天球(てんきゅう)は、地球を中心に、すべての天体が貼りついているかのように見立てた、巨大な見かけの球のことです。実際には天体までの距離はさまざまですが、空を見上げると、星は同じ一枚のドームに並んでいるように見えます。占星術や天文学は、この天球の上に黄道・天の赤道・地平線などの基準線を引き、天体の位置を地図のように表します。距離を脇に置いて「方向」だけで星をとらえる、便利な考え方です。
天文学と占星術は同じ空を見上げ、同じ天体位置のデータを共有していて、ちがうのはそのデータに向ける問いのほうです。その関係は、コラム
占星術と天文学はどう違う?でたどれます。
天球には、位置を測るためのいくつかの基準線が引かれます。代表が「黄道」で、これは天球上を太陽が一年かけて進んでいく道すじです。占星術の十二星座は、この黄道を十二等分したものです。もうひとつが「天の赤道」で、地球の赤道をそのまま空へ広げた線にあたります。さらに、その土地から見た「地平線」や、真上の点「天頂」も基準になります。これらの線が交わる点(春分点など)が、座標の出発点として使われます。
基準線の役割は、地図の経度と緯度にたとえるとつかみやすくなります。天の赤道を土台にすると、円に沿った位置をあらわす赤経と、赤道から南北にどれだけ離れているかをあらわす赤緯で、天体の場所が決まります。くわしいしくみは
天の赤道で扱っています。いっぽう、ふだんのホロスコープで読むサインと度数は、黄道に沿って測る座標で、
黄経がその基本です。
天球には、観測者のちょうど真上にあたる天頂という点もあります。地平線からの高さが90度になる点で、立っている場所によって向きが変わります。ホロスコープの「MC」を天頂と訳すことがありますが、MCは黄道と子午線が交わる点で、頭の真上の点とは別ものです。この取り違えは、天球という球を思い浮かべながら読むと起こりにくくなります。MCは「その瞬間に頭上にある星座」ではなく、南中している黄道上の度数を指す言葉です。くわしくは
天頂(ゼニス)で扱っています。
ホロスコープは、この天球を、ある瞬間・ある場所から見た「切り取り図」だといえます。地球の自転によって、天球は一日かけてぐるりと回って見えます。その回転のなかで、どの星座が東の地平線から昇っていたか(アセンダント)などが決まり、チャートの形が定まるのです。天球という考え方があるからこそ、距離の違う天体を、ひとつの円い図の上に並べて読むことができます。
円形のチャートを見るときは、中心に自分が立ち、まわりを天球がぐるりと取り巻いている様子を思い浮かべてみます。外周に並ぶサインは黄道という帯を区切ったもので、そこに天体が書き込まれ、内側にはその日時と場所で向きが決まるハウスが重なります。サインは春分点を起点に黄道を区切った帯で、天球といっしょに一日でひと回りします。いっぽうハウスは、地平線と子午線を基準に、日時と場所によって向きが決まる区分です。この違いも、球の考え方から自然に出てきます。用語「黄道」「ホロスコープ」もあわせてどうぞ。