人を「型」でとらえようとする試みは、けっして新しいものではありません。人類はずいぶん昔から、ばらばらに見える一人ひとりの違いを、いくつかの分かりやすいパターンに整理して理解しようとしてきました。
その古い例として知られるのが、古代ギリシアに端を発する四体液説です。血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁という四つの体液のバランスで気質が決まると考え、そこから多血質・粘液質・胆汁質・憂鬱質という四つの気質が語られました。医学的な裏づけは現代では失われていますが、人を四つのタイプに分けて気質を読むという発想そのものは、後の時代にも形を変えて受け継がれていきます。
時代が下って近代になると、心理学が人の類型を体系的に扱いはじめます。なかでも大きな足跡を残したのが、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユング(1875〜1961)でした。ユングは『心理学的類型』(1921)で、人の心が世界とかかわるときの構えにパターンがあると考え、外向と内向、そして思考・感情・感覚・直観という心の働きを整理します。この枠組みは、のちに紹介するさまざまなタイプ論の源流になりました。
占星術もまた、こうした「人を型で読む」営みのひとつに数えることができます。12星座を四つの
四元素に分け、三つの
三区分に分け、それぞれに支配星を割りあてる。複数の物差しを掛け合わせて、人の傾向を立体的にとらえようとする発想は、四体液説や近代の類型論と地続きのところがあります。古い時代から現代まで、人は手を変え品を変え、自分という存在を理解するためのレンズを磨いてきたのです。
このシリーズは、ひとつのタイプ論ごとに「編」を立てて進めていきます。現在は、MBTI編・ビッグファイブ編・エニアグラム編・ヒューマンデザイン編の4編すべてを公開しています。
【第1弾:MBTI編 全17本】 入口になるのが、総論にあたる
占星術とMBTI 総論です。MBTIの4軸16タイプがユングからどう生まれたか、占星術の四元素・三区分とどこで響き合い、どこで前提が分かれるのかを、ていねいに見渡しています。とくに「思考と風」「感情と水」「直観と火」「感覚と地」という、心理機能と四元素の対応が、二つの体系をつなぐ橋として描かれています。総論のあとは、INTJ・INFJ・ENFP・ISTPといった16タイプそれぞれの個別記事へ進めます。気になるタイプから拾い読みしても、総論から順にたどっても、どちらでも楽しめます。
【第2弾:ビッグファイブ編 全6本】 もう一本の入口が、
占星術とビッグファイブ 総論です。MBTIがユング類型論から演繹的に作られた「型」だったのに対し、ビッグファイブは20世紀後半に語彙データの統計的因子分析から帰納的に取り出された「5次元の連続スコア」。出発点が違うので、占星術との橋も別のかたちで架けます。総論では、ビッグファイブ前史にあたる3因子論を提唱したハンス・アイゼンクが1970〜80年代に占星術を科学的に検証した歴史(Mayo, White & Eysenck 1978)にも触れています。そのうえで、O(開放性)・C(誠実性)・E(外向性)・A(協調性)・N(情緒安定性)の5因子それぞれの個別記事で、響き合う天体・星座・ハウスを丁寧に読み解いていきます。
【第3弾:エニアグラム編 全10本】 三つめの入口が、
占星術とエニアグラム 総論です。エニアグラムは20世紀初頭に Gurdjieff が神秘思想の象徴として導入した九角形に、1960年代のチリで Oscar Ichazo が九つの性格類型を結びつけ、1970年代に Claudio Naranjo が臨床心理学の言葉に翻訳した体系で、現代の代表的著作には Riso & Hudson『Personality Types』(1987)や Helen Palmer『The Enneagram』(1988)があります。MBTIやビッグファイブと違い「根本の動機と恐れ」を中心に置く点、そして本能・感情・思考の3センターと成長/退行の矢印という動的構造を持つ点が特徴です。一方で、ここはぜひ正直にお伝えしておきたいのですが、エニアグラムはMBTIやビッグファイブと比べると学術的・経験的検証が乏しい体系で、信頼性や妥当性については現在も議論が続いています。総論ではその限界も中立に整理したうえで、Type 1〜9 それぞれの個別記事に進める構成にしています。
【第4弾:ヒューマンデザイン編 全6本】 四つめの入口が、
占星術とヒューマンデザイン 総論です。ヒューマンデザインは、1987年に Ra Uru Hu(本名 Alan Krakower、1948-2011)がスペインのイビザ島で「Voice」と呼ぶ8日間の啓示を受けて創始したと自称する体系で、占星術+イチン(易経の64卦)+カバラの生命の樹+ヒンドゥー教のチャクラシステム+量子物理学の用語の折衷から組み上げられています。前3編との大きな違いは、占星術と完全に同じ出生年月日・時刻・場所から計算する「同源体系」である点。Manifestor・Generator・Manifesting Generator・Projector・Reflectorの5タイプに分かれ、それぞれに固有の「戦略」と「非自己テーマ」が割り当てられます。ただし正直にお伝えしておくと、ヒューマンデザインは前3編のなかで最も学術的検証が乏しく、本質的に霊的啓示を出発点とするスピリチュアル体系です。「量子物理学」の用語が体系内で使われていますが、これは物理学界の合意を得たものではなく用語の借用にとどまる点も、総論で中立に整理しています。
どの編から読むにしても、ひとつだけお願いがあります。それは「あなたの星座イコールこのタイプ」「あなたの星座イコールこのスコア」と1対1で決めつけずに、あくまで自己理解の補助線として受け取っていただくことです。MBTIにもビッグファイブにもエニアグラムにもヒューマンデザインにも占星術にも、それぞれ測定や前提のうえでの限界があり、ひとつの体系で人間がまるごと言い当てられることはありません。検証度合いの違いを意識しながら、それでも複数のレンズを重ねて自分を眺めるとき、ひとつの診断だけでは見えなかった奥行きが立ちあらわれてきます。
自分のチャートという、もう一本のレンズから始めてみたい方は、「
無料のホロスコープ作成」で、あなた自身の天体の配置をのぞいてみてください。MBTIやビッグファイブのスコア、エニアグラムのタイプ、ヒューマンデザインの戦略とあわせて眺めると、いつもの自己診断が、ひとまわり深く感じられるはずです。