フォルス(5145 Pholus)は、1992年1月9日にキットピーク国立天文台のスペースウォッチ計画による観測で見つかった小天体です。
キロンに次ぐ2番目のケンタウルス族にあたり、発見者はデイヴィッド・ラビノウィッツと伝えられます。軌道は細長く、太陽にいちばん近づくときで約8.6天文単位、いちばん遠ざかるときで約31.9天文単位。
土星・天王星・
海王星の軌道を横切りながら、およそ91年かけて一周します。表面はきわめて赤く、有機物によるものと考えられていますが、キロンのような彗星としての活動は観測されていません。名の由来は、ギリシア神話のケンタウロス、フォロスです。洞窟を訪れたヘラクレスをもてなそうと、ケンタウロスたちの共有だった酒壺を、ためらいながらもヘラクレスに促されて開けたところ、香りに引かれた仲間が押し寄せて争いになりました。フォロス自身も、倒れた同族の体から抜いた毒矢を、これほど小さなものが大きな者を倒すのかと眺めていたときに取り落とし、足に受けて命を落としたと語られます。
占星術でフォルスは、
ケンタウルス族の一つとして、キロンやネッススと並べて読まれてきました。この領域を研究した
メラニー・ラインハートは、フォルスを「蓋が開く」というイメージで語り、小さな出来事が内にも外にも連鎖反応を呼び、いったん動き出すと止めにくい状況を示すとしています。酒壺がケンタウロス一族の共有物で、四世代のあいだ開けてはならないものだったという伝承(ディオドロスはディオニュソスが託した壺として伝えます)も重ねられ、先祖から受け継がれてきたもの、本人が知らないままの家系のプロセスが解き放たれるテーマとして説明されます。吉凶を決める指標ではなく、封じられていたものが表に出るときの流れをどう受け止めるかという視点です。発見が新しく解釈の蓄積も浅い領域なので、断定を避けて扱うのが穏当とされます。
出生図では、フォルスのあるサインとハウスから、受け継いだものが動き出しやすい領域を読みます。軌道が細長いぶん、サインごとの通過にかかる年数は均一ではなく、近い世代が同じあたりに集まることもあります。そのため個人の特徴として読むなら、太陽・月やアングルとの合、あるいは強い角度に限り、オーブは狭く取るのが一般的です。単独で意味を組み立てず、10天体という骨格に細部を添える補助として扱います。公転周期がおよそ91年ですから、出生位置へ一周して戻る回帰は、多くの人にとって一生のうちに訪れない計算になります。日々の運勢のように細かく追う対象ではなく、節目に照らして眺める天体だと考えておくとよいでしょう。ラインハートは、フォルスが刺激される時期には物事が手に負えなくなりやすいとして、必要な行動だけにとどめ、流れが落ち着くのを待つ姿勢を勧めています。トランジットで見るときも、出来事の原因を一つに決めつけず、ほかの配置とあわせて全体のなかで眺めてください。
フォルスは、キロン・
ネッススと組にして語られることが多く、三つを並べると役割の違いがつかみやすくなります。キロンは個人の傷と癒し、フォルスは受け継がれたものの解放、ネッススは連鎖の終結、という整理です。環を持つことで天文学的に注目された
カリクローも、同じ一群に属します。三天体の物語をまとめて追うならコラム「
キロン以降のケンタウルス族天体たち」、短い定義は用語集「
フォルス(ケンタウルス族)」が入り口になります。まずは「
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