MBTIとは:ユングの類型論から生まれた4軸16タイプ
「あなたはINFP」「私はESTJ」。SNSや書店でこうした4文字のタイプ名を見かける機会が、ずいぶん増えました。これがMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)です。人の性格を16の型でとらえる、世界でもっとも広く使われている性格類型のひとつです。
このタイプ論の源流をたどると、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユング(1875〜1961)の著作『心理学的類型』(1921)にたどり着きます。ユングは、人の心が世界とかかわるときの構えに一定のパターンがあると考え、「外向と内向」という向きの違いや、「思考・感情・感覚・直観」という四つの心理機能を提唱しました。
このユングの考えを、母娘の研究者キャサリン・クック・ブリッグスとイザベル・ブリッグス・マイヤーズが受け継ぎ、誰もが使える形に整えていきます。そうして生まれたのが、次の4つの軸です。
- E(外向)/ I(内向):関心とエネルギーが外へ向かうか、内へ向かうか
- S(感覚)/ N(直観):具体的な事実を見るか、可能性やつながりを見るか
- T(思考)/ F(感情):論理で判断するか、価値や情で判断するか
- J(判断)/ P(知覚):計画的に締めくくるか、流れに開いておくか
この4軸の組み合わせから、16のタイプが導かれます。ただし大切な前提として、MBTIは本人が質問に答えていく自己申告式の質問紙です。生まれつき固定された刻印ではなく、「いまの自分がどう答えたか」を映すものだという点は、心にとめておきたいところです。
占星術のタイプ論:四元素・三区分・支配星
ここで視点を占星術に移してみましょう。じつは占星術もまた、人を「型」でとらえてきた長い歴史を持つ体系です。
もっとも基本になるのが、12星座を4つのグループに分ける
四元素です。火(牡羊座・獅子座・射手座)は情熱と直観、地(牡牛座・乙女座・山羊座)は現実と五感、風(双子座・天秤座・水瓶座)は知性と関係、水(蟹座・蠍座・魚座)は感情と共感。この4つの質が、星座の土台になっています。
もうひとつの軸が、12星座を3つに分ける
三区分です。活動宮(はじめる力)・固定宮(つづける力)・柔軟宮(変える力)という、ものごととのかかわり方の違いを示します。
さらに各星座には支配星と呼ばれる天体が割りあてられ、その星座の性質を方向づけます。たとえば牡羊座は火星、蟹座は月、というように。
このように、四元素・三区分・支配星という複数の物差しを掛け合わせることで、占星術は人の傾向を立体的にとらえようとします。MBTIが4つの軸を掛け合わせるのと、発想のうえで似たところがあるのです。
共通点:ユングという交差点
二つのタイプ論を並べると、思いがけない交差点が見えてきます。それがユングです。MBTIがユングの『心理学的類型』から生まれたことはすでに述べました。そして占星術の側でも、20世紀以降の
心理占星術はユングの思想を深く取り込んでいます。
この二つを結ぶ橋として、とりわけ注目したいのが「心理機能と四元素の対応」です。ユング自身が、心の四つの機能を四元素になぞらえて語っていました。占星術家スティーヴン・アロヨは著書『占星術・心理学・四つの元素』(1975)で、この対応を体系的に論じています。整理すると、おおよそ次のようになります。
- 思考(Thinking / T)と 風(Air):距離をとって論理的に物事を測る知性
- 感情(Feeling / F)と 水(Water):価値や関係性を感じとり、共感する心
- 直観(iNtuition / N)と 火(Fire):可能性やひらめきを未来へ広げる力
- 感覚(Sensing / S)と 地(Earth):現実と五感を通じて、いま手にあるものを確かめる態度
ここがこの記事の背骨になる部分です。MBTIのTやFといった機能と、占星術の四元素は、もともと同じユング的な源泉から枝分かれした「いとこどうし」のような関係にあります。だからこそ、両者を恣意的にではなく、筋の通った形で重ね合わせて読むことができるのです。
相違点:測り方も前提も違う二つの体系
とはいえ、二つを安易に同一視するのは禁物です。MBTIと占星術は、測り方も成り立ちも、はっきりと違います。
MBTIは、本人が質問に答えていく自己申告式の質問紙です。結果は16の型のいずれかにきっぱりと振り分けられます。手軽で共有しやすい一方、同じ人が時期をおいて受け直すと別のタイプに出ることもあり、再検査信頼性(同じ結果がどれだけ安定して再現されるか)には限界が指摘されてきました。型はあくまで自己理解の入り口であって、人を縛る分類ラベルではない、という姿勢が大切になります。
占星術はアプローチが異なります。出生の年月日・時刻・場所から、その瞬間の天体の配置を計算します。星座だけでなく、太陽・月・アセンダント、そして十の天体がどの星座・ハウスに入り、どんな角度で結びあうか。チャート全体が描く濃淡は、16通りどころではない無数のグラデーションを生みます。
そして両者に共通して言えるのは、どちらも未来を言い当てる決定論の道具ではない、ということです。MBTIも占星術も、自分を理解するための補助線として使うとき、いちばん力を発揮します。「あなたは○○型だからこうなる」と決めつけるためではなく、「自分にはこういう傾向がありそうだ」と眺めるために。とりわけ占星術では、太陽星座という一点だけで人を語ることはできません。この点は
太陽星座だけでは足りない理由でくわしく扱っています。
なお、E(外向)/ I(内向)の軸については、占星術にきれいに対応する一本の軸がありません。太陽やアセンダントの強調、天体の配置の偏りからその人の構えを読むことはできますが、星座のどれか一軸に還元することはできない、と正直にお伝えしておきます。J(判断)/ P(知覚)の軸は、三区分にゆるく重ねて語られることがあります。構造を好むJは活動宮や固定宮に、流れに開いておくPは柔軟宮に近い、という程度のやわらかな類比にとどめておくのがよいでしょう。
どう使い分けるか:16タイプ別の比較へ
ここまで見てきたように、MBTIと占星術は別々の体系でありながら、ユングという源流と「心理機能と四元素」という橋でつながっています。だからこそ、片方をもう一方に置きかえるのではなく、二本の補助線として併せて引いてみると、自己理解の解像度が上がります。
たとえば、自分のMBTIタイプの心理機能を手がかりに、響き合う四元素や星座を眺めてみる。あるいは自分のチャートの元素バランスを見て、なじみのあるMBTIの傾向と照らし合わせてみる。どちらから入っても、行き来するうちに「自分という人」の輪郭が少しずつ立体的になっていきます。占星術と心理学の関係そのものに関心がわいた方は、
ユングと心理占星術もあわせてどうぞ。
本事典では、16タイプそれぞれを星座や四元素の視点から読み解く個別記事を用意していく予定です。読むときの姿勢として、ひとつだけお願いがあります。それは「あなたの星座イコールこのタイプ」という1対1の決めつけとしてではなく、あくまで象徴的で類比的な響き合いとして受け取っていただくことです。MBTIと占星術の対応は、科学的に等価だと示すものではありません。けれど、二つのタイプ論を補助線として重ねるとき、そこには確かに、自分を見つめ直すための豊かな手がかりが立ちあらわれます。
自分のチャートから読みはじめたい方は、まず「
無料のホロスコープ作成」で、あなた自身の天体の配置をのぞいてみてください。MBTIの4文字とあわせて眺めると、いつもの自己診断が、ひとまわり深く感じられるはずです。