ナヴァムシャは、ひとつの星座をさらに9等分してつくる、インド占星術の代表的な分割図(D9)です。サンスクリットで「ナヴァ」は9を意味します。出生図(ラーシ)が人生全体の骨組みだとすれば、ナヴァムシャはその奥にある、結婚やパートナー、そして人の内面の強さ・本質を映し出す副チャートとされ、数ある分割図のなかでもっとも重視されます。
名前の「D9」は、「9つに割った図」という意味の呼び名です。割る数がちがえば、別の副チャートになります。出生図という一枚の地図に対して、ナヴァムシャは「ここを拡大して見るためのルーペ」にあたり、同じ天体があらためて、別の物差しで測り直されます。
インド占星術には、星座を細かく割って一段深く読む「ヴァルガ(分割図)」という考え方があり、ナヴァムシャはその代表格です。ひとつの星座(30度)を9等分するので、ひと区分は3度20分。12星座すべてで合わせて108の区分ができ、各天体がどの区分に入るかで、新しい星座割り当て(ナヴァムシャ・チャート)をつくります。出生図と同じ天体を、別の「物差し」で測り直すイメージです。
ヴァルガの項目にあるとおり、割る数が大きいほど、より具体的で奥まったテーマを扱う傾向があります。ナヴァムシャは結婚や人の本質を担う分割図で、出生図だけでは見えにくい細部を確かめるための、専用のレンズと位置づけられます。また、分割の元になる出生図はジョーティシュ式(星々の実際の位置を基準にする方式)で組み立てるため、西洋式のチャートの度数をそのまま割るとずれが出ます(
ラーシのアヤナムシャの項目を参照)。
インド占星術では、出生図とナヴァムシャを基本的にセットで読みます。出生図で強く見えた天体が、ナヴァムシャでも良い配置を保っているかを確かめ、両方で力を持つ天体は「本物の強さ」を備えているとされます。逆に、出生図では目立っても分割図で弱まる天体は、見かけほど力を発揮しないと考えます。とくに結婚やパートナーシップを見るうえで重視されるチャートでもあります。
たとえば出生図で金星が目立つ配置にあっても、ナヴァムシャで弱まっていれば、パートナーシップのテーマは見かけほど力強くは働かない、と読みます。反対に、出生図では控えめでも、ナヴァムシャで安定した配置にあれば、内側に確かな力を持つ天体として受け取られます。いずれも、出生図の読みを裏づけたり、割り引いたりするための補助の目です。
実際には、まず出生図(ラーシ)で、気になる天体の強さを確かめます。次に、ナヴァムシャで同じ天体がどのサインにあるかを見て、両方の図の様子を比べます。出生図のハウスは上昇点にあたる
ラグナから組み立てるため、出生時刻の正確さが前提になります。ひと区分が3度20分と細かいぶん、出生時刻のわずかな違いで、天体やラグナの入る区分が変わりうる点にも注意します。
古典では、十六の分割図をまとめて用いる方法もあり、複数の分割図にわたって良い配置を保つ天体は、見かけだけでなく本当に力のある天体とみなされます。ナヴァムシャはそのなかでも別格に重んじられる、入り口の一枚です。分割図は出生図の代わりではなく、出生図を支える補助の図です。まず出生図で骨組みを押さえてから見るほうが、ナヴァムシャの意味が立体的に見えてきます。インド占星術の全体像は、
ジョーティシュ入門のコラムで見渡せます。