プライマリーディレクション(主要方向法)は、地球の自転による天球の見かけの回転を、そのまま人生の時間に読み替える古典の予測技法です。定義としくみは
プライマリーディレクションとはにまとめてありますので、このページでは実際に使うときの手順と観点を扱います。原型は
プトレマイオスの
『テトラビブロス』第3巻から第4巻の記述にさかのぼり、以後の古典占星術では、人生の節目にあたる年を絞り込むための中心的な方法として受け継がれてきました。この技法が向き合うのは「どのテーマが、いつ期日を迎えるとされるのか」という問いです。二次進行やソーラーアークとの前提の違いは
進行法の比較で扱っていますので、ここでは実務の段取りに集中します。
読み解きは、動かす点と動かない点を決めるところから始まります。到達していく側を
プロミッサー、本人や事柄をあらわす固定点をシグニフィケーターと呼びます。シグニフィケーターには、アセンダント、MC、太陽、月といった人生の骨格にあたる点が選ばれるのが一般的です。次に、天球の回転をどれだけで1年と数えるか、つまりキーを決めます。もっとも素朴なものはプトレマイオス由来の赤経1度が1年という換算で、これをやや精密にしたものが、太陽のおおよその1日ぶんの平均運動を当てる
ナイボッドのおよそ59分08秒です。キーが定まれば、プロミッサーがシグニフィケーターに到達する順に年を並べられます。年の一覧が出たら、その二点がネイタルでどんな意味と状態を持っているかを先に読み、そのうえで年に色をつけていきます。到達は出来事を決めるものではなく、テーマが前に出やすい時期の目印として扱われます。同じ到達でも、シグニフィケーターが人生の骨格に近い点であるほど、節目として重く受け取られてきました。順方向に加えて逆向きに計算する
コンバースディレクションを添える流儀もありますが、まずは順方向を軸に据えると混乱しません。
自分のチャートで確かめる段取りは、おおむね次の順序になります。はじめに出生時刻の確からしさを確認します。記録された時刻がどこまで信頼できるかを、この技法では最初に見積もっておきます。次に、計算ソフトでキーと投影の方式を選びます。ここは自動任せにせず、何を選んだかを必ず控えておきます。三つめに、見る組み合わせを絞ります。最初からすべての天体を総当たりにすると一覧が膨らむので、シグニフィケーターをアセンダントとMC、太陽、月に限り、プロミッサーを土星や木星、火星などの意味の輪郭がはっきりした天体に絞ると読みやすくなります。四つめに、到達する年の一覧を書き出し、自分が日付を覚えている過去の節目と照らし合わせます。合っていた年と外れた年の両方を残しておくと、キーの選択が自分の記録に合っているかを検討できます。このとき、一覧に並んだ年をそのまま予定表のように扱わず、前後に幅を見ておくと、キーの違いによるずれを吸収できます。同じ年に複数の到達が重なる箇所は、あとで見返すために印をつけておくとよいでしょう。最後に、
トランジットや
ソーラーアークを重ねて裏取りをします。ネイタルは
無料のホロスコープ作成から出せます。
まず、キーの選び方で結果が変わります。赤経1度を1年とする換算と、ナイボッドのおよそ59分08秒とでは1年あたりの進みがわずかに違うため、何十年も先の到達年では差が年単位で開いていきます。どちらが正しいかを決める合意はなく、実践者は自分が使うキーを明示するのが作法とされています。次に、点を天球のどこで測るかという方式の違いがあります。黄道上で測るゾディアカル方式と、天球の回転そのものの枠組みで測るムンダン方式が区別され、投影の取り方は、プラチドゥス『Primum Mobile』のような近世の文献以来、流儀が分かれてきた領域です。そしてもっとも注意が要るのが出生時刻です。アングルはおよそ4分で1度動くため、4分の誤差がおよそ1年のずれになります。時刻が不確かなときは、先に
レクティフィケーションの検討が要ります。これらの違いは、どれかが誤りだという話ではなく、天球のどこを物差しにするかという前提の違いです。計算は煩雑ですので、手計算での再現は勧めません。用語の全体像は
ディレクションもあわせてどうぞ。
プライマリーディレクションは、手軽に眺める技法ではありません。それでも、自分の過去の節目を年表にして到達年と並べてみる作業には、独特の手ごたえがあります。合った年と合わなかった年を書き留めていくと、どのキーが自分の記録になじむのか、どの天体の到達が印象に残りやすいのかが見えてきます。これから先の年については、断定の材料ではなく、心づもりを整えるための目安として置いておくのが穏当です。一度に全部を追おうとせず、数年に一度、一覧を作り直すくらいの間合いのほうが続けやすいはずです。古典の時間観に触れてみたい方は、まずアセンダントとMCへの到達だけを一覧にして、他の技法と重ねるところから始めてみてください。