チャールズ・ハーヴェイ(Charles Harvey)は、20世紀後半の英国占星術界を組織の面から支えた占星術家です。1940年6月22日にイングランドのリトル・ブッカムで生まれ、2000年2月にリンパのがんのため59歳で亡くなりました。
1963年に英国占星術協会(Astrological Association)と関わりはじめ、同じ年から
ジョン・アディを師としました。1966年に占星術研究学院(Faculty of Astrological Studies)のディプロマを取得し、この年から専業の占星術家として活動しています。協会では1973年から1994年まで会長を務め、その後はパトロンとなりました。1992年から亡くなるまでは、
リズ・グリーンとともにロンドンの心理占星術センター(CPA)の共同所長でもありました。
占星術家としてもっとも知られているのは、国家や世界情勢を扱う
マンデン占星術の仕事です。英国と米国の個人や企業に、表に出ない形で助言する金融のコンサルタントとしても働いていました。CPAの紹介文は、占星術の信用を取り戻すことに力を注いだ人物として彼を描いています。
ハーヴェイが占星術に入った1960年代の英国では、1958年に創設された英国占星術協会が、アディの会長時代(1961〜1973年)に活動の基盤を整えつつありました。アディは天体の周期を数の分割として捉えるハーモニクスの理論を唱えた人物で、ハーヴェイは早くからその近くで仕事をしています。協会では1965年に記録係、1968年に書記を務め、1973年にアディから会長職を引き継ぎました。
1970年代から80年代は、占星術の主張を統計で確かめようとする研究が広がった時代でもあります。ハーヴェイはこの流れに、占星術の側の組織の代表として深く関わりました。同時に、英国では心理学を取り入れた占星術の教育が育ち、グリーンと
ハワード・サスポータスの講座は1980年に非公式に始まり、1983年に心理占星術センター(CPA)の名称になりました。ハーヴェイが共同所長になったのは、1992年にサスポータスが亡くなったあとのことです。
ハーヴェイの功績の中心は、占星術を学び研究するための場を作り、保ち続けたことにあります。アーサー・メイザーとディーンの追悼文によれば、1994年の時点で占星術のために捧げた無償の仕事は推定1万9,000時間に及びました。ユーレイニア・トラストの紹介によれば、会長在任中に協会の会員は1,500人に増えています。1970年には教育慈善団体ユーレイニア・トラスト(Urania Trust)の創設時の評議員となり、1988年にはこのトラストの占星術学習センターをロンドンで立ち上げる原動力になっています。1973年には、ハーモニクスの占星術を発展させるためのケンブリッジ・サークルを共同で設立しました。占星術研究学院では1977年から1986年まで副会長を務めています(CPAの紹介文は、のちに会長になったと書いています)。
研究の面では、占星術の科学的な研究を扱う協会の雑誌『Correlation』、ロンドンでの研究会議、ケプラー・デーといった催しを支えました。
ジェフリー・ディーンらが占星術研究を総覧した『Recent Advances in Natal Astrology』(1977年)も、協会、とりわけハーヴェイの支援を得てまとめられています。協会の研究部門の図書室はハーヴェイの自宅にあり、ディーンはそこに通って調査を進めました。ハーヴェイは1985年のインタビューで、この本は占星術の質を伝える本ではないとしながらも、必要とされていた仕事を果たしたと語っています。
考え方の面では、師のアディから新プラトン主義の発想と、占星術が真実ならそれを示すことができるという研究の姿勢を受け継ぎました。追悼文は、真の実在は目に見えず数を通して現れるという見方を、ハーヴェイが抱いていたものとして紹介しています。
晩年の1998年には、英国の大学に占星術を根づかせるための遺贈(匿名の女性による100万ポンド)を受けて、ギリシア語で知恵を意味する言葉からソフィア・プロジェクトと名づけ、その運営の枠組みを整えました。この流れは2002年10月、バース・スパ大学でのソフィア・センターの開設につながっています。最後の大きな仕事は、大学での占星術研究を支えるソフィア・トラストの創設でした。
生前の主な著書は共著です。1984年の『Mundane Astrology』は、
ニコラス・キャンピオン、
マイケル・ベイジェントとの共著で、政治・経済・国際情勢の分析と予測に占星術を用いる方法を扱った本です。
1990年の『Working with Astrology: The Psychology of Harmonics, Midpoints and Astro*Carto*Graphy』(Arkana)は、マイケル・ハーディングとの共著です。題が示すとおり、
ハーモニクス、
ミッドポイント、
アストロカートグラフィの三つを心理的な観点から扱っています。
妻の
スージー・ハーヴェイとは2冊を共著しました。1994年の『Sun Sign, Moon Sign』は太陽星座と月星座の144の組み合わせを解説した本で、1999年の『Principles of Astrology』(Thorsons)は入門書です。後者はユーレイニア・トラストの助成を受けて作られた全9章の本で、現在はトラストのウェブサイトで全文が公開されています。
このほか、1982年に病に倒れたアディが書きかけていた『A New Study of Astrology』を、ティム・アディとともに完成させました(ユーレイニア・トラスト、1996年)。CPAによれば、没後にはセミナーの記録と雑誌『Apollon』の記事をもとにした『Anima Mundi』がCPA Pressから出ています。1996年にCPAで行った1日セミナー「The Soul in Mundane Astrology」は、土星と外惑星の会合の周期から国家と指導者のチャートを読む内容で、録音が今も頒布されています。
ハーヴェイの影響は、本よりも人と組織を通して広がりました。マンデン占星術の共著者キャンピオンは、のちに大学で占星術史の研究と教育を率い、ソフィア・センターの所長を務めています。ディーンらの研究がハーヴェイの自宅の図書室と協会のつながりに支えられたことは、立場の違う研究者とも協力した彼の姿勢を示しています。
2000年の追悼礼拝には、ロンドンのセント・ジェームズ教会(ピカデリー)に300人を超える人が集まりました。英国占星術協会は、彼の名を冠したチャールズ・ハーヴェイ賞を設けています。
ハーヴェイを知る意義は、現代の英国占星術を支えた制度の成り立ちが見えることにあります。協会の会長職、教育慈善団体、研究誌、心理占星術の学校、大学での研究拠点と、今日の学習者が当たり前に使っている場の多くに、彼の仕事が関わっています。
著作から入るなら、ユーレイニア・トラストが公開している『Principles of Astrology』が手に取りやすい入口です。マンデン占星術に関心があれば『Mundane Astrology』、技法を深めたい人には『Working with Astrology』が次の一冊になります。師弟や共著者との関係は
現代占星術家マップでたどることができます。