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占星術と Levinger ABCDE モデル:関係発達5段階の枠組み
Levinger 1980 の ABCDE 5段階を第5/7/8/12ハウスで読み替える総論
5段階
A/B/C/D/E
原典
Levinger 1980
Levinger の ABCDE モデルとは:関係発達5段階の枠組み
George Levinger は、マサチューセッツ大学アマースト校で長く教鞭をとった社会心理学者です。1960年代から夫婦関係・離婚研究を続け、家族や親密関係の領域で多くの論文を発表してきました。その集大成のひとつが、1980年に Journal of Experimental Social Psychology 誌へ寄せた論文「Toward the analysis of close relationships」で示された ABCDE モデルです。先行する Levinger & Snoek(1972)の対人魅力モデルを土台にしながら、関係の始まりから終わりまでを5段階で見通す枠組みとして整理されました。 5段階は、頭文字をとって A・B・C・D・E と呼ばれます。 A は Attraction(魅力・引きつけ)。出会いや初期の関心、互いに惹かれ合う段階です。まだ深い関わりはありませんが、心が動き、相手のことが気になりはじめます。 B は Building(構築)。実際に関わり、自己開示を重ね、相互依存が育っていく段階です。ふたりの世界が少しずつ形を持ち、共通の物語が編まれていきます。 C は Continuation(継続)。関係が安定し、長期のコミットメントとして続いていく段階です。結婚や同居、長く続くパートナーシップなど、暮らしの基盤としての時間が流れます。 D は Deterioration(劣化)。関わりの質が落ち、不満やすれ違い、葛藤が積もっていく段階です。距離が広がり、対話の温度が下がりはじめます。 E は Ending(終結)。別離・離婚・自然消滅など、関係に区切りがつく段階です。終わりはひとつの章の終わりであって、人としての失敗ではありません。 ここで強調しておきたいのは、5段階は線形の運命ではないということです。Levinger 自身、1983年の論文「Development and change」で、関係は A→E へ一方通行に進むのではなく、Continuation のあとに新たな Building が起きたり、Deterioration から修復に向かったりと、行き来しながら展開するものだと述べています。Continuation で長く落ち着く関係もあれば、A から B を飛ばして急速に C へ進むように見える関係も、A から E まで短い時間で駆け抜ける関係もあります。 このシリーズの第13弾である Knapp 10段階モデルとよく比較されます。Knapp が Initiating(開始)から Terminating(終結)まで10段階で関係の局面を細かく分けるのに対して、Levinger は5段階で大づかみに全体像を描きます。Knapp は会話の質感や非言語サインまで読み込みたいときに便利で、Levinger は人生のスパンで「いまどのあたりにいるのか」を見渡したいときに役立つ、と整理するとしっくりきます。両者は対立せず、補い合う地図です。 また、Continuation を「成功」、Ending を「失敗」と読まないことも大切です。長く一緒にいることだけが関係の価値ではありません。短くても深い Attraction を共有した時間、丁寧に終えた Ending、その後の友情としての再 Building も、すべて関係の正当な姿です。とくに、暴力や支配・恐怖が関わる関係においては、Ending が安全と尊厳を守るための賢明な選択になります。本シリーズでは一貫して、5段階を価値づけずに、ひとつの地図として扱います。
占星術との対応:A〜E を天体・星座・ハウスで読み替える
5段階を占星術の象徴体系に重ねると、地図がより立体的になります。ここで使うのは天体・星座・ハウスといった基本要素で、原典に明示的に対応関係があるわけではありません。あくまで Levinger のモデルを読みやすくする補助線として並べていきます。 A(Attraction)に響き合うのは、まず金星火星です。金星はときめき・好み・美意識を、火星は衝動・行動・接近のエネルギーを表します。ふたつが トラインで響き合うとき、心が動き、近づきたい衝動が生まれます。ハウスでは、遊び・恋愛・自己表現を司る 第5ハウスが舞台になります。火の星座(牡羊座獅子座射手座)が四元素のなかでもこの段階の熱を象徴します。 B(Building)では、金星・水星が前面に出てきます。金星は心地よさのチューニング、水星は対話と自己開示、月は安心と情緒の交流を担当します。ハウスでは、一対一の関わりを扱う 第7ハウスが中心舞台になり、家庭的な土台を象徴する 第4ハウスも支えに入ります。風の星座(双子座天秤座水瓶座)の会話力と、水の星座(蟹座蠍座魚座)の共感力が、Building の質を左右します。 C(Continuation)では、土星が主役級になります。土星は構造・責任・継続を象徴する天体で、関係が制度や暮らしの形になっていく段階と相性がよい働きをします。ハウスでは、家庭の根を表す 第4ハウス、社会的役割を表す 第10ハウスが地盤になります。地の星座(牡牛座乙女座山羊座)の現実感覚とモダリティの不動の質が、長期の安定を支えます。ここでは 太陽が、ふたりで描く人生の物語の中心としての光を担当します。 D(Deterioration)では、土星と天王星の緊張が読みどころになります。土星はマンネリや義務感、天王星は離反や変化への衝動を表し、両者の スクエアオポジションが重い空気を象徴します。ハウスでは、隠れた葛藤や見えない疲労を蓄える 第12ハウス、深い結びつきが揺らぐ場としての 第8ハウスに注意が向きます。火星の使い方を間違えると攻撃に転じ、金星が遠のくと優しさが枯れていきます。 E(Ending)には、冥王星の主題が深く関わります。冥王星は終わりと再生、手放しと変容を司る天体で、Ending を「破壊」ではなく「変容」として読み直す視点を与えてくれます。ハウスでは、深い別れと再生の場である 第8ハウス、見えない領域での区切りを扱う 第12ハウスが舞台になります。海王星が静かに溶かしていく Ending もあれば、天王星が突然区切りを入れる Ending もあり、表情はさまざまです。 これらの対応は、「あなたはこの天体配置だから Deterioration に陥りやすい」といった人格固定や、「この配置は第○段階で関係が終わる」といった予言のためではありません。出生図は、関係のなかで自分のどの感受性が動きやすいか、どの段階で疲れやすく、どの段階で輝きやすいかを眺めるための鏡として使います。
