黄道を12に分ける
「星座占星術」というと、夜空に光る星のつながり。天文学でいう星座(constellation)を思いうかべるかもしれません。けれど占星術が使う「サイン(星座)」は、それとは別のものです。最初にここをはっきりさせておきましょう。
地球から見ると、太陽は一年かけて星空のなかを一周します。その太陽の通り道を、黄道(こうどう)と呼びます。
占星術では、この黄道をぐるりと一周ぶん、つまり360度を、きっかり12等分します。一つあたり30度ずつに区切ったもの。それがサインです。おひつじ座、おうし座……とつづく12のサインは、夜空の星のかたまりそのものではなく、黄道を均等に割った「30度の区画」を指しています。
たとえば「太陽がおひつじ座」というのは、生まれた瞬間に太陽が、黄道上のおひつじ座という30度の区画のなかにあった、という意味です。空に見える星座の形と一対一で重なっているわけではない、というのがポイントです。
なぜ「12」なのか
では、なぜ区切りの数が「12」なのでしょうか。これは古代バビロニアに由来します。黄道を十二の宮に分ける考え方(黄道十二宮)が整ったのは、紀元前5世紀頃とされています。
背景の一つが、月の満ち欠けです。新月から次の新月までを一巡りとすると、一年のあいだにそれがおよそ12回くり返されます。月のリズムで一年を区切ると、自然と「12」という数が浮かび上がってくるのです。
もう一つ、12という数そのものの扱いやすさもあります。12は、2でも3でも4でも6でも割り切れる、とても都合のよい数です。
この性質は占星術の構造ともきれいに噛み合います。サインは火・地・風・水という4つのエレメントに分けられ、同時に活動・不動・柔軟という3つのモダリティにも分けられます。4と3をかけると、ちょうど12。12という枠は、エレメント(4)×モダリティ(3)をすき間なく敷きつめられる、という意味でも理にかなった数なのです。
サインと実際の星座の「ずれ」
ここで、最初の「サインと星座は別もの」という話に戻ります。両者のあいだには、実際に無視できない「ずれ」が生まれています。
サインは、春分点(太陽が春分に位置する点)を起点として、そこから均等に30度ずつ区切ったものです。いっぽう夜空の実際の星座は、大きさも形もバラバラで、横幅の広い星座もあれば、こぢんまりした星座もあります。もともと均等ではありません。
さらに、歳差(precession)という現象があります。地球の自転軸はコマのようにゆっくり首を振っていて、その影響で春分点が星空のなかを少しずつ後退していきます。これを発見したのは、紀元前2世紀頃の天文学者ヒッパルコスとされています。
この歳差のために、同じ名前のサインと星座は、いまでは位置がずれてしまいました。たとえば春分点は、かつておうし座、次におひつじ座にあり、現在は実際の星空ではうお座のあたりまで移動しています。
ときどき「本当は13番目の星座があるのだから、星座占星術は間違いだ」という話を耳にします。けれど、これはサインと星座を取りちがえた議論です。占星術が使うのは、あくまで春分点を起点とする均等な12サインという座標であって、大きさのバラバラな実際の星座をそのまま使っているわけではありません。だからこそ、星座の数や境界がどうであっても、12という区切りはゆらがないのです。