天文と神話
アルゴルはペルセウス座のβ星で、英雄ペルセウスが手にした怪物メドゥーサの首を示す星とされ、ラテン名ゴルゴネア・プリマ(ゴルゴーンの第一の星)でも知られます。距離はおよそ90〜94光年、青白色のB8主系列星にK0準巨星などが連なる食連星で、視等級は通常約2.1ですが、約2.87日周期で互いに食を起こし約3.4まで減光します。この明滅は食変光星の典型例とされ「アルゴル型変光星」の名の由来になりました。名はアラビア語のラアス・アル=グール(食屍鬼グールの首)に発し、「悪魔の星」とも呼ばれてきました。古来その規則的な減光が不気味な印象を与えたと伝えられます。恒星は本来ほとんど姿を変えない「動かない星」と見なされてきましたが、アルゴルは肉眼でもわかるほど周期的に明るさを変える、当時としては珍しい存在でした。伴星が主星の手前を横切るたびに光がさえぎられて暗くなり、また元に戻るこの繰り返しが三日に満たない周期で起こるため、定まっているはずの星が瞬くように見え、不吉な名で呼ばれる背景になったと考えられます。
占星術での意味
恒星占星術ではアルゴルはプトレマイオス『テトラビブロス』で土星・木星の性質をもつとされてきました。ヴィヴィアン・ロブソンは『The Fixed Stars and Constellations in Astrology』で、これを激しさや困難に結びつく星として紹介し、伝統的に「最も凶星とされた」と伝えています。一方でバーナデット・ブレイディは『Brady’s Book of Fixed Stars』で、メドゥーサが象徴する抑圧された女性的な力や強い情熱の星と読み替え、強さゆえに悪と決めつけるべきではないと述べています。古来凶星と語られてきた一方、現代では激しいエネルギーをどう扱うかを問う星とされ、解釈は一つに定まりません。土星と木星の組み合わせは、伝統占星術では制限と拡大が同時に働く配置とされ、これが試練の多い星というイメージに結びついたと考えられます。ロブソンの見立てとブレイディの読み替えは対立するというより、同じ強さを危険と見るか資質と見るかという捉え方の違いといえます。
チャートでの読み方
恒星は出生図の天体やアングルと、伝統的に1〜2度ほどの狭いオーブ(とくに合)で重なるときに働くとされます。アルゴルは現在トロピカルのおうし座26度付近にあり、太陽・月・アセンダント・天頂などと近接する配置が注目されてきました。歳差により黄道上の位置は約72年で1度進むため、J2000で約26度10分、2050年で約26度52分と少しずつ移動します。鑑定では出生年に応じた位置で重なりを確認することが大切です。激しい性質が語られる星ですが、配置が運命を決めるわけではなく、自らの情熱や課題をどう生かすかを映す手がかりとして読むのがよいとされています。オーブが1〜2度と狭いのは、恒星が天体のように広がりを持つ光源ではなく、点としての位置情報しか持たないためです。とくにアセンダントや天頂との重なりを見る場合は出生時刻の精度が結果を左右するため、時刻の裏付けが乏しいチャートでは断定を避けるべきとされています。合になる天体の性質と重ね合わせて読むのが基本とされ、どの天体と重なるかによって現れ方が変わると考えられています。
関連する星・用語
アルゴルは中世以来の魔術的伝統で重んじられた15のベヘニアン恒星の一つに数えられ、占星術で長く特別視されてきました。同じく強い象徴をもつ恒星として、サソリの心臓アンタレスや、ペルセウス座の輝星ミルファクなどと比較されることがあります。また天球を四分する四王星(アルデバラン・レグルス・アンタレス・フォーマルハウト)と並べて、恒星全体の体系の中で位置づけると理解が深まります。アルゴル単体だけを取り上げて過度に恐れるより、こうした強い恒星をまとめて学ぶことで、恒星占星術の伝統の中での位置づけをつかみやすくなります。各星の意味や食連星・ベヘニアン恒星といった用語は当辞典の用語集を、恒星を出生図でどう扱うかはコラム「恒星を読む」を併せてご覧ください。