、古代ギリシアの聖地をめぐるツアー(Odyssey Tours to Ancient Greece)を主催していました。ギリシア神話や古代の宗教文化への関心は、のちに見るように、家族や天職を神話と象徴の両面から読む彼の著作の土台になっています。
占星術の職能団体の運営にも長く関わりました。オーストラリア占星術連盟(Federation of Australian Astrologers、FAA)とカナダ占星術協会(Fraternity for Canadian Astrologers、FCA)の全国会長、職業占星術家協会(Association of Professional Astrologers、APA)の議長を務めています。FAA の認定占星術教師として登録されており、APA・FAA・ヴィクトリア州占星術協会(Victorian Astrologers Association)の終身会員でもあります。
クラークの仕事の柱は二つあります。ひとつは占星術教育の場をつくり、続けてきたことです。1986年にメルボルンで始めた Astro*Synthesis は、応用占星術(Applied Astrology)を体系的に学ぶプログラムとして組まれ、現在は複数のモジュールを順に学ぶ講座として提供されています。FAA からは教育部門の賞を受け、FCA からも二度表彰されています。国際的な賞であるレグルス賞には四度、英国占星術協会(Astrological Association of Great Britain)のチャールズ・ハーヴェイ賞には二度ノミネートされました。英国の占星術研究学院(Faculty of Astrological Studies)がオックスフォードで開くサマースクールでは、2008年、2012年、2015年、2018年に主要講師の一人を務めています。
もうひとつの柱は、家族・きょうだい・人間関係・天職といった人生の具体的なテーマを、
ホロスコープの象徴を通して読み解く著作群です。とくにきょうだい関係を正面から扱った『The Sibling Constellation』と、家系や親子を扱った『The Family Legacy』は、一人の人間のチャートを個人の性格の記述にとどめず、家族というつながりの中で読む視点を打ち出しています。『The Family Legacy』の版元紹介では、出生のホロスコープを家族のシステムを映す像として捉え、そこに描かれる象徴から、本人が家族にどう反応するかだけでなく、ほかの家族がそのシステムにどう関わっているかまで読み取ると説明されています。
クラークの著作に共通するのは、神話と元型(アーキタイプ)、象徴を手がかりにするという姿勢です。講座紹介でも、彼の仕事は元型と神話、占星術の象徴的な基盤に根ざしたものと紹介されています。古典学を修めた経歴が、ギリシア神話を参照しながら惑星やハウスの意味を掘り下げるという方法に直接つながっています。
本人の公式サイトに掲載された著作一覧では、次の本が挙げられています。最初期のものは、Llewellyn 社のアンソロジー『Intimate Relationships』(1991年)への寄稿です。単著としての代表作は『The Sibling Constellation』(Penguin Arkana、1999年)で、きょうだい関係を主題に据えた本です。2007年の項には、アーティストのケイ・スティーヴントン(Kay Steventon)と手がけたタロット・デッキ『Celestial Tarot』(US Games)が載っています。
2016年以降は自身の Astro*Synthesis から著作を続けて出しています。『The Family Legacy: Astrological Imprints on Life, Love and Relationships』(2016年)は先祖・親・きょうだいを扱い、家族の中に受け継がれるパターンを占星術から考える本です。同じ2016年の『Vocation: The Astrology of Career, Creativity and Calling』は、天職(ヴォケーション)を収入や地位を超えた「その人が本来なすべき仕事」として捉え、占星術の象徴をキャリアの道筋を考える手がかりにする本です。
『From the Moment We Met: The Astrology of Adult Relationships』(2018年)は大人の人間関係を扱い、
シナストリーを中心に、相性の判定にとどまらない関係の理解を目指しています。『Soul, Symbol and Imagination: The Artistry of Astrology』(2019年)は技法書ではなく、占星術の実践そのものを省察する本で、想像力、象徴、時間、隠喩、夜、創造性、症状、運命、死、神話、天職、場所、夢といった章立てで、占星術を象徴と想像力の営みとして語り直しています。『Astrological Time, Cycles of the Soul: Transits, Progressions and Returns』(2020年)は、
トランジット、
プログレッション、
リターンという占星術の時間の技法を、魂の周期という観点から扱っています。著作はフランス語と中国語に、記事はスペイン語・フランス語・イタリア語・日本語・ドイツ語に訳されています。
心理占星術の流れのなかで、クラークは家族と関係性を一貫して主題にしてきました。きょうだいを主題に据えた『The Sibling Constellation』に、後年の『The Family Legacy』『From the Moment We Met』『Vocation』を合わせると、家族、パートナー、仕事という人生の主要な領域を、それぞれ一冊ずつ占星術から考える構成になっています。
また、オーストラリアで職業占星術家の教育と団体運営を長く担ってきたことも、クラークの大きな役割です。オーストラリアとカナダの職能団体で会長職を務め、英国のサマースクールで教え、近年はバリ、中国、マレーシア、台湾、日本でも講座を開いてきました。
クラークの著作は、技法の手順を覚えるための教科書というより、チャートの象徴を人生の具体的な場面に結びつけて考えるための読み物です。家族関係やきょうだい、仕事の選び方といった身近なテーマから占星術に入りたい人には、関心のあるテーマの一冊から読み始めるのが近道でしょう。時間の技法に関心がある人には『Astrological Time』が、占星術という営みそのものを考えたい人には『Soul, Symbol and Imagination』が入口になります。
神話と心理を手がかりにチャートを読むという点では、
リズ・グリーンや
ハワード・サスポータスの著作と並べて読むと、英語圏の心理占星術のなかでのクラークの位置が見えやすくなります。現代の占星術家どうしの関係は
現代占星術家マップでも確認できます。自分のチャートを手元に置いて読むと理解が深まりますので、
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