アルゴラブはからす座のδ星で、小さな四辺形をなすこの星座のなかで3番目に明るい星です。視等級はおよそ2.96、スペクトル型はA0系の白い星で、表面温度はおよそ10,400ケルビン、地球からの距離はおよそ87光年とされています。1823年にジェームズ・サウスとジョン・ハーシェルが9等級ほどの伴星を見いだし、離角がおよそ24秒角ある広い二重星として知られるようになりました。占星術の伝統では、烏の右の翼にあたる星とされてきました。名はアラビア語のアル・グラーブ(烏)に由来し、「烏の翼」を指す呼び名が縮まったものと伝えられます。中国の星座では軫宿の一星に数えられました。
ギリシア神話では、アポロンが烏に杯を持たせて泉へ水を汲みに行かせたところ、烏はイチジクが熟すのを待って寄り道し、遅れた言い訳に水蛇をつかんで戻ったと語られます。アポロンはその偽りを見抜き、烏(からす座)と杯(コップ座)と水蛇(うみへび座)を天に並べて置いたとされます。烏がアポロンの恋人コロニスの見張りを務め、その報告の末に銀色だった羽を黒く変えられたという別の伝承も残っています。
プトレマイオスは『テトラビブロス』で、からす座の星々を火星と土星の性質を帯びるものとして記しました。ロブソン『The Fixed Stars and Constellations in Astrology』(1923)は、この星座の影響として、狡猾さ、貪欲さ、創意、忍耐、復讐心、情熱、利己心、虚偽、攻撃性、物質への傾きといった語を並べています。強い言葉が続きますが、これらは20世紀初頭までの伝統的な記述を書き写したものであり、人物の性格を決めつけるためのものではありません。
アルゴラブはまた、アグリッパ『隠秘哲学三書』第2巻に記された15の
ベヘニアン恒星の一つで、中世ラテン名はアラ・コルウィ(烏の翼)です。支配する天体は土星と火星、対応する石はオニキス、植物はゴボウなどで、護符には烏や蛇などの像を刻むとされました。これは護符づくりの伝統に属する話で、効き目を保証するものではなく、
恒星に託されてきた象徴の系譜をたどる手がかりとして読まれます。
恒星は天体やアングルとの
合(コンジャンクション)を、1〜2度ほどの狭い
オーブで見るのが伝統的な作法です。アルゴラブの黄経はJ2000でトロピカルの天秤座13度27分、2050年でおよそ天秤座14度09分と示されており、2020年代の現在はおよそ天秤座13度台の後半に位置します。
歳差により黄道上の位置はおよそ72年で1度進むため、出生年に応じた度数で重なりを確かめてください。サイデリアル黄道ではおとめ座18度台から19度台(用いるアヤナムシャによって異なります)にあたるとされ、インド占星術では第13の
ナクシャトラであるハスタを構成する星の一つに数えられます。伝統的に厳しい語で語られてきた星ですが、配置が出来事や結果を決めるわけではなく、そのテーマとどう向き合うかを映す手がかりとして扱うのが穏当です。
アルゴラブは、
アルゴル、
スピカ、レグルス、アルデバランなどとともに15のベヘニアン恒星に名を連ねます。なかでもアルゴルとは、伝統のなかで厳しい意味づけを与えられてきた星として並べて語られることが多く、両者を比べると、恒星の意味がどのように受け継がれてきたかが見えやすくなります。黄経の近い星ではスピカがおよそ天秤座24度付近にあり、実際の星空でもおとめ座のスピカとからす座は隣り合って見えます。天の四方を見張るとされる
四王星(ロイヤルスター)の枠組みや、
恒星(フィクストスター)とはの実践編と合わせて眺めると、恒星が体系として語られてきた歴史を立体的に味わえます。