二つの黄道とは
占星術は、太陽の通り道である黄道(こうどう)を12のサインに分けて読み解きます。ところが、その「ものさしの0度をどこに置くか」には、じつは二通りの流儀があります。
一つめがトロピカル(回帰)方式です。こちらは春分点(太陽が春分の日に位置する点)を0度、つまりおひつじ座の起点とします。季節の節目を基準にする考え方です。
二つめがサイデリアル(恒星)方式です。こちらは夜空に実際に光っている星々、すなわち恒星の位置を基準にして黄道を区切ります。
たとえるなら、トロピカルは「春になったらおひつじ座のスタート」と季節で線を引く時計、サイデリアルは「あの星のあたりがおひつじ座」と実際の星空で線を引く地図のようなもの。どちらも同じ黄道を測っているのに、出発点の取り方がちがうのです。西洋占星術は主にトロピカル、インド占星術は主にサイデリアルを使います。
なぜ星座がずれるのか
では、なぜ二つの基準が食いちがうのでしょうか。鍵をにぎるのが「歳差(precession)」という現象です。
地球の自転軸は、回るコマがゆっくり首を振るように、長い時間をかけて向きを変えていきます。一周するのにおよそ2万6千年。この首振りのせいで、春分点は星空のなかを少しずつ後退していきます。
すると、季節を基準にするトロピカルの0度と、実際の星を基準にするサイデリアルの0度が、年々じわじわと離れていきます。この二つの黄道のあいだに開いた差を「アヤナムシャ」と呼びます。アヤナムシャは今このとき止まっているわけではなく、年に約50秒ずつ、いまも広がりつづけています。
その差は、現在およそ24度に達しています。24度というと、サイン一つぶん(30度)にあと一歩というほどの大きさです。そのため、たとえば西洋のトロピカルでは「太陽はおひつじ座」と出る人でも、インドのサイデリアルで見ると一つ手前のうお座になる、といったずれが起こります。誕生日が同じでも、流派によって太陽のサインが変わってくるのは、このためです。
それぞれの考え方
こう聞くと「では、どちらが正しいの?」と気になるかもしれません。けれど、これは正解・不正解を競う話ではありません。「何を基準にして意味を読むか」という、立場のちがいです。
西洋占星術はトロピカルを選び、サインを季節と結びつけて意味を読みます。おひつじ座は春の芽吹き、かに座は夏のはじまり、というように、一年の巡りと象徴が重ねられているのです。たとえ星空の側で春分点が動いていっても、「春の始まり=おひつじ座」という季節の意味づけは動かしません。
いっぽうインド占星術はサイデリアルを選び、実際の恒星の位置をなにより重んじます。空に見える星のならびと座標を一致させておきたい、という発想です。
どちらも筋の通った考え方で、長い歴史のなかで体系として磨かれてきました。基準がちがえば出てくるサインもちがう。その前提さえ押さえておけば、両方の知恵を混乱なく楽しめます。インド占星術の成り立ちは、事典の歴史「インド占星術」のページでさらにくわしく紹介しています。なお、このサイトの「無料のホロスコープ作成」は西洋式(トロピカル)です。まずはご自身の星座を、そちらで気軽に確かめてみてください。