神話と由来
セドナは、イヌイット神話に伝わる海の女神です。物語では、美しい娘セドナが鳥の精に欺かれて遠い島へ連れ去られ、助けに来た父とともに小舟で逃げ帰ろうとします。けれど嵐に襲われ、父は舟を守るためにセドナを海へ突き落とし、舟べりにすがる娘の指を切り落としました。海に沈んだ指の一つひとつは、アザラシやセイウチ、クジラなど海の生きものへと姿を変え、セドナは海底に暮らす生命の母、海獣を司る女神になったと語られます。天文学上のセドナ(小惑星番号90377)は、2003年にマイケル・ブラウンらが発見した太陽系外縁天体で、準惑星候補とされます。公転周期は約11400年と極端に長く、いちばん遠い海の底に住む女神の名がふさわしいと名づけられました。
占星術での意味
占星術では、セドナはおもに「深い喪失と、そこからの再生」を象徴する天体として読まれます。指を断たれ海へ沈められたという神話から、裏切りや見捨てられた痛み、声をあげられないまま抱え込んだ古い悲しみといった、心の奥深くにしまわれたテーマと結びつけられます。デメトラ・ジョージらに連なる小惑星占星術の流れでは、こうした極限の体験が、やがて多くの命を育む海の母へと姿を変えていく、つまり傷をくぐり抜けた先に生まれる、静かで粘り強い回復力やいたわりの力に光が当てられます。発見が新しく、外縁をめぐる遠い天体であることから、個人を超えた集合的な痛みとも重ねられます。吉凶を決めつけるものではなく、深く沈んだ感情と向き合うための視点として受け取るとよいでしょう。
チャートでの読み方
出生図では、セドナのあるサインやハウスが、その人が「言葉になりにくい深い痛みや喪失」と向き合うテーマのありかを示す、と読まれます。たとえば太陽や月、水星といった主要な天体と重なるとき、そのテーマに喪失と再生のニュアンスが添えられる、という具合です。ただしセドナは、太陽や月など10天体ほどの強い力では働きません。あくまで主要な配置という大きな骨格に、こまやかな陰影を描き足す存在として、補足的に読むのが穏当です。占星術で使われる記号には、イヌイット文字(ᓴᓐᓇ)に由来し跳ねるアザラシを思わせる図像(Unicodeの⯲)もありますが、まだ広く定着したものではありません。セドナを読むときは、断定を避け、深い感情をいたわるためのヒントとして、ほかの配置とあわせて全体のなかで眺めることが大切です。
関連する星・用語
セドナは、最初に占星術へ取り入れられた四大小惑星(ケレス・パラス・ジュノー・ベスタ)と同じく、10天体を細やかに補う存在です。なかでも喪失と養育というテーマでは、育てる女神ケレスと響き合う部分があります。同じく外縁の天体エリスや、傷と癒しを象徴するカイロンと並べて読まれることもあります。なお「リリス」は小惑星リリス(1181番)とは別で、占星術でよく使われるブラックムーン・リリスは月の軌道の遠地点を指す感受点です。混同しやすいので区別しておきましょう。セドナをはじめとする小惑星の読み方は、コラム「小惑星を読む」や用語集の各項目でも紹介しています。まずは「無料のホロスコープ作成」で土台の10天体のチャートを開き、そこに細やかな彩りとしてのセドナを重ねてみてください。