人を「型」でとらえようとする試みは、けっして新しいものではありません。人類はずいぶん昔から、ばらばらに見える一人ひとりの違いを、いくつかの分かりやすいパターンに整理して理解しようとしてきました。
その古い例として知られるのが、古代ギリシアに端を発する四体液説です。血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁という四つの体液のバランスで気質が決まると考え、そこから多血質・粘液質・胆汁質・憂鬱質という四つの気質が語られました。医学的な裏づけは現代では失われていますが、人を四つのタイプに分けて気質を読むという発想そのものは、後の時代にも形を変えて受け継がれていきます。
時代が下って近代になると、心理学が人の類型を体系的に扱いはじめます。なかでも大きな足跡を残したのが、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユング(1875〜1961)でした。ユングは『心理学的類型』(1921)で、人の心が世界とかかわるときの構えにパターンがあると考え、外向と内向、そして思考・感情・感覚・直観という心の働きを整理します。この枠組みは、のちに紹介するさまざまなタイプ論の源流になりました。
占星術もまた、こうした「人を型で読む」営みのひとつに数えることができます。12星座を四つの
四元素に分け、三つの
三区分に分け、それぞれに支配星を割りあてる。複数の物差しを掛け合わせて、人の傾向を立体的にとらえようとする発想は、四体液説や近代の類型論と地続きのところがあります。古い時代から現代まで、人は手を変え品を変え、自分という存在を理解するためのレンズを磨いてきたのです。
このシリーズでねらうのは、現代で広く使われている心理学的なタイプ論と、占星術とを、同じ机の上に並べて眺めてみることです。比較の対象として念頭に置いているのは、おもに次の三つです。
- MBTI(Myers-Briggs Type Indicator):ユングの類型論を土台に、外向と内向、感覚と直観などの4軸から16タイプを導く性格類型
- ビッグファイブ(五因子モデル):外向性・協調性・誠実性・神経症傾向・開放性という五つの次元で性格をとらえる、学術研究で広く採用されている枠組み
- エニアグラム:人を九つのタイプに分け、それぞれの動機や恐れに注目して自己理解を深める体系
これらを占星術と並べる意味は、おおきく二つあります。ひとつは、共通点です。どのタイプ論も、結局は「自分とはどういう人間か」を映し出す地図として使われています。バラバラに見える自分の傾向に名前がつき、見取り図ができることで、なんとなく感じていた性質を言葉にできる。占星術もMBTIもエニアグラムも、この「自己理解の地図」という役割を分かちもっています。
もうひとつは、前提の違いです。これは正直にお伝えしておきたいところです。ビッグファイブは、統計的な手続きを重ねて作られ、学術研究のなかで再現性が検討されてきた枠組みです。MBTIは広く使われている一方、同じ人が時期をおいて受け直すと別のタイプに出ることがあり、再検査信頼性(同じ結果がどれだけ安定して再現されるか)には限界が指摘されてきました。そして占星術は、出生時の天体配置から人を読む象徴の体系であって、科学的に実証された予測の仕組みではありません。測り方も、検証されてきた度合いも、三者三様に異なります。
だからこのシリーズでは、占星術とほかのタイプ論を「どちらが当たるか」で競わせたり、星座とタイプを1対1で結びつけて決めつけたりはしません。あくまで象徴的・類比的な響き合いとして、それぞれのレンズが照らし出すものを中立に見比べていきます。占星術と心理学のつながりそのものに関心がある方は、その背景を
占星術と心理学や
ユングと心理占星術でも掘り下げています。
このシリーズは、ひとつのタイプ論ごとに「編」を立てて進めていきます。現在は、MBTI編・ビッグファイブ編・エニアグラム編・ヒューマンデザイン編・愛の5つの言語編・アタッチメントスタイル編・リーの愛の6色編・スタンバーグの愛の三角形編・フィッシャーの4タイプ編・ゴットマンの4騎士編・アロン夫妻の自己拡張理論編・Reis & Shaver の親密性プロセスモデル編・Knapp の関係発展モデル編・Levinger の ABCDE モデル編・四体液説編・Gardner多重知能理論編・Holland RIASEC編の17編すべてを公開しています。
【第1弾:MBTI編 全17本】 入口になるのが、総論にあたる
