神話と由来
ブラックムーン・リリスは、星でも小惑星でもありません。月が地球を回る楕円軌道の、地球から最も遠ざかる点(遠地点=アポジー)の方向を指す、計算上の感受点です。楕円のもう一つの焦点にあたり、実在の天体ではないため、計算には「平均(ミーン)」と「真(トゥルー)」の二種類があります。平均では黄道を一周するのにおよそ8年10か月かかります。名の由来は神話のリリスで、源流は古代メソポタミアにさかのぼり、占星術がよく参照するのは中世ユダヤの伝承です。そこではアダムの「最初の妻」として、彼と同じ土から対等につくられながら従属を拒み、自由を求めて楽園を去った女性として語られます。この点が占星術に取り入れられたのは20世紀のことで、比較的歴史の新しいテーマです。
占星術での意味
占星術では、ブラックムーン・リリスは「抑え込まれてきた本能」「タブー視されてきた欲求」「誰の言いなりにもならない自立」、いわば飼いならされない野生の女性性のテーマを象徴します。デメトラ・ジョージは『ダークムーンの神秘』などで、リリスを抑圧から追放、そして本来の健やかな姿への変容へと進む元型的な物語として描きました。出生図でリリスのあるサインやハウスは、その人が無意識に押し殺しがちな、けれど本当は大切にしたい衝動のありかを示すと読まれます。人気の高まりとともに「危険」「ダーク」と大げさに語られることもありますが、本来のテーマは抑え込まれた自然な欲求や自分らしくある権利です。吉凶を断定するものではなく、これまで見ないようにしてきた自分の一部を迎え入れる視点と考えるとよいでしょう。
チャートでの読み方
出生図では、リリスのあるサインから「何を抑え込みがちか」「どんな欲求がタブー視されやすいか」を、ハウスからは「人生のどの場面でそれが立ち現れるか」を読みます。太陽・月・金星・火星など主要な天体や、アセンダント・MCといった感受点と重なるとき、そのテーマが前景化しやすいと解釈されます。ただしリリスは太陽や月など10天体ほどの強さでは働かないとされ、あくまで主要な配置を補足する細やかなニュアンスとして添えるのが一般的です。実在の天体ではないぶん解釈は天体ほど確立しておらず、占星術師によって読み方に幅がある点もふまえておきたいところです。記号は暗い(黒い)三日月を十字の上に重ねた形で表され、隠された月の側面を象徴的に伝えます。
関連する星・用語
重要なのは、占星術でいうリリスが小惑星リリス(1181番)とは別物だという点です。小惑星リリス1181は1927年に発見された実在の天体で、作曲家リリ・ブーランジェにちなんで命名されており、月の遠地点を指すブラックムーン・リリスとは由来も性質も異なります。さらに、かつて唱えられた幻の第二衛星「暗黒月リリス(ワルテマートの月)」とも区別されます。ジョージはこの三つを重ねて読み解く枠組みを示しました。育む力をあらわす4大小惑星(ケレス・パラス・ジュノー・ベスタ)や、傷と癒やしのキロンとあわせて学ぶと、女性性や内なる影の多面性が見えてきます。各点の要点は用語集「リリス」、全体像はコラム「リリス(ブラックムーン・リリス)とは」「小惑星を読む」で補えます。