アルファルドはうみへび座のα星で、この星座でただひとつ目立って明るい星です。視等級は約2.0、スペクトル型K3のオレンジ色に見える巨星で、地球からおよそ177光年の距離にあります。うみへび座は全天88星座のなかで最大の1303平方度を占め、天球を100度以上にわたって横切る最も長い星座でもあり、2世紀のプトレマイオスが挙げた48星座の一つに数えられます。その広大な領域に明るい星がほとんど散らばっていないため、アルファルドはひときわ孤立して輝いて見えます。名はアラビア語のアル・ファルド(al-fard、孤独なもの・単独のもの)に由来し、近くに明るい星がないという見え方がそのまま呼び名になりました。アラビアではほかに「蛇の背骨」とも呼ばれ、ラテン語化されて「明るい孤独なもの」を意味するソヘイル・ソリタリウスと呼ばれた記録も残っています。16世紀のデンマークの天文学者ティコ・ブラーエは、この星を「うみへびの心臓」を意味するコル・ヒュドラエと名づけました。中国の星座では星宿の第一星、星宿一と呼ばれます。うみへび座に重ねられた神話は一つに定まりません。ヘラクレスが退治した、切っても頭が生え変わるレルネのヒュドラとする伝えのほか、アポロンの使いの烏が水を汲みに行った先から言い訳の証拠として持ち帰った水蛇だとする物語もあり、後者では烏(からす座)と杯(コップ座)とともに天に上げられたと語られます。
プトレマイオスは『テトラビブロス』の恒星の性質についての記述で、うみへび座の明るい星を土星と金星の性質を帯びるものとし、後世この記述がアルファルドを指すものとして受け継がれてきました。金星の示す感受性や美への傾きと、土星の示す抑制や孤独感が同居する質として、後世の恒星文献に受け継がれてきた組み合わせです。ヴィヴィアン・ロブソンは『The Fixed Stars and Constellations in Astrology』で、この星に知恵、音楽や芸術への感受性、人間の本性への洞察、強い情熱といった言葉を並べる一方、自制の欠如といった性質も併記され、水や毒による突然の最期といった、当時の文献に特有の踏み込んだ表現も残しています。20世紀初頭の恒星文献にはこうした強い言い回しがしばしば見られますが、現在ではそれを出来事の予告としてではなく、その星に長く重ねられてきた象徴の振れ幅を示すものとして読むのが一般的です。名の由来である孤独と、心臓と呼ばれた位置づけが重なることから、ひとり静かに深く感じ取る力というテーマで語られることの多い星だとされています。
恒星を出生図で読むときは、天体やアングルとの
合(コンジャンクション)を、
オーブ1〜2度ほどの狭さに限って見るのが伝統的な作法です。とくに太陽と月、そしてアセンダントやMCといったアングルに重なる場合が重視されます。アルファルドのトロピカル黄経は、2000年の時点で
しし座27度17分、2050年で27度59分とされ、
歳差によっておよそ72年に1度の割合で進んでいきます。古い文献に載る度数は書かれた時代の値ですから、読図では出生年に合わせて位置を確認してください。ご自身の天体やアングルの度数は
無料のホロスコープ作成で調べられます。重なりが見つかったとしても、それは象徴を読み解く手がかりであって、性格や結果を決めるものではありません。
アルファルドは、アグリッパ『隠秘哲学三書』が伝える15の
ベヘニアン恒星には含まれず、天の四方を見張るとされる
ロイヤルスター(四王星)にも入りません。とはいえ黄道上ではしし座の終わり近くにあり、歳差でおとめ座0度付近へ移った、しし座の心臓と呼ばれる
レグルスと近い度数帯で話題にのぼります。王の星の華やかさと、孤独な者と名づけられた星の静けさを並べて眺めると、恒星それぞれの個性がつかみやすくなります。恒星という考え方の基本は用語
恒星(フィクストスター)を、出生図での実際の扱い方はコラム
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