占星術とMBTI 総論です。MBTIの4軸16タイプがユングからどう生まれたか、占星術の四元素・三区分とどこで響き合い、どこで前提が分かれるのかを、ていねいに見渡しています。とくに「思考と風」「感情と水」「直観と火」「感覚と地」という、心理機能と四元素の対応が、二つの体系をつなぐ橋として描かれています。総論のあとは、INTJ・INFJ・ENFP・ISTPといった16タイプそれぞれの個別記事へ進めます。気になるタイプから拾い読みしても、総論から順にたどっても、どちらでも楽しめます。
【第2弾:ビッグファイブ編 全6本】 もう一本の入口が、
占星術とビッグファイブ 総論です。MBTIがユング類型論から演繹的に作られた「型」だったのに対し、ビッグファイブは20世紀後半に語彙データの統計的因子分析から帰納的に取り出された「5次元の連続スコア」。出発点が違うので、占星術との橋も別のかたちで架けます。総論では、ビッグファイブ前史にあたる3因子論を提唱したハンス・アイゼンクが1970〜80年代に占星術を科学的に検証した歴史(Mayo, White & Eysenck 1978)にも触れています。そのうえで、O(開放性)・C(誠実性)・E(外向性)・A(協調性)・N(情緒安定性)の5因子それぞれの個別記事で、響き合う天体・星座・ハウスを丁寧に読み解いていきます。
【第3弾:エニアグラム編 全10本】 三つめの入口が、
占星術とエニアグラム 総論です。エニアグラムは20世紀初頭に Gurdjieff が神秘思想の象徴として導入した九角形に、1960年代のチリで Oscar Ichazo が九つの性格類型を結びつけ、1970年代に Claudio Naranjo が臨床心理学の言葉に翻訳した体系で、現代の代表的著作には Riso & Hudson『Personality Types』(1987)や Helen Palmer『The Enneagram』(1988)があります。MBTIやビッグファイブと違い「根本の動機と恐れ」を中心に置く点、そして本能・感情・思考の3センターと成長/退行の矢印という動的構造を持つ点が特徴です。一方で、ここはぜひ正直にお伝えしておきたいのですが、エニアグラムはMBTIやビッグファイブと比べると学術的・経験的検証が乏しい体系で、信頼性や妥当性については現在も議論が続いています。総論ではその限界も中立に整理したうえで、Type 1〜9 それぞれの個別記事に進める構成にしています。
【第4弾:ヒューマンデザイン編 全6本】 四つめの入口が、
占星術とヒューマンデザイン 総論です。ヒューマンデザインは、1987年に Ra Uru Hu(本名 Alan Krakower、1948-2011)がスペインのイビザ島で「Voice」と呼ぶ8日間の啓示を受けて創始したと自称する体系で、占星術+イチン(易経の64卦)+カバラの生命の樹+ヒンドゥー教のチャクラシステム+量子物理学の用語の折衷から組み上げられています。前3編との大きな違いは、占星術と完全に同じ出生年月日・時刻・場所から計算する「同源体系」である点。Manifestor・Generator・Manifesting Generator・Projector・Reflectorの5タイプに分かれ、それぞれに固有の「戦略」と「非自己テーマ」が割り当てられます。ただし正直にお伝えしておくと、ヒューマンデザインは前3編のなかで最も学術的検証が乏しく、本質的に霊的啓示を出発点とするスピリチュアル体系です。「量子物理学」の用語が体系内で使われていますが、これは物理学界の合意を得たものではなく用語の借用にとどまる点も、総論で中立に整理しています。
【第5弾:愛の5つの言語編 全6本】 五つめの入口が、
占星術と愛の5つの言語 総論です。これまでの4編が「性格類型」全般を扱う地図だったのに対し、第5弾は切り口が変わります。結婚カウンセラー Gary Chapman が1992年に体系化した『The Five Love Languages』(邦題『愛を伝える5つの方法』)は、人を性格特性で分類するのではなく、「愛をどのチャンネルで受け取り、どのチャンネルで渡しやすいか」という、親密な関係に特化した類型論です。Words of Affirmation(言葉)、Quality Time(時間)、Receiving Gifts(プレゼント)、Acts of Service(奉仕)、Physical Touch(身体接触)の5チャンネルそれぞれに、占星術の金星・月・火星・水星と各星座の象徴を重ねていきます。学術的位置づけとしては、Chapman の5言語はビッグファイブやMBTIのような統計的妥当性検証を経た体系ではなく、結婚カウンセリングの臨床現場から立ち上がった実務的な見取り図にあたります。それでも、世界40以上の言語に翻訳されて読み継がれてきた共通言語として、夫婦や親密な関係を語る場で広く参照されてきました。
