モアティ(モイエティ)は、古典占星術で、各天体が持つオーブ(アスペクトが効くとされる許容幅)の「半分」を指す言葉です。古典では、オーブは天体ごとに決まっており、たとえば太陽は広く、水星は狭い、というように分かれていました。その半分の値がモアティで、二つの天体がアスペクトを結ぶかどうかは、それぞれのモアティを足し合わせた範囲で判定したとされます。
言葉の感じをつかむには、「オーブは天体の持ち物で、モアティはその半径」と覚えるとわかりやすくなります。現代の
オーブがアスペクトの種類ごとに一つの幅を決めるのに対し、古典ではまず天体のほうに幅があり、そこから成立の範囲が組み立てられました。
モアティの背景には、天体それぞれが光の輪(光線)をまとっている、という古典の考え方があります。輪の大きさが天体の格によって違い、その輪の半径にあたるのがモアティ、というわけです。二つの天体の輪が触れ合えば、つまり両者のモアティを足した角距離の内側に入れば、アスペクトが成立すると読まれました。たとえば太陽のモアティと月のモアティを合わせた幅の中に角度が収まっていれば、両者は結びつくとされます。天体ごとに輪の大きさが異なるため、組み合わせによって許容される幅も変わってくる。ここが、アスペクトの種類ごとに一律の幅をあてる現代の方式と大きく違うところです。
判定の手順を言葉でたどると、次のようになります。まず二つの天体それぞれのオーブを半分にして、モアティを出します。次に、その二つを足したものを、その組み合わせの許容幅とします。最後に、二天体の角距離がこの幅の内側に収まっていれば、アスペクトが成立していると読みます。太陽がからむ組み合わせは輪が大きいぶん自然に幅が広くなり、水星と金星のように輪の小さい天体どうしなら幅は狭くなります。
モアティは、現代でよく使われる「アスペクトごとに一律のオーブ」とは異なる、古典ならではのオーブの考え方です。土台にあるのは、天体の格や明るさに応じて影響の及ぶ範囲が変わる、という発想で、天体ごとの個性を重んじる古典の姿勢がよくあらわれています。あくまで角度の成立を見るための約束ごとであり、出来事そのものを断定するものではありません。流派や時代によって採用する数値には幅がありました。
この方式では、合であるか、トラインであるかといったアスペクトの種類によって幅を変えません。変わるのは組み合わせる天体のほうです。ヘレニズム期の占星術では、そもそも度数の幅を測るより前に、サインどうしの関係で「見る・見ない」を決めていたため、オーブという発想自体が前面には出ませんでした。モアティは、それとは別に、度数の幅を天体ごとに測る見方です。
多くの現代的なソフトでは、アスペクトごとに幅を決めた方式が初期設定になっています。そのため、古典の文献にある「アスペクトが成立する」という記述を、ソフトの表示とそのまま照らすと、食い違うことがあります。たとえば同じ角度でも、古典の方式では成立し、現代の設定では幅の外になる、あるいはその反対になる、ということもありえます。
古典の資料を読むときは、いま見ているのがモアティを使った判定なのか、サインどうしの関係なのか、現代的な幅の設定なのかを、最初に確かめておくと混乱が減ります。流派ごとの違いは、
オーブを流派別に比べたコラムに整理されています。基本の考え方は
オーブのコラムからも確かめられます。