アルフェッカはかんむり座のα星で、この星座でもっとも明るい星です。視等級は約2.23、A0V型の白い主星とG5V型の黄色い伴星からなる連星で、軌道面をほぼ真横から見る位置関係にあるため、互いに食を起こします。公転周期は約17.36日、明るさは約2.21から2.32のあいだでごくわずかに変化します。地球からの距離はおよそ75光年です。名はアラビア語で「途切れた星の環の明るい星」を意味する語に由来し、2016年7月に国際天文学連合の恒星名作業部会が Alphecca を固有名として承認しました。ラテン語で宝石を意味するゲンマ(Gemma)の名でも親しまれ、ウェルギリウス『農耕詩』がクノッソスの冠の星と歌った一節に由来するグノシア・ステラ・コロナエの名でも呼ばれてきました。ギリシア神話では、テセウスに置き去りにされたクレタの王女アリアドネにディオニュソスが贈った冠が、二人の婚礼を記念して天に上げられたものがかんむり座だと語られてきました。アルフェッカはその冠の中央を飾る一粒の石にあたります。
プトレマイオスは
『テトラビブロス』で恒星の性質を惑星になぞらえて記し、かんむり座の星々を金星と水星の性質を帯びるものとしました。この帰属を受け継いだヴィヴィアン・ロブソン『The Fixed Stars and Constellations in Astrology』(1923)は、アルフェッカを名誉や品位、詩や芸術の才と結びつく星として紹介しています。同書はあわせて、アルウィダス(Alvidas)が火星と水星の性質と見なしたことも書き添えており、伝統の内部でも見方が一つに定まっていないことがうかがえます。またアルフェッカは、アグリッパ『隠秘哲学三書』に記された十五の
ベヘニアン恒星のひとつにエルフェイア(Elpheia)の名で数えられ、トパーズやローズマリーと対応づけられた護符の伝統が伝えられてきました。なおこの護符の対応表では惑星を金星と火星としており、プトレマイオスの金星・水星とは系統が異なります。星座ごとに性質を割り当てる伝統と、護符の対応表をつくる伝統の違いによるもので、どちらか一方だけが正しいというものではありません。いずれも古典が語り継いできた象徴であり、吉凶や結果を断定するものではない点に留意して読まれます。
恒星を出生図で読むときは、伝統的に
合を中心に据え、1度から2度ほどの狭い
オーブに限って考えるのが通例です。太陽や月といった光度の高い天体、アセンダント・MCなどのアングルと狭く重なるかどうかを確かめます。アルフェッカのトロピカル黄経は2000年の基準で蠍座12度18分あたりとされ、
歳差により約72年で1度進むため、2050年には蠍座13度00分あたりへ移ると見積もられています。文献に載る度数は基準年によって少しずつ違うので、出生年に応じた位置で重なりを確かめてください。なお、かんむり座は黄道から北へ離れた北天の星座で、この星が実際の空で天体と並んで見えるわけではありません。黄経だけを取り出して重ねる読み方は、あくまで象徴をたどる手がかりです。
アルフェッカは、アルゴル・
スピカ・アルクトゥルス・ヴェガなどと並ぶ十五のベヘニアン恒星のひとつです。金星的な性質で語られてきた点ではスピカと近く、二つを並べて読むと、伝統が星の質をどのように惑星にたとえてきたかが見えてきます。天の四方を見張るとされる
ロイヤルスター(四王星)の枠組みとあわせて眺めれば、恒星が体系として語られてきたことがつかめます。用語の基礎は
恒星(フィクストスター)の項を、出生図で扱うときの前提は
コラム「恒星(フィクストスター)とは」をご覧ください。自分の太陽やアセンダントの度数は「
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