進行法とディレクションは何を動かしているのか
時期を読む技法は、大きく二つの系統に分かれます。ひとつは、いま実際に空を運行している天体を出生図に重ねる
トランジット。もうひとつが、出生図そのものを一定の約束ごとで先へ送り出す進行法とディレクションです。前者は外から巡ってくる実際の空模様、後者は出生図の内側から時間を引き伸ばした象徴の時計、と考えると整理しやすくなります。二つの系統の基本的な違いは、
トランジットとプログレッションの読み分けでも扱っています。
進行法(プログレッション)とディレクション(方向法)は、しばしば同じ文脈で語られますが、厳密には発想が異なります。進行法は、出生後に天体が実際に動いた位置をそのまま使い、短い時間の単位を人生の長い単位へ読み替えます。ディレクションは、天体の実際の動きの違いを無視して、決められた割合ですべての点を一律に送り出します。
ディレクションという語は、後者を含む「点を未来へ送り出す技法群」の総称として使われます。
この記事では、実務でよく使われる三つ、二次進行・ソーラーアーク・プライマリーディレクションを並べ、それぞれが何を根拠に時間を伸ばしているのかを比べます。技法そのものの入門は
プログレッションの技法ページが担当しますので、ここでは流派ごとの前提の違いに絞ります。
二次進行は出生後の1日を人生の1年に置き換える
セカンダリープログレッション(二次進行)は、「出生後の1日=人生の1年」という対応で天体を進める方法です。生後30日目の空の配置を30歳ごろに対応させる、という具合に読みます。現在「進行法」と言えばふつうこの方式を指すほど、西洋占星術では標準的な位置を占めています。
体系として整えたのは、ハウスシステムのプラシダスでも知られる17世紀のプラチドゥス・デ・ティティスとされます。ただし広く普及したのは20世紀に入ってからで、20世紀の心理占星術が内面の成熟を追う道具として重んじたことが大きいと解釈されています。
この方式の特徴は、天体ごとの速度差がそのまま残ることです。太陽は1年におよそ1度しか進みませんが、月は1年でおよそ12度から15度進みます。そのため
進行の月がもっとも動きの目立つ指標になり、およそ2年半でひとつのサインを移り、およそ27年から28年でひとめぐりします。進行の太陽がサインの境界を越える時期は、十数年に一度の節目として読まれます。
さらに、進行の太陽と進行の月がつくる月相を追う読み方もあります。
進行の月相サイクルはおよそ29年から30年で一巡し、種まきから収穫、手放しまでの段階を人生の局面に重ねます。速度差が残るぶん、二次進行は「複数の時計が同時に動いている」構造を持ち、そこが読みの豊かさにも複雑さにもつながっています。
ソーラーアークは太陽の弧をすべての点に一律で加える
ソーラーアークは、二次進行で太陽が動いた角度(アーク)を求め、その同じ角度を出生図のすべての天体とアングルに一律で加える方式です。太陽の進みはおよそ1年に1度ですから、40歳ならすべての点をおよそ40度動かす、という単純な操作になります。手順の詳細は
ソーラーアークの技法ページにまとめてあります。
二次進行との最大の違いは、動きの速度が全点でそろうことです。二次進行では月だけが速く動き、外側の天体はほとんど動きませんが、ソーラーアークでは冥王星も月も同じ速さで進みます。その結果、出生図の外側の天体が内側の太陽や月、アセンダント、MCに重なる時期が計算しやすくなり、「何歳ごろに、どの二つの象徴が出会うか」を一覧しやすくなります。
読みで重視されるのは、ほぼ合(0度)に限られます。1年に1度しか進まないため、合が正確になる前後の限られた期間を節目とみなす立場が一般的で、オーブは1度以内に絞る慣習があります。ミッドポイントを重視するエバーティンのコズミオバイオロジーが精密なオーブを前提とする体系であること、そしてノエル・ティルが『Solar Arcs』でこの技法を現代の実践へ押し出したことが、普及の背景として挙げられます。
1年ぶんのアークをどの値で取るかには流派差があります。出生当日の太陽の実際の運動量を使う立場と、太陽の平均日運動である
ナイボッドの値(およそ0度59分08秒)を一律のキーとして使う立場です。両者の差はわずかですが、年齢を重ねるほど積み上がります。
プライマリーディレクションは天球の回転を時間に読み替える
プライマリーディレクション(主要方向法)は、三つのなかで最も古い技法です。使うのは天体自身の公転ではなく、地球の自転による天球の見かけの回転、つまり日周運動です。出生直後のわずかな回転を、生涯ぶんの時間に引き伸ばして読みます。プトレマイオスは『テトラビブロス』の第3巻から第4巻にかけて、この考え方を寿命や人生の節目を論じる文脈で扱いました。
しくみは、動かされる側の点である
プロミッサーを天球の回転にしたがって進め、本人をあらわす固定点(シグニフィケーター)に到達する時期を節目として読む、というものです。換算率(キー)にはいくつかの流儀があり、素朴なものはプトレマイオス由来の「赤経1度=1年」、これを太陽の平均日運動へ寄せたものがナイボッドの値です。さらに、点をどう投影するかという分割の取り方でも結果が変わります。
