オリヴィア・バークレイ(Olivia Barclay、1919年12月12日〜2001年4月1日)は、イングランドのエセックス生まれの占星術家です。17世紀の
ウィリアム・リリーが著した『Christian Astrology』(1647年)を手がかりに、質問が発せられた瞬間のチャートで問いに答える
ホラリー占星術を教え、20世紀後半に伝統的な占星術が見直される流れのなかで大きな役割を果たした人物として知られています。晩年はとくにリリーの仕事に力を注ぎました。
バークレイの名前は、ホラリーの通信講座 QHP(Qualified Horary Practitioner)とともに語られます。この講座からは、のちに伝統派のホラリーを担う占星術家が何人も出ました。著書『Horary Astrology Rediscovered』(1990年)は、講座の教材をもとに、ホラリーの理論と実践と歴史をまとめた一冊です。
バークレイがホラリーに取り組んだ1980年代のイギリスでは、リリーの原本を読むこと自体が簡単ではありませんでした。のちに『Christian Astrology』の復刻版を出版したクライヴ・カヴァン(Clive Kavan)は、当時ロンドンの占星術家のあいだで完全な初版を持つ人はごく少なく、バークレイの所蔵本も第1書と第2書だけの不完全なものだったと回想しています。
同じカヴァンの回想では、当時ホラリーへの関心を高めていた中心人物として、バークレイと
デレク・アップルビーの名が挙げられています。一方、占星術教育の主流は近代占星術でした。バークレイの講座を受けた
スー・ウォードは、当時の英国の占星術学校 Faculty of Astrological Studies では
マーガレット・ホーン流の近代占星術が教えられていたと語っています。近代占星術の教育が主流だった時代に、17世紀の技法そのものを学ぶ場を開いたことが、バークレイの仕事の背景にあります。
バークレイは1980年に『Christian Astrology』の原本(1647年の初版)を入手しました。ウォードの回想によれば、古書店で偶然見つけたもので、値段は10ポンドだったといいます。バークレイはこの本のうちホラリーを扱う第2書をコピーし、受講生に提供していました。カヴァンも、彼女が自分の本をコピーして実費ほどの値段で頒布していたと証言しています。
1985年には、『Christian Astrology』初版のファクシミリ版(いわゆるレグルス版)が刊行されます。英語版の百科事典などでは、この復刻はバークレイが手配したものと説明されています。ただし出版者のカヴァン本人は、刊行は自分とカトリオナ・マンドル(Catriona Mundle)が手がけたもので、バークレイは共同作業者ではなかったものの復刻を歓迎して励まし、所蔵本を貸し出して原稿づくりに使わせてくれたと語っています。刊行後、バークレイは割引価格で同書を仕入れて受講生に販売しました。リリーの原典が広く手に入るようになったこの出来事は、伝統的な占星術の再評価を後押ししたとされています。
教育面の功績が QHP 講座です。全12回の通信講座で、最終課題として、ホラリーで実際の予測を的中させることが求められました。理論の面では、ジェームズ・ホールデンが『A History of Horoscopic Astrology』で、バークレイがリリーにならって
レギオモンタヌス式のハウスを採用するよう説いていると記しています。こうした活動を通じて、ホラリーを周縁的な技法から占星術の主要な実践分野の一つへ押し上げた人物と評されています。
主著は『Horary Astrology Rediscovered』(Whitford Press、1990年)です。ホラリー占星術の理論と実践と歴史を詳しく論じた本で、通信講座の教材が取り入れられています。現在も Schiffer Publishing から刊行されており、版元の紹介では25章立てで、25点を超える例題チャートを収めています。カヴァンは、1937年製のベントレーを買えるかという自分の質問のチャートがこの本に例題として載っていると語っています。
1991年には、占星術への卓越した貢献に対して、APAE から Professional Astrologers Inc. Award を贈られました。
バークレイの講座からは、伝統派ホラリーの中心となる占星術家が育ちました。
ジョン・フローリーは、リリーの著作に出会ったのちにバークレイの講座を受け、その方法への確信から占星術を職業に選んだと述べています。
J・リー・レーマンはバークレイのもとでホラリーを学んだと語り、
デボラ・ホールディングは1990年に QHP 講座のディプロマを取得しています。スー・ウォードは1980年代に講座を受講し、のちに QHP のチューターを務めました。
クリス・ブレナンはカヴァンとの対話のなかで、1980年代末から1990年代初めにかけて、バークレイの受講生をはじめリリーを読んでいた人々のあいだで、リリーの「判断前の考慮事項(considerations before judgement)」の扱いをめぐる議論が起きたと述べています。この論点を掘り下げたのが、受講生の一人だったウォードです。
英語版の百科事典では、バークレイの仕事が、啓蒙主義以降に失われた技法の掘り起こしと、バビロニア、ギリシア、エジプト、ペルシア、アラブ、中世とルネサンスの占星術伝統の研究を広く促したとも記されています。
現在、ホラリーを学ぶ人の多くが
『Christian Astrology』に立ち返り、リリーの規則を土台に学んでいます。その前提となった原典の普及と、原典にもとづく教育の場づくりの両方に、バークレイは関わりました。講座から出た占星術家たちがそれぞれ講座や教科書を作り、その系譜が現在のホラリー教育につながっています。
バークレイを知ることは、現代の伝統的占星術、とくにホラリーがどこから立ち上がったのかを知ることにつながります。まず
ホラリー占星術の技法ページと
『Christian Astrology』の解説で基本を押さえ、次に『Horary Astrology Rediscovered』を読むと、リリーの規則が20世紀の教室でどのように教えられたかが見えてきます。弟子筋にあたる人物や同時代の占星術家とのつながりは、
現代占星術家マップや
古典占星術の系譜で確かめられます。