シニスター(左)アスペクトは、サインの並び順に沿う向き、つまり黄道を後から昇ってくる先の度数へ向けて投げるアスペクトを指す、古典占星術の用語です。たとえば天秤座にある天体から、その先の山羊座へ向かう矩(スクエア)がこれにあたります。デクスター(右)と対になる呼び名で、ラテン語で「sinister」は「左」を意味します。英語の不吉なニュアンスとは関係なく、向きを示すだけの中立的な言葉です。
シニスターとデクスターは、同じ角度のアスペクトを「どちらの向きに投げているか」で区別する古典の考え方です。シニスターは、おひつじ座から始まるサインの並び順に沿って、先の度数へと向かう向きを指します。ちょうど、先に空へ昇った天体が、これから昇ってくる後続の天体に手を伸ばすようなイメージです。古典では、同じ角度でも向きによって働きの強さに差があると考えられ、サインの順に逆らうデクスター(右)のほうがより強く働くとされ、シニスターはそれに次ぐ、と読まれてきました。向きという視点を一つ加えることで、アスペクトの読みに奥行きが生まれます。
向きは、二つの天体のうち「どちらを出発点に見るか」で入れ替わります。天秤座の天体から山羊座の天体へ矩を投げるのがシニスターなら、同じ二つの天体を山羊座の側から見たとき、天秤座へ向かう矩はデクスターになります。ひとつのアスペクトのなかに、左向きと右向きの二つの見方が同居しているわけです。古典の文献を読むときも、「どの天体が主語なのか」を押さえておくと、向きの記述が追いやすくなります。
ほかの角度でも同じ考え方です。おひつじ座の天体から、サインの並び順に沿ってかに座へ向かう矩はシニスター、同じおひつじ座から並び順に沿ってしし座へ向かう三分(トライン)もシニスターです。逆に、しし座の側からおひつじ座へ向かえばデクスターになります。各角度の性質は
スクエアや
トラインの記事にあります。
シニスターアスペクトは、ヘレニズム期からの古典占星術で用いられてきた、アスペクトの「向き」をめぐる考え方の一翼です。現代の占星術では向きを区別しないことも多いのですが、古典のやり方を学ぶうえでは、デクスターと一対にして覚えておきたい概念です。二つを並べると、同じ角度でも力の入り方に濃淡があるとされた古典の発想がよく見えてきます。もっとも、これは伝統的な区別であり、出来事を断定するものではありません。
自分のチャートで試すなら、まずアスペクトを結ぶ二つの天体のサインを確かめて、片方を主語に決めます。そのうえで、おひつじ座から数えた並び順で、先にあるのはどちらかを見ます。チャート図から読み取れるのは角度で、向きはサインの並びから自分で割り出す作業になります。
向きの区別を使う古典の解説に出会ったときも、どちらの天体を主語にした話なのかを意識しておくと、読み違いを減らせます。向きの対になる考え方は
デクスターアスペクトで、角度の種類をひととおり押さえるには
メジャーアスペクトが参考になります。