二つの視点を重ねて:自己理解とパートナーシップに活かす
Levinger の ABCDE モデルと占星術を重ねるときに大切なのは、二つを「診断」ではなく「複眼の地図」として使う姿勢です。社会心理学のモデルは、たくさんの関係を観察して見えてきた共通のパターンを記述しています。占星術は、千年単位で磨かれてきた象徴体系で、個人の質感や時間の流れを物語として読みます。性格や運命を一意に決めるための装置ではありません。両者は、関係をいろいろな角度から眺める補助線として並ぶときに、いちばん力を発揮します。 実際の活かし方として、まずいまの自分の関係が ABCDE のどのあたりにいるかを、ゆるく見渡してみてください。Attraction の熱がまだ残っているのか、Building の最中で自己開示の途中なのか、Continuation の安定のなかで小さな飽きが芽吹きはじめたのか、Deterioration のサインを感じているのか、Ending のあとの再構成の時間にいるのか。Knapp 10段階の細かい局面が気になるときは Knapp 10段階モデルを、関係の冷却を別角度で眺めたいときは Gottman の四騎士を、親密さの発達そのものを見たいときは Reis & Shaver の親密性プロセスを併読すると、立体感が増します。 そのうえで、出生図の金星・火星・月・土星・冥王星の配置や、第5ハウス第7ハウス第8ハウス第12ハウスの様子を眺めてみると、自分がどの段階で何に反応しやすいかが見えてきます。同じ Continuation でも、土星優位の人は責任感で支え、月優位の人は情緒の安心で支え、金星優位の人は美しい日常で支える。同じ Ending でも、冥王星のテーマが強い人は変容として終え、海王星のテーマが強い人は静かに溶かして終え、天王星のテーマが強い人は鮮やかに区切りをつける。そんなふうに、同じ段階でも質感は人それぞれです。 ここでひとつ大切な留保を置きます。Levinger の ABCDE モデルは、1980年の Journal of Experimental Social Psychology 論文と、1983年の Close Relationships 所収章で示された記述的な発達モデルです。関係の典型的な流れを観察から整理したもので、ビッグファイブのように独立した心理測定次元として開発されたものではありません。占星術もまた、定量的な測定装置ではなく、長く受け継がれてきた象徴の言語です。両者を組み合わせるとき、出てくるのは診断書ではなく、関係を眺めるための地図です。「この段階で必ずこうなる」と決めつけず、「いまここに似た風景がある」と眺めるところに、この組み合わせの良さがあります。 5段階は、A→B→C→D→E と順番通り進むとは限りません。Continuation のなかで小さな Building が何度も起きる関係もあれば、Deterioration から手当てをして Continuation に戻る関係もあります。Ending のあとに、しばらく時間をおいて、新しい Attraction として再会する関係もあります。直線ではなく、行き来する道として地図を眺めてください。 また、Continuation を「ゴール」、Ending を「失敗」と読まないことを、もう一度確認しておきます。長く続くことだけが関係の価値ではありません。深く出会い、丁寧に手放した関係も、人生の財産です。とくに、暴力・支配・恐怖がある関係では、Ending を選ぶことは「失敗」ではなく、安全と尊厳を守るための賢明で勇気ある選択です。必要なときは、専門の相談窓口や信頼できる人の力を借りてください。Levinger も占星術も、自分を責めるためではなく、自分を理解し、守るために使う言葉です。 最後に、この枠組みは欧米の恋愛・結婚研究の文脈で生まれたことも添えておきます。家族の形やパートナーシップのあり方は文化や時代によって違い、結婚しない長期関係、複数のパートナーシップ、同性のパートナーシップ、距離をとりながら続く関係など、5段階の表情は多様です。あなたの関係の固有の物語を、5段階の地図に押し込めずに、地図を物語に合わせて読んでください。 シリーズでは、ここから先、5段階を一本ずつ取り上げていきます。出会いの熱を扱う Attraction、関係を編んでいく Building、暮らしの基盤としての Continuation、葛藤の積もる Deterioration、別離と再生の Ending。気になる段階から読み進めてみてください。関係を眺めたい背景として、恋愛と占星術類型論シリーズ目次もあわせて開くと、地図の解像度が上がります。 自分の関係段階を出生図で確かめてみたい方は、無料のホロスコープ作成から、第5/7/8/12ハウス・金星・火星・土星・冥王星の配置を眺めてみてください。
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参考文献:Levinger, George. "Toward the analysis of close relationships." Journal of Experimental Social Psychology, 16(6), 510-544(1980):ABCDE モデルの原典 / Levinger, George. "Development and change." In H. H. Kelley et al. (Eds.), Close Relationships, pp. 315-359(Freeman, 1983):理論的展開 / Levinger, George & Snoek, J. Diedrick. "Attraction in Relationship: A New Look at Interpersonal Attraction"(General Learning Press, 1972):先行研究 / 本事典の各天体・星座・ハウス・四元素の各項目に準拠
監修:編集部(占星術担当)最終更新 2026-06-21
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