リーの愛の6色とは:理論の背景と6つのラブスタイル
カナダの社会学者 John Alan Lee(1933-2013)は、トロント大学で愛の社会学やゲイ・スタディーズを研究した人物です。1970年代初頭、彼はカナダ・英国の数百人へのインタビュー調査をもとに、人々が経験する愛のかたちを6つの色彩として整理しました。その成果が1973年の『Colours of Love』、そして1976年の改訂版『The Colors of Love』にまとめられた、いわゆるリーの愛の6類型(colors of love)です。
Lee が用いた比喩は色彩論のアナロジーです。光や絵の具に3つの一次色(primary colors)があり、それらを混ぜることで二次色(secondary colors)が生まれるように、愛のスタイルにも3つの一次色と、その混色としての3つの二次色がある、という見立てでした。一次色は Eros(エロス・情熱型)、Ludus(ルダス・遊戯型)、Storge(ストルゲ・友愛型)の3つ。二次色は Pragma(プラグマ・実利型/Storge+Ludus)、Mania(マニア・憑かれた愛/Eros+Ludus)、Agape(アガペー・無条件愛/Eros+Storge)の3つです。
Eros は身体的な惹かれと強烈なロマンチック愛を中心に置く色合いで、一目惚れや「運命の人」の感覚と結びつきます。Ludus は愛をゲームとして楽しむ志向で、軽やかさや複数の関係への寛容さを特徴とし、深いコミットメントには慎重です。Storge は友情から穏やかに育っていく愛で、長い時間をかけた深い親しみと安定を重んじます。
二次色に移ると、Pragma は条件と将来設計を冷静に見比べる実利的な色彩で、価値観や生活リズムの相性を大切にします。Mania は強い情熱と不安が交互に押し寄せる憑かれた愛で、嫉妬や依存と紙一重の高い感情の振幅を持ちます。Agape は自分を脇に置いて相手の幸せを願う献身的・利他的な愛のかたちです。
ここで大切なのは、Lee 自身が「pure type は稀」と述べていた点です。多くの人は複数の色を併せ持ち、相手や時期、関係の局面によって優位な色が変わります。どれかが「最高」「健全」でどれかが「劣っている」という序列はありません。Agape を理想視したり、Mania を病理化したり、Ludus を不誠実と裁いたりするのは、Lee の中立的な記述の枠を超えてしまう読み方です。あくまで愛のかたちの多様性を眺める6つの窓として受け取るのが、原典に近い姿勢です。
Lee の6色を心理学研究に橋渡ししたのが、Clyde & Susan Hendrick による1986年の Love Attitudes Scale (LAS) でした。6色それぞれを質問紙で測定するこの尺度は、その後の愛の研究で広く用いられ、文化横断的な検討も重ねられてきました。半世紀を経てなお参照されているのは、愛のかたちを言語化する語彙として使いやすいからだといえます。
占星術との対応:6色を天体・星座・ハウスで読み替える
ここからは、Lee の6色を占星術の象徴と並べてみる試みです。占星術側の言葉は診断ではなく、あくまで響き合う場所を探すための補助線として扱います。出生図から愛のスタイルを断定するためではなく、自分のなかの色合いを照らし返すための鏡として読み替えていきます。詳しい愛の象徴の地図は
占星術で読む恋愛と愛や
金星と愛のかたちも参考になります。
Eros(情熱型)と響き合いやすいのは、欲求と行動の
火星、惹かれ合いの
金星、そして火のサインである
牡羊座・
獅子座あたりです。第一印象から強い感情が立ち上がる感覚は、恋愛とロマンスのハウスである
第5ハウスや、火星と金星の
コンジャンクションなど、火のエネルギーが強調される配置と類比的に重ねやすい色合いです。四元素の働きを整理した
四元素のコラムも合わせて読むと立体的になります。
Ludus(遊戯型)は、軽やかさと言葉のやり取り、複数の選択肢を回遊する志向と通じます。コミュニケーションの
水星、双子の
双子座、人と人をつなぐ
第3ハウスあたりが、遊戯としての愛の語彙に近い場所です。風の元素のフットワークの軽さ、金星と水星の組み合わせも、Ludus の色合いを描き出すモチーフとして読めます。
Storge(友愛型)は、長い時間をかけて育つ親しみと安心感が核です。母性や日々の生活リズムを司る
月、家庭と情緒の
蟹座、ルーツの
第4ハウス、安定の
牡牛座などが響き合う場所として挙げられます。金星と月の調和的なつながりは、友情から愛へとゆるやかに移ろう Storge の温度を象徴的に描き出します。
Pragma(実利型)は、条件のすり合わせと将来設計を大切にする色合いです。構造と責任の
