出生前の日食・月食(プレネイタル・エクリプス)は、あなたが生まれる直前に起きた、もっとも近い食のことです。その食が空のどの度数で起きたかを、人生にそっと影を落とす(あるいは光を当てる)隠れた感受点として読む考え方があります。古典占星術では、生まれる前の空のリズムを、チャートに刻まれた目に見えない起点のひとつと見なし、出生前の新月・満月とあわせて重んじてきました。
出生前の食を求めるには、誕生の瞬間から時間をさかのぼり、その直前に起きた日食または月食をさがします。食は、新月・満月(シジジー)がとくに強まったときに起こる現象です。月の通り道(白道)と太陽の通り道(黄道)が交わる点の近くで新月・満月が重なると、太陽や月が欠ける食になります。そのため出生前の食は、出生前シジジー(生まれる直前の新月・満月)と地続きのものとして理解すると、すっきり読めます。古来、占星術家は、この食の度数をチャートに書き入れ、その人が抱えて生まれてきた、隠れたテーマの在りかを示す点として見つめてきました。
出生前の食と出生前シジジーは、似ていても同じ点とは限りません。新月・満月は毎月めぐってきますが、食になるのはそのうちノードの近くで起きたものだけで、食はおよそ半年ごとのまとまりで起こります。そのため、誕生の直前に新月や満月があっても、それが食だったとは限らず、食までさかのぼると、月をまたぐことも少なくありません。
日食・月食の項目と、
シジジーの項目を並べて読むと、二つの違いがつかみやすくなります。たとえば誕生の数日前に満月があっても、それがノードから離れた満月なら、出生前シジジーはその満月、出生前の食は数か月前にさかのぼった別の食、というように二つの点が分かれます。
食の位置は、日食と月食の年表や天文暦(エフェメリス)で、誕生日より前でもっとも近い食を見つけ、その日時とサイン、度数を控えます。次に、その度数を出生図に書き入れ、太陽や月、アセンダント、MCといった大切な点との距離を見ます。
食のコラムでは、食の度数が出生図の重要な点におおむね5度以内で重なるとき、とくに強く響くと説明しています。出生前の食でも、考え方は同じです。アセンダントやMCは出生時刻によって度数が変わるため、時刻が不確かなときは、太陽や月との関係から先に見るのが無理のない進め方です。
もうひとつ気をつけたいのは、食を不吉な印と決めつけないことです。同じコラムが述べるように、食は不幸を予告するものではなく、変化の波が大きくなる節目を示す目安にすぎません。出生前の食も、その人の弱点を告げるというより、生まれる前の空に刻まれた起点として、落ち着いて眺めるのが向いています。
出生前の食の度数は、ふだんは静かに眠っていますが、運行の天体がその度数に重なる時期は、人生の節目になりやすいといわれることがあります。とりわけ、のちの食や新月・満月がここに触れる年は、何かが動きだす合図として注目されてきました。ただし、これはあくまで象徴的な読みであり、特定の出来事を断定するものではありません。出生前シジジーとあわせ、生まれる前の空の物語として、慎重に意味を組み立てていくのがよいでしょう。