【第6弾:アタッチメントスタイル編 全5本】 六つめの入口が、
占星術とアタッチメントスタイル 総論です。第5弾の「愛のチャンネル」と同じく恋愛・関係軸の類型論ですが、扱う問いは少し違います。アタッチメントスタイル(愛着スタイル)は、John Bowlby が第二次大戦後の戦災孤児・施設児研究から構想し、Mary Ainsworth が Strange Situation 実験(1978)で体系化、Hazan & Shaver(1987)と Bartholomew & Horowitz(1991)が成人の親密な関係に応用してきた、発達心理学・パーソナリティ心理学・臨床心理学の理論です。「親密な関係の中で、自分と他者をどう捉えるか」を、Secure(安定型)/Anxious-preoccupied(不安型)/Dismissing-avoidant(回避型)/Fearful-avoidant・Disorganized(恐れ・回避型)の4類型として読み解きます。学術的検証は本シリーズの6編のなかで比較的しっかりしている分野ですが、本事典では「愛着障害」という単独診断とは別ものであることを徹底し、子育てや養育者を一方的に責める文脈も避けます。さらに、大人になってから安定型に近づいていく earned secure attachment の可能性も全本で中立に扱います。占星術側の橋は、月・金星・第4ハウス・第7ハウスを軸に、月のハードアスペクトや外惑星との配線を補助線にします。
【第7弾:リーの愛の6色編 全7本】 七つめの入口が、
占星術とリーの愛の6色 総論です。第5弾・第6弾と同じく恋愛・関係軸の類型論ですが、軸はさらに別です。第5弾が「愛をどのチャンネルで授受するか」、第6弾が「親密な関係でどんなパターンを取るか」を問うのに対し、第7弾は「そもそも愛をどんな色合いで経験するか」を問います。カナダの社会学者 John Alan Lee(1933-2013)が1973年の『Colours of Love』(米国版『The Colors of Love』1976)で示した6色論は、色彩論のアナロジーを愛のスタイル整理に応用したものでした。3つの一次色である Eros(情熱型)/Ludus(遊戯型)/Storge(友愛型)と、それらの混合としての3つの二次色 Pragma(実利型=Storge+Ludus)/Mania(憑かれた愛=Eros+Ludus)/Agape(無条件愛=Eros+Storge)。学術的には Hendrick & Hendrick が1986年に開発した Love Attitudes Scale (LAS) が広く使われ、文化横断研究も含めた論文の蓄積はありますが、ビッグファイブのように因子分析から派生した独立次元として確立されているわけではありません。本事典では6色のあいだに価値序列を置かず、Agape を理想視せず、Mania を病理化せず、Ludus を不誠実と裁かない中立的記述を貫きます。占星術側の橋は、金星・火星・月の関係を軸に、6色それぞれに天体・星座・ハウス・四元素の対応を散文で示します。
【第8弾:スタンバーグの愛の三角形編 全11本】 八つめの入口が、
占星術とスタンバーグの愛の三角形 総論です。第5弾から第7弾まで恋愛・関係を扱う3編が続いてきましたが、第8弾はさらに別の軸を提供します。米国イェール大学の心理学者 Robert J. Sternberg(1949-)が1986年に Psychological Review 誌で提唱した三角形理論は、親密な関係を Intimacy(親密性)・Passion(情熱)・Commitment(コミットメント)の3要素に分解し、その有無の組み合わせから7つの愛のタイプ(Liking、Infatuation、Empty love、Romantic love、Companionate love、Fatuous love、Consummate love)を導き出します。3要素の地図ということで、第5弾の「愛のチャンネル」「愛着スタイル」「ラブスタイル」とは別の、「愛の構造分析(要素分解+組み合わせ)」という独自の切り口を持ちます。本人が1997年に Sternberg Triangular Love Scale(STLS)を開発しその後の文化横断研究でも広く用いられ、Lee 6色論よりも実証研究の蓄積は厚い枠組みです。本事典では7タイプのあいだに価値序列を置かず、Consummate を理想化せず、Empty love を失敗と決めつけず、Fatuous love を愚かと否定せず、Infatuation を真の愛ではないと価値下げしない、Sternberg 自身の中立的な記述に沿った姿勢を貫きます。占星術側の橋は、Intimacy=月・蟹座・第4ハウス、Passion=金星×火星・火サイン・第5ハウス、Commitment=土星・山羊座・第7/10ハウス、を骨格に、7タイプはこれらの組み合わせとして扱います。
