アルカビティウスは、10世紀のイスラムの占星術家・天文学者・数学者アル・カビーシー(ラテン名アルカビティウス)にちなんで呼ばれる、ホロスコープを12の部屋(ハウス)に区切る方式のひとつです。アセンダント(東の地平線にのぼる点)の度数が、天をめぐる弧の上を進んでいく「時間」をもとに区切るのが特徴で、こうした考え方は「時間分割(タイムベース)」系と呼ばれます。中世ヨーロッパで非常に広く用いられ、長くハウス計算の標準的な方式のひとつでした。なお、アル・カビーシー自身がこの分割法を発明したわけではないと考えられていますが、彼が著作のなかで詳しく解説したことから、後世にその名が方式の呼び名として定着したと伝えられています。このシステムは、黄道(太陽の通り道)の一年の周期ではなく、天が一日で一回りする「日周運動」をよりどころにしている点で、考え方の土台がはっきりしています。
このシステムでは、まずアセンダントの度数に注目します。その度数が、空の頂点であるMC(南中点)まで上りつめるのにかかる時間(アセンダントの半弧)を、三等分するのが基本の考え方です。地平線から天頂までを「時間」の物差しで割り、その区切りをもとにハウスの境界線を引いていきます。実際の計算では、いったん天の赤道に沿って区切りをとり、それを経度の大円を通して黄道(太陽の通り道)の上に投影してハウスの境界(カスプ)を求めます。アセンダントの「上昇」を軸にするため、計算には星が斜めにのぼる速さ(斜め上昇)の考え方が深くかかわります。同じ時間分割系のプラシダスと近い発想を持ちますが、プラシダスが個々の度数それぞれの半弧を三等分するのに対し、アルカビティウスはアセンダントの度数の半弧を基準にする点で、区切る対象が異なり、両者は別のハウスシステムとして区別されます。チャートを見比べるときの目印になるのは、アセンダントとMC、その反対側のディセンダントとICという4つの角にあたる境界線は、どのハウスシステムを使っても動かないという点です。アルカビティウスとプラシダスの違いが表れるのは、その間を埋める中間のハウス、つまり11室・12室・2室・3室・5室・6室・8室・9室の境界線であり、角だけを見ていると両者の違いに気づきにくい理由もここにあります。
アルカビティウスは、プラシダスが広まる以前、中世の鑑定の多くで使われていた由緒ある方式です。アル・カビーシー自身も、中世ヨーロッパで長く読まれた占星術の入門書(ラテン名イントロダクトリウス)の著者として知られ、ギリシア・インド・ペルシア・アラビアなど幅広い源流をまとめたこの一冊は、ラテン語訳を通じて西欧で標準的な教科書となりました。その名声とともに、ハウス分割法にも彼の名が受け継がれてきたのです。約千年にわたって主要なハウスシステムであり続けたとも言われ、相対的にハウスの大きさのゆがみが比較的小さいことも、長く支持された理由のひとつとされます。近年は古典占星術の復興とともに、ふたたび用いる占星術家が増えています。どの方式で計算するかによってハウスの境界がわずかに動くという性質は、天体がハウスの境目ぎりぎりに位置しているケースで特に効いてきます。境界線に近い天体がどちらの部屋に属するかがハウスシステムによって入れ替わることがあるため、読み解きに迷ったときはまずそのチャートがどの方式で計算されたものかを確かめる価値があります。どの方式を選ぶかでハウスの境界はわずかに変わるため、それぞれの個性を知って選ぶことが大切とされます。用語「ハウスシステム」「斜め上昇」もあわせてどうぞ。自分のチャートは「
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