このマップについて
現代の占星術は、一つの体系ではありません。ヘレニズム期の文献を翻訳して古典の技法を復元しようとする人、ユング心理学を土台にチャートを心の地図として読む人、魂の成長やカルマのテーマを語る人、新聞や雑誌、ウェブで12星座のメッセージを届ける人。同じホロスコープを使っていても、拠り所も届け先も大きく違います。
このページでは、1970年代以降に活動の中心がある欧米と日本の占星術家を、二つの軸で並べました。あわせて、出典で確認できた師弟・共同・翻訳・影響の関係を線でつなぎ、誰が誰から学び、どの流れがどこへ広がったのかを一枚で見られるようにしています。
二つの軸の読み方
横軸は技法の拠り所です。左へ行くほど、古代・中世の文献に基づく古典の技法を重んじ、右へ行くほど、深層心理や内面の成長を読むことに重心があります。中央のあたりには、20世紀に広まったモダン占星術の性格描写や、出来事の時期を読む実務的な技法を中心とする人たちが並びます。
縦軸は届け先です。下へ行くほど、専門家や研究者に向けた著作や講座が活動の中心で、上へ行くほど、新聞・雑誌・ウェブ・アプリなどを通じて多くの読者に届ける活動が中心です。上にいるから技法が浅い、下にいるから優れている、という意味はありません。誰に向けて書き、話しているかの違いです。
座標は、主な著作と活動内容から編集部が判断した目安です。人物カードの「立ち位置」の下に、判断の根拠を1文ずつ添えています。
流派の見取り図
色分けは、その人の主な軸足で一つだけ選んでいます。複数の顔を持つ人は、人物カードのタグで補ってください。
- 古典・伝統復興
- ヘレニズム期・中世・17世紀の文献を翻訳・研究し、品位、ロット、ホラリーなどの技法を現代に復元する流れです。1990年代に始まったプロジェクト・ハインドサイト以降、古典文献の英訳の刊行が進みました。
- 学術・実証研究
- 大学や研究機関で占星術の歴史と文化を研究する人と、統計による検証や出生データの整備に取り組む人を含みます。
- 予測・実務
- 出来事の時期を読む技法、金融市場のサイクル、コスモバイオロジーやミッドポイントなど、具体的な予測を中心とする人たちです。
- モダン・技法
- 20世紀に広まったサイン・ハウス・アスペクトの解釈を土台に、技法の解説と教育を担ってきた人たちです。日本で西洋占星術の普及を支えた世代の多くがここに入ります。
- 心理(英国系の流れ)
- 1983年にロンドンで設立された心理占星術センター(CPA)を中心に、ユング心理学を土台にした読み方を、教育課程の形で広めた流れです。
- 心理(米国系・人間性)
- デーン・ルディアの人間性占星術を源流に、チャートを人格の成長の地図として読む流れです。心理の視点と、出来事の時期の読みを結びつけた人も含みます。
- 進化占星術
- 冥王星と月のノードを軸に、魂の成長の方向をチャートから読む流れです。ジェフリー・ウルフ・グリーンが体系化しました。
- 秘教・スピリチュアル
- 神智学や秘教の思想、カルマや魂の目的といったテーマを読みの中心に据える人たちです。
- 大衆メディア
- 新聞・雑誌の星座コラム、ウェブ、アプリ、ポッドキャストなどで、多くの読者に毎日・毎週の星の動きを届ける人たちです。
主な系譜
相関図で線が集まっているところを、流れごとに読み解きます。ここに書いた関係は、いずれも出典で確認できたものです。
英国の心理占星術と CPA
1983年、リズ・グリーンとハワード・サスポータスがロンドンで心理占星術センター(CPA)を共同設立しました。相関図ではグリーンのまわりに、『The Mars Quartet』(2001年)を共著したダービー・コステロ、リン・ベル、メラニー・ラインハートや、CPA で教えたエリン・サリヴァン、カレン・ハマカー=ゾンダグが集まっています。サスポータスの没後は、チャールズ・ハーヴェイが1992年から2000年まで CPA の共同所長を務めました。2009年の時点では、グリーンはニコラス・キャンピオン、バーナデット・ブレイディとともに、ランペターの大学院(文化天文学と占星術の修士課程)で必修科目を担当しています。
人間性占星術から進化占星術へ
