リン・ベル(Lynn Bell)は、フランスのパリを拠点に活動する占星術家・講師・著述家です。公式サイトでは、シカゴ生まれで、最初の
サターン・リターンを迎える前からパリに住んでいると紹介されています。パリでは25年以上にわたって個人セッションを続けてきました(CPAの紹介による)。公式サイトでは、占星術の実践歴は40年を超えるとされています。
ロンドンの心理占星術センター(The Centre for Psychological Astrology、CPA)では1995年から講師を務め、英国占星術学院(Faculty of Astrological Studies)がオックスフォードで開くサマースクールでも教えました。パリでは、フランスの心理占星術の団体 L'Association Française d'Astropsychologie の設立に加わっています。現在はオンラインでMISPAやAstrology Universityの講座も担当しています。
CPAの紹介によれば、ベルは文学と社会学を背景にもち、エリクソン派の催眠療法と家族療法の訓練を受けました。公式サイトでは、家族に繰り返し現れるパターンへの関心はクライアントとの仕事のなかで芽生えたと説明しています。その後、自身も分析を受け、エリクソン派催眠の訓練から家族システムの仕事へ進み、家族のチャートを調べる研究グループを長年続けたといいます。
ベルが講師として加わったCPAは、
リズ・グリーンと
ハワード・サスポータスが設立した、深層心理学・人間性心理学と占星術を結びつける教育機関です。家族のパターンを扱った著書『Planetary Threads』は、このCPAで1997年から98年にかけて行ったセミナーをもとにしています。
ベルの仕事の柱の一つは、家族の中に受け継がれるパターンをチャートから読むことです。代表作『Planetary Threads』では、家族療法で使われるジェノグラム(家系図のかたちで家族関係を書き表す図)を占星術用に作り替えています。家族のなかで繰り返し現れる天体の配置やアスペクトを書き込み、世代をさかのぼって続く考え方・感じ方・ふるまいのパターンをたどる方法です。
同じ本の後半では、きょうだいと友人の関係を扱い、占星術の教科書で軽く扱われがちな
3ハウスと
11ハウスを、人間関係のハウスとして論じました。ここでは古典占星術の
惑星の喜び(ジョイ)の考え方にも触れています。The Astrology Podcast 第104回(2017年)でも、親・きょうだい・祖父母などのチャートが互いにどう響き合うか、似た配置が世代を越えて繰り返されることを語り、惑星の喜びをハウス解釈に生かす考え方を紹介しました。
もう一つの柱がサイクルの視点です。CPAの紹介はベルのアプローチを「強く循環的」と表現し、個人のサイクルと集団のサイクルの関係に関心を寄せていると述べています。この関心は、一年ごとの流れを読む
ソーラーリターンの著作として形になりました。
『Planetary Threads: Patterns of Relating Among Family and Friends』(CPAプレス、1999年)は、1997年から98年にCPAで行われたセミナーをもとにした本です。第1部が家族のパターン、第2部がきょうだいと友人を扱います。2013年にはIbis Pressから改訂増補版が刊行されました。
『The Mars Quartet: Four Seminars on the Astrology of the Red Planet』(2001年)は、CPAで行われた火星についての4つのセミナーを収めた共著です。執筆者はリズ・グリーン、
ダービー・コステロ、
メラニー・ラインハートとベルの4人です。ベルの章は、ホメロスの『イーリアス』に描かれる火星のテーマ、抑えられた火星が過剰な火星と同じように問題になりうること、火星と外惑星の組み合わせ、火星と対になる存在としての女神アテナを取り上げています。
『Cycles of Light: Exploring the Mysteries of Solar Returns』(CPAプレス、2005年)は、ソーラーリターンについてのセミナーの記録です。CPAの紹介は、占星術の伝統にしっかり根ざしながら、現代の占星術と心理学の視点も取り入れた本としています。巻末には、実際の人生にソーラーリターンを当てはめた例が多数収められています。Omega Institute の講師紹介によれば、本書はのちに同じテーマのウェビナーとともに再刊されました。
ほかにも、The Mountain Astrologer、Apollon、英国占星術協会(AA)の会誌、Meridian などに記事を寄稿しています。
ベルは、UAC、ISAR、スイスで開かれた世界会議、オーストラリアのFAAなど、各地の占星術会議で講演してきました。CPAの紹介では、オーストリア、ノルウェー、オランダ、ドイツ、フランス、メキシコでもセミナーを行ったとされています。英語圏の心理占星術の拠点であるCPAと、フランス語圏のパリの両方で教えてきた点が、ベルの活動の特徴です。
公式サイトでは、2016年にチャールズ・ハーヴェイ賞(Charles Harvey award for Service to Astrology)を受けたと記されています。
ベルの仕事は、個人の出生図を家族やきょうだい、友人のチャートと並べて読む視点を示しています。一人のチャートだけでは見えにくい、関係のなかで繰り返される配置に目を向けたい人には、『Planetary Threads』とThe Astrology Podcast 第104回が入口になります。家族をチャートから読む考え方の基本は
家族のコラムも参考になります。
一年の流れを読む技法に関心があれば『Cycles of Light』が手がかりになり、事典の
ソーラーリターンのコラムとあわせて読むと理解しやすくなります。CPAの講師陣のなかでの位置は、
現代占星術家マップでたどれます。