【第9弾:フィッシャーの4タイプ編 全5本】 九つめの入口が、
占星術とフィッシャーの4タイプ 総論です。これまでの8編が心理学・社会学ベースだったのに対し、第9弾は「神経生物学・進化心理学ベース」という独自の支柱を持ちます。米国ラトガース大学の生物人類学者 Helen E. Fisher(1945-)が2009年の『Why Him? Why Her?』で提唱した4タイプ理論は、ドーパミン・セロトニン・テストステロン・エストロゲンの4つの神経伝達物質・ホルモン系の優位と、恋愛における人の傾向を緩やかに結びつけ、Explorer(開拓者・好奇心とエネルギー)・Builder(建設者・慎重と伝統)・Director(指導者・分析と決断)・Negotiator(交渉者・共感と長期視野)の4タイプとして整理したものです。Fisher 自身が開発した Fisher Temperament Inventory(FTI)と Chemistry.com の大規模ユーザーデータ、そして fMRI 研究(Fisher, Aron, Brown 2005 ほか)を支柱に持つ実証ベースの枠組みです。本事典では神経伝達物質還元主義(「ドーパミンが多いから Explorer」式の単純対応)を避け、Fisher 自身が明確に否定している性別との混同(Director を男性タイプ、Negotiator を女性タイプとする読み)も避けます。占星術側の橋は、Explorer=射手座・木星・天王星・第9/11ハウス、Builder=山羊座・乙女座・土星・地のエレメント・第6/10ハウス、Director=牡羊座・蠍座・火星・冥王星・第1/10ハウス、Negotiator=魚座・蟹座・月・海王星・水のエレメント・第4/7/12ハウス、を骨格にします。多くの人が複数のタイプを併せ持つ点を全本で強調します。
【第10弾:ゴットマンの4騎士編 全5本】 十めの入口が、
占星術とゴットマンの4騎士 総論です。これまでの第5弾から第9弾までは「関係を作る・育てる」軸で愛のかたちを描いてきましたが、第10弾は趣向を変えて「関係が壊れていくときに、何が起きているのか」を扱います。ワシントン大学の心理学名誉教授 John M. Gottman(1942-)は、40年以上にわたって「Love Lab」と呼ばれる観察施設で実際のカップルの会話を録画し、心拍数や皮膚電気反応といった生体データを同期して記録する縦断研究を続け、関係破綻を予測する4つのコミュニケーションパターン、いわゆる「4騎士」を見出しました。Criticism(批判・人格攻撃)、Contempt(侮蔑・嘲笑と軽蔑、4騎士のなかで最強の離婚予測指標)、Defensiveness(防衛・自己正当化)、Stonewalling(石壁・対話の遮断)の4つです。Gottman & Levenson(2000)の14年縦断研究では、4騎士の存在から離婚を90%超の精度で予測できたと報告されています。各騎士には解毒剤(Soft Start-Up/感謝と賞賛の文化/責任の引き受け/Physiological Self-Soothing)が用意されており、関係修復のアプローチも体系化されています。本事典では4騎士を「悪い性格」として扱わず、関係のなかで誰にでも現れうるパターンとして中立に描き、DV(家庭内暴力)や虐待がある場合は別問題として安全第一の原則を全本で明示します。占星術側の橋は、Criticism=水星×火星のハードアスペクト、Contempt=金星×土星/冥王星のハードアスペクト、Defensiveness=火星と第1ハウス、Stonewalling=月×天王星と Flooding の生理学、を骨格にします。
【第11弾:アロン夫妻の自己拡張理論編 全5本】 十一めの入口が、
