ウォーレン・ケントン(Warren Kenton)は、カバラの教師・著述家として知られる英国の人物で、占星術とカバラを結びつけた著作を残しました。カバラの本はヘブライ語名のゼエヴ・ベン・シモン・ハレヴィ(Z'ev ben Shimon Halevi)の名で書いています。出生名はウォーレン・デレク・ケントンです。
1933年1月8日、ロンドンの伝統的なユダヤ人の家庭に生まれました。家系はスファラディ系のレビ族とされています。第二次世界大戦中は空襲を避けて、家族とともにハイ・ウィカム周辺に移りました。2020年9月21日、87歳で亡くなっています。
美術をセント・マーティンズ美術学校と王立美術院の学校で学び、グラフィック・アーティスト、本の挿絵画家としての訓練を受けました。病院での勤務や劇場の工房での仕事も経験し、初期にはウォーレン・ケントンの名で舞台美術についての本も書いています。のちにカバラの伝統の一つであるトレダノの伝統を教える団体、カバラ協会(Kabbalah Society)の創設メンバーとなり、教師の取りまとめ役を務めました。
カバラ協会の紹介によれば、ケントンの関心は少年時代の望遠鏡から占星術と秘教の教えへと広がりました。20代のはじめには、グルジェフとウスペンスキーの流れをくむ学びの場に加わり、そこで友人が開いていた占星術の勉強会を通じてカバラと生命の樹に出会います。本人はインタビューで、ユダヤ人である自分にとってカバラは特別な魅力をもっていたこと、占星術はその秘教の学びと並行して進み、両者のあいだに矛盾はなかったことを振り返っています。
カバラを教えはじめたのは1969年ごろで、1971年からは「ウェイ・オブ・カバラ」の講座を続けました(開始年は資料により異なります)。1970年代は英国で心理学を取り入れた占星術が育っていった時期でもあり、1981年には
リズ・グリーンと
ハワード・サスポータスが前年に始めた講座に、ジュリエット・シャーマン=バークのタロットとともに、ケントンのカバラの講座が加わりました。この講座がのちの心理占星術センター(CPA)になります。
ケントンの占星術の仕事の特徴は、ホロスコープをカバラの生命の樹の上に置いて読むことにあります。1999年に収録されたギャリー・フィリップソンとのインタビューで、彼は二つを組み合わせると、どちらか一方だけよりも心のありようを細かく描けると語っています。
そこでの説明では、生命の樹の中心に
太陽が置かれます。収縮の働きをもつ
火星と拡大の働きをもつ
木星が太陽と結びついて「魂の三角形」をつくり、そこが自覚と選択のできる領域だとされます。水星と金星はリズムと反射のように自然の法則のもとで働き、
月が表す自我は多くが自動的に動くものとされます。土星・天王星・海王星・冥王星は個人を超えたレベルで働き、人に大きな枠として影響する天体です。個々の対応としては、天王星をホクマーに、
冥王星を「彼方への暗い窓」としてのダアトに当てています。また、アセンダント(身体)と水星・金星・月が、行動・思考・感情にかかわる大きな三角形をつくるとも述べています。
太陽については、身体・心理・霊性の三つの面をもつとし、太陽を中心に成長していく道筋を、ユング心理学の言葉でいう個性化にあたるものとしています。チャートは可能性を示すもので、その人が月から生きるのか、アセンダントから生きるのか、太陽から生きるのかは自由意志にかかっている、というのが彼の見方です。
8ハウスには、そこにあるサインや天体、アスペクトに応じて前世についての多くのことが表れるとも語っています。
実践の面では、相談の前にチャートを細かく読み込まず、まず相手その人を見て全体の輪郭を伝え、そのうえで何を知りたいかを尋ねると述べています。学び方としては、本よりも勉強会を重視しました。自身が若いころに加わった会では、惑星ごとに詩や絵を持ち寄る練習をし、12星座を順にたどり、人のチャートを数多く読むなかで元型的な型を見分けられるようになったといいます。カバラ協会の紹介文も、彼がホロスコープとカバラの原理を使って個人的に人々の相談に応じていたことを伝えています。
占星術の本は、ウォーレン・ケントンの名で出した『Astrology: The Celestial Mirror』(1974年)と、ハレヴィの名で出した『The Anatomy of Fate』(1978年)が中心です。前者は1974年にニューヨークのAvonからも出ています。後者は副題を「Astrology and Kabbalah」とし、個人の人生、国家の歴史、人類の運命のなかで占星術とカバラがどう結びつくかを扱っています。
『The Anatomy of Fate』は書き直されて『Astrology and Kabbalah』の題でも出ました。カバラ協会の現在の書目には、『The Anatomy of Fate』とあわせて『Kabbalah and Astrology』が並んでいます。英語版ウィキペディアの著作一覧は、1969年の『As Above so Below』もケントン名義の占星術の本として挙げています。
カバラの著作には『An Introduction to the Cabala: Tree of Life』(1972年)、『Adam and the Kabbalistic Tree』(1974年)、『A Kabbalistic Universe』(1977年)、『Psychology and Kabbalah』(1986年)、『The Way of Kabbalah』(1991年)などがあり、2009年には自伝『The Path of a Kabbalist』を出しました。著作は16の言語に訳されています。
ケントンの影響がはっきり見えるのは、カバラの講座を通じて占星術に導かれた人たちです。進化占星術の
マーク・ジョーンズは、23歳のときにケントンのもとで生命の樹を学び、その講座でカバラの占星術を知ったことが占星術家になるきっかけだったと語っています。
また、1981年からはCPAの講座にカバラの分野で加わっています。タロットとカバラ、占星術の対応という考え方の背景については、
占星術とタロットのコラムも参考になります。
ケントンを知る意義は、ホロスコープを惑星やサインの意味の一覧としてではなく、一つの構造をもった心の地図として読む見方に触れられることにあります。月・アセンダント・太陽のどこから生きるかという問いは、
ユング心理学と占星術の個性化の考え方とも重なります。
読むなら、まず『The Anatomy of Fate』(書き直し版は『Astrology and Kabbalah』)が中心になります。占星術への考え方を短く知るには、Skyscriptに公開されているインタビューが手がかりになります。CPAやマーク・ジョーンズとのつながりは
現代占星術家マップで確かめられます。