土星、実務の
乙女座、長期計画の
山羊座、日常の段取りの
第6ハウス、パートナーシップの契約面を司る
第7ハウスなどが、Pragma の語彙と類比的に通じます。金星と土星の
トラインなどは、現実的な愛の地に足のついた手触りを描く配置として読めます。
Mania(憑かれた愛)は、強烈な情動と不安が一体となった高い振幅が特徴です。深い変容を促す
冥王星、極限まで掘り下げる
蠍座、共有と融合の
第8ハウス、金星と冥王星の
スクエアや
オポジションなどは、Mania の振動と響き合う場所です。ただしこれらの配置を「執着する人」と決めつける読み方は避け、感情の振幅が大きくなりやすい場所として中立に眺めます。
Agape(無条件愛)は、自己を超えて相手や全体に尽くす献身です。境界を溶かす
海王星、慈悲の
魚座、自己超越の
第12ハウス、公共への奉仕の
第11ハウス、拡大と寛容の
木星などが、Agape の語彙と響き合います。金星と海王星のソフトなつながりは、無条件の眼差しの象徴的な背景として読むことができます。
なお、こうした対応はひとつの読み方であって、「金星牡羊座なら必ずエロス」「蠍座生まれは全員マニア」のように1対1で決定する図式ではありません。出生図のなかには複数の元素・天体・ハウスが共存しており、6色の濃淡もまた複数の層が重なって現れます。
二つの視点を重ねて:自己理解とパートナーシップに活かす
Lee の6色は、性格全般を測る類型論ではなく、愛のスタイルに焦点を絞った枠組みです。この点で、当事典の性格類型シリーズのほかの記事と役割が異なります。
類型論シリーズ総論で扱う
MBTI×占星術、
ビッグファイブ×占星術、
エニアグラム×占星術が性格全般の地図だとすれば、6色は「どんな質の愛を志向するか」という愛のスタイル軸を描きます。
愛の領域に絞った類型としては、Gary Chapman の
5つの愛の言語×占星術が「どのチャンネルで愛を授受するか」、Bowlby と Ainsworth に始まる
愛着スタイル×占星術が「親密な関係のなかでどんなパターンを取りやすいか」を扱います。これに対し Lee 6色は「そもそも愛をどんな色合いで経験するか」を問うもので、3者は互いに補い合う別軸として並べて使うことができます。
学術的な留保も添えておきます。Lee の6色は、社会学者によるインタビュー調査から帰納的に整理された類型で、ビッグファイブのように厳密な因子分析から導き出された次元ではありません。Hendrick & Hendrick の Love Attitudes Scale によって心理学研究で広く測定されるようになり、文化横断研究も含めた論文の蓄積はありますが、人格特性5因子と同等に確立された統一体系というわけではありません。一方で、愛のかたちの多様性を6つの色彩として描き出す枠組みは、自分のスタイルを認識する手がかりや、パートナーとのすれ違いを言語化する道具として、半世紀にわたって参照されてきました。占星術もまた、自然科学的に実証された測定装置ではなく、長い歴史を持つ象徴体系です。両者を厳密な診断ではなく、自己理解の補助的な地図として並べる姿勢が望ましいといえます。
実際の使い方としては、まず6本の個別記事から自分のなかで濃く感じる色を眺めてみるのがおすすめです。情熱とロマンスの色合いが強い方は
Eros 編、軽やかな遊戯としての愛に親しみを感じる方は
Ludus 編、友情から育つ穏やかな愛に共感する方は
Storge 編へ。条件や将来設計を大切にしたい方は
Pragma 編、強い情動の振幅と向き合いたい方は
Mania 編、献身的な愛のかたちを見つめたい方は
Agape 編が入口になります。
読み進めるときは、ひとつの色に自分を押し込めないことが大切です。多くの人は2〜3色の混色として愛を経験しますし、相手やライフステージによっても優位な色が移ろいます。占星術側もまた、ひとつの天体や星座だけで愛のかたちを決めつけることはしません。金星・火星・月・第5ハウス・第7ハウスといった複数の場所を眺め渡し、そこに浮かぶ色合いを総合的に読むのが基本姿勢です。
最後にひとつだけ。6色のなかに「正しい愛」はありません。Agape が最高でも、Mania が病的でも、Ludus が不誠実でもなく、それぞれが愛のかたちの一面を担う色彩です。占星術の象徴を重ねることで見えてくるのは、自分がどの色合いを濃く帯びやすいかという傾向と、相手と自分の色の組み合わせが生む独特の風景です。それを良し悪しで裁くのではなく、関係を眺める語彙として使えると、すれ違いも対話の入口に変わっていきます。
自分のなかの愛のスタイルを出生図で確かめてみたい方は、
無料のホロスコープ作成から、金星・火星・月の配置を眺めてみてください。