占星術とアロン夫妻の自己拡張理論 総論です。これまでの10編が「タイプ分類」中心だったのに対し、第11弾は「関係のプロセスとダイナミクス」を扱う独自の切り口です。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の社会心理学者 Arthur Aron と、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)研究でも知られる Elaine N. Aron 夫妻が1986年の『Love and the Expansion of Self』で提唱した自己拡張理論は、「人は誰でも自分の可能性・スキル・資源・視点を広げたいという根本的動機を持ち、親密な関係はその拡張の主要な手段になる」というシンプルで力強い枠組みです。中核となる4概念は、Self-Expansion Motivation(自己拡張動機)、IOS(Inclusion of Other in the Self・他者の自己への包含、1992年に開発された円の重なり図形尺度)、Novelty and Arousal(新規性と覚醒・関係維持の鍵・2000年論文)、The 36 Questions(1997年実験・段階的自己開示で見知らぬ人同士でも深い親密さを生成・Mandy Len Catron の NYT「Modern Love」コラム 2015 で大ブレイク)です。Helen Fisher との共同 fMRI 研究(2005)でも知られ、社会心理学の主要パラダイムの一つ。本事典では自己拡張を共依存や自己消失と混同しない姿勢、36の質問をマニピュレーションとして扱わない姿勢、健全な境界線への留保を全本で明示します。占星術側の橋は、Self-Expansion=木星・第9ハウス・射手座、IOS=第8ハウス・月・海王星、Novelty=天王星・第5ハウス、36Q=水星・第3/7ハウス、を骨格にします。
【第12弾:Reis & Shaver の親密性プロセスモデル編 全5本】 十二めの入口が、
占星術と Reis & Shaver の親密性プロセスモデル 総論です。第11弾 Aron 自己拡張理論と並ぶ「関係のプロセスとダイナミクス」軸ですが、解像度が違います。Aron が「関係を通じた自己拡張」というマクロなプロセスを描くのに対し、Reis & Shaver は「自己開示と応答性のループ」というミクロなプロセスを描きます。ロチェスター大学の社会心理学者 Harry T. Reis と、カリフォルニア大学デービス校の Phillip R. Shaver(第6弾アタッチメントスタイル編の Hazan & Shaver と同一人物・同じ研究者が「内的作業モデル」軸と「対人プロセス」軸の両方を歩んできた)が1988年の論文「Intimacy as an Interpersonal Process」で提唱しました。中核4概念:Self-Disclosure(自己開示・親密性ループの起点)、Partner Responsiveness(パートナーの応答性・Understanding/Validation/Caring の3要素)、Perceived Partner Responsiveness(知覚された応答性・Reis et al. 2004 で「親密性研究の組織化概念」として整理・実際の応答よりも相手にどう知覚されたかが親密性を決める)、Intimacy Loop(親密性ループ・開示→応答→知覚→次の開示の動的循環)。Laurenceau et al. (1998) の日記法研究で実証され、社会心理学の主要パラダイムの一つです。本事典では「自己開示すれば親密性が育つ」式の単純化を避け、応答性の低さを一方の責任に押し付けない姿勢を全本で明示します。占星術側の橋は、Self-Disclosure=水星・月・第3ハウス、Responsiveness=金星・月・第7ハウス、Perceived=月の主観フィルター・海王星・第12ハウス、Loop=金星×月のアスペクト、を骨格にします。
【第13弾:Knapp の関係発展モデル編 全11本】 十三めの入口が、
