デクスター(右)アスペクトは、ある天体から見て、サインの並び順に逆らう向き。黄道を先に昇った(手前の)度数へ向けて投げるアスペクトを指す、古典占星術の用語です。たとえば天秤座の天体から蟹座へ向かう90度(スクエア)が、これにあたります。古代の占星術家プトレマイオスらは、デクスターのアスペクトのほうが、サインの順に沿う「シニスター(左)」より力が強い、と考えました。
「右(デクスター)」「左(シニスター)」は、アスペクトを投げる向きを区別するための古典の考え方です。天は東から西へと回り、星座は牡羊座から順に昇っていきます。この流れに逆らって、先に昇った星座の側へ向かう光を「右(デクスター)」、流れに沿って後から昇る星座の側へ向かう光を「左(シニスター)」と呼びました。ちょうど、空を見上げた人の右手・左手の方向になぞらえた呼び名です。古典では、この向きの違いが、アスペクトの強さや働き方に関わると考えられました。
向きを見分けるには、投げる側の天体を先に決め、その天体のサインから、サインの並び順を見ます。牡羊座から始まる並びに逆らって手前のサインへ向かうならデクスター、並びに沿って先のサインへ向かうならシニスターです。たとえば天秤座の天体から見て、手前の蟹座へ向かうスクエアはデクスター、先の山羊座へ向かうスクエアはシニスターになります。
向きを意識する目的は、アスペクトの有無だけでなく、どちらの天体がどちらへ働きかけているかを見分けることにあります。同じスクエアでも、デクスターとシニスターとでは、古典では力の入り方に濃淡があると考えられました。デクスターのほうが強く、シニスターはそれに次ぐとされます。
現代の占星術では向きを区別しないことが多く、ふだんのチャートでは話題になりにくい見方です。古典の文献を読む場合や、古典の技法を学ぶ場合に、自分で確かめる補助の見方として使います。対になる呼び名は
シニスターアスペクトの項目で確かめられます。
古典占星術では、アスペクトがまずサインどうしの関係として捉えられていました。向きもサインの並びで数えるのは、そのためです。この前提は、コラム
マイナーアスペクトの流派ごとの扱いでくわしくたどれます。ふだん使う90度や120度といった角度の数え方そのものは、
アスペクトと変わりません。そこへ、どちら向きに投げているかという見方を一枚かぶせるだけで、同じ角度が二通りに分かれて見えます。二つの天体の片方から見ればデクスター、もう片方から見ればシニスターになる、という関係も頭に置いておくと、混乱しません。
デクスターとシニスターの区別は、現代の占星術ではあまり使われなくなりましたが、古典占星術の文献を読み解くうえでは欠かせない鍵語です。同じ90度や120度でも、どちらの向きから投げられたかで意味あいが変わる。そうした繊細な読み分けが、かつては行われていました。古典の世界観に触れると、アスペクトひとつにも奥行きがあることが見えてきます。用語「シニスターアスペクト」「アスペクト」もあわせてどうぞ。