肉眼で見えた7つの星
いま占星術で使う天体は10個ありますが、古代から長らく使われてきたのは7つだけでした。これを古典の7天体と呼びます。
その顔ぶれは、太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星。じつはこの7つには、はっきりした共通点があります。すべて、望遠鏡を使わなくても肉眼で見える、という点です。
なかでも土星は、当時知られていた天体のなかで最も外側にありました。土星より先には、見える星がない。だから昔の人にとって土星は、いわば「既知の宇宙の果て」を示す境界線だったのです。
この境界線は歴史の豆知識にとどまりません。望遠鏡が発明される前に組み立てられた技法は、当然ながらすべて土星までの7天体だけで設計されています。伝統的な占星術の解説で天王星や海王星が出てこないのは、書き漏らしではなく、そもそもの設計図に含まれていないからです。
この7天体は、じつは身近なところにも顔を出しています。曜日です。日・月・火・水・木・金・土という一週間の並びは、まさにこの7つの星から名づけられたもの。私たちは毎週、古典の7天体の名前を口にしているわけです。
望遠鏡が広げた宇宙
「宇宙の果ては土星」という常識は、望遠鏡の登場によって、のちにくつがえされます。
最初の一撃は1781年。ウィリアム・ハーシェルが、土星のさらに外側に新しい惑星を見つけました。これが天王星です。土星止まりだった世界が、一気に外へ広がった瞬間でした。
この発見が特別だったのは、単に天体の数が増えたということではありません。土星を最後とみなして組み立てられてきた技法の外側に、はじめて新しい変数が現れたということです。伝統的な技法がそのまま通用する範囲と、そうでない範囲の境目が、この瞬間に生まれました。
続いて1846年、ヨハン・ガレが海王星を発見します。こちらは「未知の惑星があるはずだ」という計算上の予測が先にあり、その狙いどおりの位置で見つかった、という珍しい発見でした。さらに1930年、クライド・トンボーが冥王星を見いだします。
おもしろいのは、占星術がそのたびに新しい天体を体系へ取りこんでいったことです。新顔が見つかるたびに「この星は何を象徴するのか」という解釈が考えられ、読みの枠組みそのものが外側へと拡張されていきました。
天体の三つのグループ
こうして10個になった天体は、動きの速さ(言いかえれば公転の周期)を手がかりに、三つのグループへ分けて考えられます。
一つめが個人天体です。
・太陽・月・水星・金星・火星の5つ
・動きが速く、人によって配置がはっきり変わる
・その人ならではの個性や、日々の心の動きをあらわす
動きの速い天体が個性の指標になるのは、短い間隔でサインを移り変わるぶん、生まれた日が数日ずれるだけでも配置が変わるからです。きょうだいであっても誕生日が離れていれば、個人天体の並びはまったくの別物になり得ます。だからこそ、この5つは一人ひとりを区別する材料として扱われます。
二つめが社会天体です。
・木星と土星の2つ
・個人天体より動きがゆっくり
・社会のなかでの広がりや責任など、外の世界との関わりをあらわす
三つめがトランスサタニアン(世代天体)です。
・土星より外側の天王星・海王星・冥王星
・動きがとても遅く、同じサインに何年もとどまる
・だから同じ世代の人どうしで配置を共有する
たとえば冥王星は、一つのサインを通り抜けるのに十数年から二十年ほどかかります。だから近い年に生まれた人たちは、そろって同じ冥王星のサインを持つことになります。星座占星術で「世代の星」と呼ばれるゆえんです。
トランスサタニアンのサインだけを取り上げて、太陽星座のように個人の性格を言い当てようとすると、話がかみ合わなくなることがあります。同じサインの冥王星を同世代のたくさんの人が共有している以上、そこから読み取れるのは一人の個性というより、その世代がまとめて背負うテーマだからです。
この外側の3天体は、現代式では支配星の役目も引き受けています。天王星は水瓶座、海王星は魚座、冥王星は蠍座、という具合です。それぞれの天体が何を意味するのか、くわしくは事典の各天体ページをご覧ください。