占星術と Knapp の関係発展モデル 総論です。Sternberg 三角形編(第8弾)以来の11本シリーズで、関係を時間軸の段階モデルとして描く独自軸です。テキサス大学オースティン校のコミュニケーション学名誉教授 Mark L. Knapp が1978年の『Social Intercourse: From Greeting to Goodbye』で提唱した10段階モデルは、2つのフェーズに分かれます。Coming Together(接近)5段階:Initiating(開始・第一印象)→ Experimenting(実験・スモールトーク)→ Intensifying(強化・自己開示と「私たち」意識)→ Integrating(統合・社会的アイデンティティの融合)→ Bonding(結合・結婚や公的コミットメント)。Coming Apart(離反)5段階:Differentiating(差別化・「私たち」から「私」へ)→ Circumscribing(限定化・対話の制限)→ Stagnating(停滞・会話の儀礼化)→ Avoiding(回避・物理的/心理的距離)→ Terminating(終結・正式な別離)。前半と後半の対称構造が美しい設計です。Knapp 自身が「すべての関係が10段階を順に進むわけではない」「飛び越し・逆戻りもある」と明記しており、決定論モデルではありません。Avtgis et al. (1998) 等の実証研究で各段階の認知・感情・行動指標が確認されています。本事典では Bonding を「ゴール」と理想化せず、Terminating を「失敗」扱いせず、DV/虐待がある場合の Avoiding/Terminating が安全な選択である点を Coming Apart 5段階の全本で明示します。占星術側の橋は、ハウス系の流れ(第1H Initiating → 第3H Experimenting → 第5H Intensifying → 第7H Integrating → 第10H Bonding → 第11H Differentiating → 水星×土星 Circumscribing → 土星 Stagnating → 第12H Avoiding → 第8H/冥王星 Terminating)を骨格にします。
【第14弾:Levinger の ABCDE モデル編 全6本】 十四めの入口が、
占星術と Levinger の ABCDE モデル 総論です。第13弾 Knapp 10段階モデルと並ぶ関係時間軸モデルですが、Levinger はより粗い5段階で全体像を見通します。マサチューセッツ大学アマースト校の社会心理学者 George Levinger が1980年の Journal of Experimental Social Psychology 論文「Toward the analysis of close relationships」で提唱した ABCDE モデルは、Attraction(魅力・引きつけ)→ Building(構築・相互依存の確立)→ Continuation(継続・長期コミットメント)→ Deterioration(劣化・コンフリクトの蓄積)→ Ending(終結・別離)の5段階です。Levinger は1960年代から夫婦関係・離婚研究を続けてきた人物で、ABCDE は結婚・離婚研究で広く使われる古典的フレームワークです。Knapp 10段階より粗いぶん、Knapp の Initiating + Experimenting が Levinger の A、Intensifying + Integrating が B、Bonding が C、Differentiating + Circumscribing + Stagnating + Avoiding が D、Terminating が E と対応します。Levinger は「順番通り進むとは限らない」「Continuation のあとに新たな Building が起きる」「Deterioration から修復に向かう」など、行き来する地図として描きました。本事典では Continuation を「ゴール」と理想化せず、Ending を「失敗」扱いせず、DV/虐待がある場合の Ending が安全と尊厳を守る選択である点を Deterioration / Ending 記事で明示します。占星術側の橋は、A=金星×火星・第5H、B=金星・第7H・月、C=土星・第4/10H、D=土星×天王星・第12H、E=冥王星・第8/12H、を骨格にします。
ここからは、第1弾〜14弾の「性格・恋愛」軸とは異なる切り口で、歴史・才能・職業という3つの新しい軸からタイプ論と占星術を重ねていきます。
【第15弾:四体液説編 全5本】 十五めの入口が、
