セレナ(白月)は、黒月リリスと対をなすとされる仮想の感受点で、おもに一部の流派(ロシア系の占星術など)で用いられます。黒月リリスが影や本能、満たされない欲求の側面と結びつけられるのに対し、セレナは守護・恩寵・善意といった、明るく清らかなテーマと結びつけて読まれます。チャートのなかで、人を守り、助けようとする力をあらわす点とされます。
セレナという名は、ギリシャ神話の月の女神セレネに由来するとされ、「白い月」とも呼ばれます。この感受点を広めたのは、ロシアのアヴェスター系占星術の流れをくむパーヴェル・グローバとされ、1980年代に紹介されたといわれます。発想の核にあるのは、ひとつのものごとを明と暗、光と影の一対で眺めるという見方です。黒月リリスを心の闇や試練の側とするなら、セレナはその対極にある、人を支え導く善き力の側、というわけです。ただしセレナの置き方は、黒月リリス(月の軌道の遠地点)の正反対の点(近地点の側)に取る方法や、仮想の「第二の月」として算出する方法など、流派や計算法によってまちまちで、互いに位置が一致しないことも知られています。そのため、広く共有された感受点とはいえず、扱いには幅があります。
セレナは、望遠鏡で確かめられた天体ではありません。計算上の位置を使う、仮説の感受点です。対になる
リリス(ブラックムーン)も実在の天体ではなく、月の軌道の
遠地点の方向を指す計算上のポイントですが、こちらは近年人気の高い感受点です。その反対側の端にあたるのが
近地点で、セレナの置き方のひとつは、この近地点の側に取るものです。
使うときに最初に決めたいのは、「どの計算法のセレナなのか」です。計算法が違えば、同じ出生データでも、サインもハウスも違って見えることがあります。占星術ソフトに表示された位置をそのまま信じるのではなく、どの流派の置き方なのかを確かめてから眺めます。位置が定まらない点を、実在の惑星のように断定して読むことはできない、という前提に立つのが安全です。
セレナは、チャートの持ち主を内側から支える守護や、無私の善意、まわりへ差し出す恩恵といったテーマを示すとされ、黒月リリスと並べて、光と影の両面から人柄を眺める手がかりとして読まれます。たとえば黒月リリスのあるハウスで「どんな場面で抑え込みがちか」を見て、セレナのあるハウスで「そのとき支えになる力は何か」を考える、という使い方です。どちらか片方だけを見るのではなく、二つの対比がその人のなかでどう響くかを言葉にしてみるのが、読みの出発点になります。サインやハウスの読み方は、ほかの感受点と同じ手順で行います。
もっとも、これはあくまで一部の流派による象徴的な読みであり、定まった用法がある点ではないため、本事典では参考として紹介します。明暗を一対で見ようとする発想自体は、占星術の二元的な象徴の伝統に通じるものです。リリスの背景は
コラム「リリス(ブラックムーン・リリス)とは」に詳しくあります。用語「リリス(ブラックムーン)」「遠地点(アポジー)」もあわせてどうぞ。