モリヌスは、17世紀フランスの数学者・占星術家ジャン=バティスト・モラン(1583〜1656、ラテン名モリヌス)にちなむハウスシステムです。天の赤道を均等に12等分し、それを黄道へ投影してハウスをつくります。地平線を基準にしない独特の方式で、アセンダント(東の地平線から昇る点)が第1ハウスの始まりと一致しないことがあるのが、大きな特徴です。
つまり「ハウスの出発点は、いつもアセンダントにある」という前提を外した方式です。ほかの方式に慣れていると、アセンダントの度数と第1ハウスの境目がずれて表示されることに戸惑うかもしれませんが、それはこの方式の設計どおりの姿です。
多くのハウスシステムは、東の地平線(アセンダント)や南中点(MC)といった、その土地から見た空の基準点をもとにハウスを区切ります。これに対しモリヌスは、まず天の赤道をきれいに12等分し、それを黄道の上へ投影してハウスの境目を決めます。この手順のため、アセンダント=第1ハウスのカスプ、という多くの方式に共通する常識が、モリヌスでは当てはまりません。数学的にすっきりした分割を重んじた、理論派のハウスシステムといえます。
土台になる
天の赤道は、地球の赤道をそのまま空へ延ばして描いた円で、黄道とならぶもう一つの基準線です。モリヌスは、この赤道の円を等分することから始めます。一方、
ハウスシステムの一般的な分類では、アセンダントから均等に区切る「イコール」のように空間を等分する方式と、天体が空をのぼる時間をもとに区切る方式とに大きく分かれます。モリヌスはこのどちらとも出発点が違い、地平線ではなく赤道の円から区切りを決めます。
考案者のジャン=バティスト・モランは、当時の宮廷にも仕えた数学者であり、大著『アストロロギア・ガリカ』を著して、占星術を体系的に整理しようとした近世の大家として知られます。モリヌス・ハウスは、現在広く使われているわけではありませんが、ハウスの区切り方が一つではないことを教えてくれる、興味深い選択肢のひとつです。
モランの人物像や著作の背景は、辞典内の
ジャン=バティスト・モランの項目と
アストロロギア・ガリカの項目にまとまっています。当時の科学的・哲学的な知見と照らし合わせて、占星術の根拠を組み直そうとした理論家だった、という点が参考になります。
モリヌスを実際のチャートで確かめるには、ハウスの方式を選べる占星術ソフトで、同じ出生データを別の方式と並べて表示してみるのが近道です。ハウスの区切りが変われば、同じ天体が隣のハウスに入ったり、カスプにかかるサインが変わったりします(
ハウスシステムとは)。
本事典の無料計算ツールで出る図は、広く使われるプラシダス方式です。そのため、モリヌスのハウスを見たいときは、プラシダスの図を基準に置いて、どのハウスが動いたかを一つずつ確かめるのが読み比べの基本になります。モリヌスの図を見るときは、アセンダントの度数と第1ハウスのカスプの度数が、別の点として表示されることを前提に読みます。ふだん「アセンダントは第1ハウスの入口」と考えて読んでいる人ほど、二つを分けて確認する習慣が役立ちます。ハウスの区切り方が変わっても、天体のサインや天体どうしのアスペクトは変わりません。