デーン・ルディアは、マーク・エドモンド・ジョーンズに導かれて占星術に入りました。主著『The Astrology of Personality』(1936年)は、アリス・ベイリーの後押しを受けてルーシス出版から刊行されています。ルディアの影響は、ヨーロッパで人間性占星術を教えたアレクサンダー・ルペルティのほか、メラニー・ラインハート、スティーブン・アロヨ、ノエル・ティルに及びました。進化占星術では、ジェフリー・ウルフ・グリーンのもとでモーリス・フェルナンデスとマーク・ジョーンズが学び、グリーンはスティーヴン・フォレストと『Measuring the Night』(2000年)を共著しています。
古典復興:Project Hindsight とバークレイの門下
1993年、ロバート・シュミットとエレン・ブラックが古代占星術の文献を翻訳する Project Hindsight を始め、ロバート・ハンドとロバート・ゾラーも創設メンバーに名を連ねました。シュミットに学んだデメトラ・ジョージはケプラー・カレッジでヘレニズム占星術を教え、クリス・ブレナンはジョージとシュミットのもとで学んでいます。ゾラーの中世占星術の講座からはベンジャミン・ダイクスが出ました。ホラリーでは、英国のオリヴィア・バークレイのもとから、デボラ・ホールディング、ジョン・フローリー、J・リー・レーマン、スー・ウォードが育っています。
学術研究とカンパニー・オブ・アストロロジャーズ
1983年、ジェフリー・コーネリアスとマギー・ハイドらはカンパニー・オブ・アストロロジャーズを共同設立し、占星術をディヴィネーション(卜占)として捉え直す議論を進めました。パトリック・カリーは、コーネリアスの『The Moment of Astrology』が自身の研究の転機になったと述べています。カリーとニコラス・キャンピオンは、2002年にバース・スパ大学のソフィア・センターで始まった修士課程で、ともに教えました。
日本への流れ
日本では、鏡リュウジがリズ・グリーン、マギー・ハイド、ニコラス・キャンピオン、アンソニー・ルイスらの著作を翻訳・監訳し、英国の心理占星術と学術研究の流れを紹介してきました。岡本翔子は英国留学中にハワード・サスポータスに師事し、鏡とともにグリーンの『占星学』(1994年)を訳しています。新里ひろきと石塚隆一はノエル・ティルのマスターコースを修了し、石塚はティルの著作の翻訳も手がけました。松村潔のもとでは、石塚隆一、登石麻恭子、いけだ笑み、有澤七梨が学んでいます。松村は芳垣宗久、賢龍雅人、倉本和朋と『マンディーン占星術』(2019年)を共著しました。
この図の読み方と限界
- 対象は1970年代以降に活動の中心がある欧米と日本の西洋占星術家です。故人でも現代の流れの源流にあたる人(ルディア、グッドマン、石川源晃など)は入れました。ヴェーダ占星術と、日本の東洋占術・独自占術(五星三心、天星術など)は対象外です。
- マトリクスの座標、スピリチュアル度、予測実務度は、著作と活動内容からの編集部の判断です。人物カードの「立ち位置」の下に判断の根拠を1文ずつ添えています。
- 流派の色分けは主な軸足で一つだけ選んでいます。複数の顔を持つ人(ロバート・ハンドはモダンの定番書と古典翻訳の両方など)は、カードのタグで補ってください。
- 関係線は出典URLで確認できたものだけです。確度「中」は、本人のプロフィールや書店の紹介など出典が一つに限られるものです。噂や推測による関係は入れていません。
- 線がないことは関係がないことを意味しません。特に日本の占星術家や大衆メディア系は、公開された師弟・交友の記録が少ないため、線が少なくなっています。
- 「関連人物」は人物リストの外にいるものの、関係線の相手として出てくる人です(アリス・ベイリー、チャールズ・カーター、ジム・ルイスなど)。相関図にだけ灰色の小さな点で出します。
- 存命の人物については公開されている事実だけを中立に記述しています。生年や刊行年が出典で確認できなかったものは空欄です。
本事典の人物ページ
リズ・グリーン、鏡リュウジ、松村潔、ノエル・ティル、デーン・ルディア、ラインホルト・エバーティン、ロバート・ハンド、クリス・ブレナン、ジェフリー・ウルフ・グリーン、ジョン・アディ、メラニー・ラインハート、デメトラ・ジョージ、バーナデット・ブレイディ、ハワード・サスポータス、スティーブン・アロヨ、スティーヴン・フォレスト、デボラ・ホールディング、レイモンド・メリマン、ミシェル・ゴークラン、石川源晃、新里ひろき、リチャード・ターナス、モーリス・フェルナンデス、アラン・オーケン、ジャン・スピラー、イザベル・ヒッキー、ロイス・ロッデン、石井ゆかり、ルル・ラブア、スー・トンプキンス、リンダ・グッドマン、スーザン・ミラー、チャーニ・ニコラス、アライザ・ケリー、ロッド・サスキン