計算が複雑なため、近代にはほとんど使われなくなりました。二次進行やソーラーアークが広まった背景には、手計算でも扱える簡便さがあったと解釈されています。ガンステンの『Primary Directions: Astrology's Old Master Technique』のように、計算と歴史を整理する研究が近年出たこと、そして古典占星術の復興が重なったことで、あらためて実践する人が現れています。
この技法は出生時刻の精度に最も敏感です。天球はおよそ4分で1度回転しますから、出生時刻が数分ずれるだけで読む年が動きます。出生時刻が不確かな場合は、他の技法を先に置くほうが穏当とされます。
三次進行・マイナー進行・象徴方向法の位置づけ
主要な三つのほかにも、時間の単位を組み替えた方式があります。
ターシャリープログレッション(三次進行)は「出生後の1日=1恒星月」、
マイナープログレッション(小進行)は「1恒星月=人生の1年」で進めます。いずれも二次進行より速く時計が進むため、より短い周期の移り変わりを見る補助として参照されます。実務で主役に据える実践者は多くなく、二次進行を別の物差しから照らす役割にとどまるのが一般的です。
もう一つ、
シンボリックディレクション(象徴方向法)という括りがあります。これは「全点を一定の割合で一律に進める」やり方の総称で、ソーラーアークはその代表格にあたります。ほかに機械的に「1年=1度」で進める方式などが含まれます。ソーラーアークを単独の技法として覚えるより、この総称のなかの一つと位置づけたほうが、換算率の流派差を理解しやすくなります。
三者を並べて比べる
進む速さ:二次進行は天体ごとに速度が異なり、月が最も速く、外惑星はほとんど動きません。ソーラーアークは全点が一律におよそ1年1度。プライマリーディレクションは天球の回転が土台で、赤経1度がおよそ1年に対応します。速度の設計思想が、そのまま読みの粒度を決めます。
動くもの:二次進行は天体が動き、アングルは進行の日時から別に求めます。ソーラーアークは天体とアングルの区別なく全点が同じ角度だけ動くため、アセンダントやMCに何かが重なる時期を追いやすくなります。プライマリーディレクションは、点と点が天球上で出会う瞬間そのものを扱います。
得意な問い:二次進行は、関心の移ろいや内面の成熟といった、年単位でゆっくり変わるテーマの流れを追うのに向きます。ソーラーアークは、節目がいつ来るかを一覧するのに向きます。プライマリーディレクションは、古典の枠組みのなかで特定の年を絞り込む用途で使われてきました。
必要な出生時刻の精度:三つのなかではプライマリーディレクションが最も厳しく、次いでアングルを使うソーラーアーク、月と太陽を中心に見るかぎりでは二次進行が比較的ゆるやかです。出生時刻が不明な場合、アングルを使う読みは成立しません。
歴史的な出自:プライマリーディレクションが古代、二次進行が近世から現代、ソーラーアークが20世紀の実践のなかで整えられた技法です。時代が違えば、想定している問いも違います。古い技法ほど出来事と時期の特定に、新しい技法ほど内面の変化に重心が置かれる傾向はありますが、厳密な線引きではありません。
選び方の目安
まず一つに絞るなら、二次進行が現実的です。書籍とソフトの標準であり、進行の月という分かりやすい指標があるため、他の資料と照らし合わせながら学べます。内面の変化を年単位で追いたい場合にも素直に働きます。
節目のタイミングを一覧したい場合は、ソーラーアークを重ねると見通しが良くなります。全点が同じ速さで動くぶん、どの年に何が重なるかを表のように把握できます。ブレイディが『Predictive Astrology: The Eagle and the Lark』で示したように、現代の予測実践では複数の技法を重ね、同じ時期を別々の物差しで確かめる進め方が広く採られています。
古典の枠組みを学ぶなら、プライマリーディレクションが避けて通れません。ただし換算率と分割方式の選択が結果を左右するため、どのキーを使ったかを常に記録しておく姿勢が求められます。手計算での再現は現実的でないので、計算方式を明示できるツールを使うことが前提になります。
出生時刻が不確かなときは、アングルを使う読みを前面に出さないほうが無難です。太陽と月を中心にした二次進行から始め、時刻の精度が上がってから他の技法へ広げる順序が穏当とされます。
いずれの技法も、特定の出来事や結果を断定するものではありません。象徴が動きやすい時期の見取り図として、他の技法や実際の状況と照らし合わせながら慎重に読むのが、どの流派にも共通する姿勢です。
なお、本サイトの計算はトロピカル方式・プラシダス・ジオセントリックです。まずは土台となる出生図を確かめるところから始めてみてください。
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