天文と神話
シリウスはおおいぬ座のα星で、犬の口元(プトレマイオスは犬の口に置きました)あたりに位置し、視等級およそ-1.46と全天で最も明るい恒星として知られます。スペクトル型はA0mA1 Vaの白色主系列星で、太陽系からの距離は約8.6光年とごく近い恒星のひとつです。実際にはA星と白色矮星の伴星シリウスBから成る連星系で、約50年周期で互いを巡ります。名はギリシア語のセイリオス(焼き焦がすもの、輝くもの)に由来するとされます。古代エジプトでは、その日の出前の出現(ヘリアカル・ライジング)がナイル川の氾濫と新年の到来を告げる目印とされ、女神ソプデト(ギリシア名ソティス)と結びつけられました。ギリシア神話では狩人オリオンの猟犬とされ、ドッグスター(犬の星)の通称で親しまれてきました。
占星術での意味
プトレマイオスは『テトラビブロス』でシリウスの性質を木星的かつ火星的と記しており、恒星占星術ではこの組み合わせが解釈の土台とされています。ヴィヴィアン・ロブソンは『The Fixed Stars and Constellations in Astrology』でシリウスを、名誉・名声・財・情熱・献身・忠実さ、そして時に憤りを伴う星と紹介し、守護者や管理者の役割と結びつけて伝えています。バーナデット・ブレイディは『Brady's Book of Fixed Stars』で、シリウスをあらゆる分野での大きな創造的才能を示す星としつつ、内に宿る力が御しがたいほど大きくなりうる点にも触れ、条件しだいで偉大な人物の図に現れるとしています。いずれも伝統的な象徴の伝承であり、吉凶を確定するものではないとされます。
チャートでの読み方
恒星占星術では、出生図の太陽・月・惑星やアセンダント・MCといったアングルと、シリウスの黄経が狭いオーブ(伝統的には1〜2度以内、とくに合)で重なるときに、その象徴が際立って働くと読まれます。シリウスの現在のトロピカル黄経はおおむねかに座14度付近(J2000基準)ですが、歳差により約72年で1度ずつ進むため、出生年や使用するソフトの基準によって度数がわずかにずれる点に注意が必要です。読み解く際は星座記号だけでなく実際の黄経で照合します。なお、こうした重なりは性質や傾向を象徴的に示すものとして語られるにとどまり、個人の運命や結果を断定するものではありません。
関連する星・用語
シリウスは中世以来とくに重視された恒星の系譜に連なり、アルデバラン・アンタレス・レグルス・フォーマルハウトの四王星(ロイヤルスター)や、占星術で霊的・実践的に用いられたとされるベヘニアン恒星とともに語られることが多い星です。犬の星シリウスは、夏の暑い時期を指す『犬の日々(ドッグデイズ)』の語源ともなりました。プトレマイオス由来の木星・火星という性質や、合・パラン・赤緯の平行(パラレル)といった用いられ方は、用語集の各項目で確認できます。恒星の位置の出し方や読み方の作法は、コラム「恒星を読む」もあわせてご覧ください。