「12星座」から始まる、かけ算の世界
「あなたは何座?」と聞かれて答えるのは、たいてい太陽星座です。太陽星座は12種類。けれど占星術は、本当はもっとたくさんの要素を組み合わせて読み解きます。太陽星座が示すのは、その人が意識的に表現しようとする中心的な意志や生き方の方向性であり、感情の動かし方や、初対面の相手に与える印象までを語るものではありません。
たとえば、心の動きをあらわす「月」を加えるとどうなるでしょう。太陽が12通り、月も12通りなので、組み合わせは12×12で144通りになります。さらに、生まれた瞬間に東の地平線へ昇っていたサイン「アセンダント」を加えると、12×12×12で1,728通りです。アセンダントは出生時刻に連動して変わるため、同じ生年月日であっても、生まれた時間帯が違えば別のサインになることがあります。
ポイントは、要素を一つ足すごとに数が「12ずつ増える」のではなく「12倍される」こと。足し算ではなくかけ算で伸びるので、数はあっという間にふくれあがっていきます。雑誌やアプリで見かける「今日の12星座」のコーナーが太陽星座だけで書かれているのは、このためです。そこで語られる傾向は太陽という一要素に絞った大まかな型であり、月やアセンダントを重ねた瞬間に、無数の個人差へと枝分かれしていきます。
天体が増えるほど、数は跳ね上がる
天体を一つ加えるたびに、可能性は12倍されていきます。実際のホロスコープは円の外側に12サインが並ぶ図で、天体を一つ増やすということは、その円のどこに新しい天体を書き込むかという選択肢が、もう一段増えることを意味します。実際に並べてみましょう。
・太陽星座だけ:12通り
・+月:144通り
・+アセンダント:1,728通り
・+水星:20,736通り
・+金星:248,832通り
・+火星:298万5,984通り
・+木星:約3,583万通り
・+土星:約4億3,000万通り
・+天王星:約51億6,000万通り
・10天体すべて:約619億通り(61,917,364,224)
「太陽×月」でも144通りで、よく耳にする「12星座」の12倍です。そして10個の天体すべてのサインを掛け合わせると、その数はおよそ619億通り。いま地球で暮らす約80億人の、7倍を超える数です。つまり天体のサインだけでも、生きている全人類に一人ずつ違う組み合わせを配って、なお大きく余る計算になります。きょうだいであっても生まれた日が違えば、10天体のサインの並びがそっくり同じになることはまずありません。
ハウス・アスペクトを入れると、天文学的に
ここにさらに、ハウスとアスペクトが加わります。
それぞれの天体は、12のサインだけでなく、12のハウス(人生の分野)のどこかにも位置します。同じ火星でも、仕事や社会的立場を映す10ハウスにあるのか、パートナーシップを映す7ハウスにあるのかで、エネルギーの向かう先は違うものとして読み解かれます。くわえて、10個の天体から選ばれる二つの組(ペア)は全部で45通りあり、その一つひとつに「アスペクト(天体どうしの角度)があるか、どの種類か」という違いが重なります。同じ太陽と土星の組み合わせでも、90度でせめぎ合う配置と60度で支え合う配置とでは、読み方が大きく変わってきます。アスペクトの有無を数えるだけでも、組み合わせは2の45乗。およそ35兆通りに達します。
もっとも、これは厳密な「ホロスコープの総数」ではありません。実際の空では、たとえば水星は太陽から大きく離れないなど、起こりえない配置もあるからです。水星や金星のように地球より内側を回る天体は、地球から見ると太陽の近くにしか位置できない性質があり、これが組み合わせに制限をかけています。大切なのは正確な総数そのものより、要素を一つ足すたびに数が文字どおり桁違いにふくらむ、という事実のほうです。似た配置を持つ人がどこかにいたとしても、育った環境や積み重ねてきた経験まで同じになるわけではありません。
こうして組み合わせが天文学的にふくらむからこそ、一人ひとりのホロスコープは、ほぼ唯一無二の設計図になります。占星術が「12タイプの分類」では語りきれないのは、このためです。あなたのチャートは、これまで生まれた誰のものともまず重ならない。その一点に、占星術が「その人だけ」を描く力の源があります。