天底(ナディア)とは
天底(ナディア)は、観測者のちょうど真下、足元の方向にあたる空(天球)の一点で、頭の真上にある天頂(ゼニス)の正反対に位置します。地球の裏側へと突き抜けた方向を指すため、実際には見ることのできない、想像上の一点です。「ナディア」はアラビア語で「(天頂の)反対」を意味する語に由来し、その名のとおり、上を向く軸の最も下にあたる点を表しています。天球とは、空を巨大な球の内側として描く考え方で、星や太陽はその球面に貼りついているかのように見えます。観測者を中心としたとき、その球の真上が天頂、真下が天底にあたり、両者をつなぐ縦の軸が、その土地における重力の向き(鉛直方向)とぴったり一致します。立っている場所が変われば足元の方向も変わるため、天底は観測者ごとに決まる、いわば「自分専用の真下」だといえます。
天頂と対をなす、見えない点
天底(ナディア)と天頂(ゼニス)は、観測者を中心にして上下にまっすぐ伸ばした、一対の点です。頭上の天頂と足下の天底を結ぶ線が、その場所での「垂直方向」をあらわします。注意したいのは、占星術のIC(イムムコエリ)が「天底」と訳されることがある点です。けれども天文学的なナディアとICは、厳密には別の点とされます。ICは黄道(太陽の通り道)と子午線が交わる点で、ちょうどMC(南中点)の反対にあたります。一方ナディアは、観測者の真下という、見る人の足元を基準にした方向の点です。訳語が重なるため混同されやすい、と覚えておくとよいでしょう。
天文と占星術のあいだで
ナディアは、もともと天文学・測地学で用いられてきた言葉で、天頂と対にして空の上下を示す基準点です。占星術では、ホロスコープの底にあたるIC(心の土台・家庭・ルーツの軸)の訳語として「天底」が使われることが多く、両者はしばしば同じ意味のように語られます。ただし出自をたどると、見る人の真下を指すナディアと、黄道上で定義されるICとは、別々のしくみで決まる点です。読み解きの場面では、占星術で「天底」と呼ばれるのは多くの場合ICのことだと押さえつつ、天文学的なナディアとは区別しておくと、用語の混乱を避けられます。チャートの図では、ICはいちばん下、円の底に置かれることが多く、家庭・住まい・心のよりどころ・自分のルーツといったテーマを読む手がかりとされます。これは円の頂点にあたるMC(社会的な到達点や外向きの目標の軸)と一対になっており、人生の「内」と「外」を示す縦の軸を形づくっています。語源としての真下=ナディアと、ホロスコープ上の底=ICが、訳語の上で重なっている、と整理しておくと理解がぶれにくくなります。用語「IC」「天頂」もあわせてどうぞ。自分のチャートは「無料のホロスコープ作成」から確かめられます。