四体液説と占星術 総論です。ここまでの14編が近現代の心理学・社会学に基づくタイプ論だったのに対し、第15弾は歴史の源流まで遡ります。古代ギリシアのヒポクラテス(紀元前460頃〜370頃)に始まる四体液説は、ガレノス(129〜200頃)が「気質論(De Temperamentis)」で体系化し、血液・黄胆汁・黒胆汁・粘液という4つの体液のバランスで人の気質を読みました。この四体液は、2世紀のプトレマイオスが「テトラビブロス」で占星術の四元素(火・地・風・水)と明確に統合し、多血質=風(温+湿)、胆汁質=火(温+乾)、憂鬱質=地(冷+乾)、粘液質=水(冷+湿)という対応が確立されました。現代医学では否定された体系ですが、四元素・四性質の枠組みは現代占星術のエレメント論として今も息づいています。本事典では4つの気質を中立に扱い、「正しい医学」としてではなく「古代の象徴的な自己理解の地図」として読み解きます。占星術側の橋は、多血質=風サイン・木星、胆汁質=火サイン・火星、憂鬱質=地サイン・土星、粘液質=水サイン・月、を骨格にします。
【第16弾:Gardner 多重知能理論編 全9本】 十六めの入口が、
多重知能理論と占星術 総論です。第15弾が「歴史の源流」だったのに対し、第16弾は「才能」という新しい軸を提供します。ハーバード大学の発達心理学者 Howard Gardner が1983年の著書「Frames of Mind」でIQ一元論に異を唱え、人間の知能は単一の尺度では測れないとして、言語的・論理数学的・空間的・音楽的・身体運動的・対人的・内省的の7領域を提唱し、1999年に博物的知能を加えて8つに拡張しました。占星術では、各天体がそれぞれ異なる能力領域を象徴してきた伝統があり、水星=言語的知能、土星=論理数学的知能、天王星=空間的知能、金星=音楽的知能、火星=身体運動的知能、月=対人的知能、海王星=内省的知能、冥王星=博物的知能という対応は、どちらの体系にとっても自然な橋として読むことができます。ただし多重知能理論は心理測定学的にはエビデンスの強さで議論があり(Waterhouse 2006ほか)、占星術は実証科学ではないため、両者を掛け合わせて「あなたの天職はこれ」と断定するのは二重の飛躍です。自己理解の補助線として並べ読む姿勢を全本で貫きます。
【第17弾:Holland RIASEC 理論編 全7本】 十七めの入口が、
RIASEC理論と占星術 総論です。第16弾が「才能」を扱ったのに対し、第17弾は「職業興味」という軸を提供します。ジョンズ・ホプキンズ大学の心理学者 John L. Holland(1919〜2008)が1959年に発表し、1997年の第3版「Making Vocational Choices」で完成させた職業興味理論は、人の職業興味を現実型(R)・研究型(I)・芸術型(A)・社会型(S)・企業型(E)・慣習型(C)の6タイプに分類し、六角形モデルで近接・対角の関係を示しました。SDS(Self-Directed Search)やStrong興味検査の基盤として、職業心理学で最も広く使われる枠組みの一つです。占星術側の橋は、R=土星・火星・地サイン、I=天王星・水星・水瓶座、A=金星・海王星・魚座、S=月・木星・蟹座、E=太陽・木星・獅子座、C=土星・水星・乙女座、を骨格にし、MC・第10ハウス・第6ハウスを職業適性の読み方の中心に据えます。RIASECは自己報告式の興味検査に基づく実証的モデルであり、占星術は象徴体系です。両者を掛け合わせた職業断定を避け、自己理解の補助線として並べ読む姿勢を全本で貫きます。
どの編から読むにしても、ひとつだけお願いがあります。それは「あなたの星座イコールこのタイプ」「あなたの星座イコールこのスコア」と1対1で決めつけずに、あくまで自己理解の補助線として受け取っていただくことです。MBTIにもビッグファイブにもエニアグラムにもヒューマンデザインにも、Chapman の愛の5つの言語にも、アタッチメントスタイルにも、リーの愛の6色にも、スタンバーグの愛の三角形にも、フィッシャーの4タイプにも、ゴットマンの4騎士にも、アロン夫妻の自己拡張理論にも、四体液説にも、多重知能理論にも、RIASEC理論にも、そして占星術にも、それぞれ測定や前提のうえでの限界があり、ひとつの体系で人間がまるごと言い当てられることはありません。検証度合いの違いを意識しながら、それでも複数のレンズを重ねて自分を眺めるとき、ひとつの診断だけでは見えなかった奥行きが立ちあらわれてきます。
自分のチャートという、もう一本のレンズから始めてみたい方は、「
無料のホロスコープ作成」で、あなた自身の天体の配置をのぞいてみてください。性格軸のMBTI・ビッグファイブ・エニアグラム・ヒューマンデザイン、恋愛軸の愛の5つの言語からLevinger ABCDEモデルまで、歴史軸の四体液説、才能軸のGardner多重知能、職業軸のHolland RIASEC。これら17のレンズと星のチャートをあわせて眺めると、いつもの自己診断が、ひとまわり深く感じられるはずです。